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着物の草履は買取できる|値がつきにくい理由と評価のポイント

着物を整理していると、一緒に出てくるのが草履や下駄です。着物は買取に出すつもりでも、履物はどうすればいいのか迷う方が多いのではないでしょうか。結論から言えば、草履は買取の対象になりますが、着物や帯と比べると値がつきにくい品です。この記事では、なぜそうなるのかを正直に整理したうえで、それでも評価される条件、素材やサイズ、鼻緒の状態の見られ方、そして着物とセットで出す意味をまとめます。

草履や下駄が買取で値がつきにくい理由

先に前提を共有しておきます。履物は、着物や帯とは性格の違う品です。

消耗品であること

草履は履くための道具です。台の裏(ソール)はすり減り、鼻緒は緩み、エナメルは経年で曇ります。一度でも外を歩けば、裏に傷が入ります。着物や帯が「保管していれば状態が保たれる」品であるのに対し、履物は使えば必ず減ります。中古市場では、この違いが評価に直結します。

使わなくても劣化が進む

厄介なのは、履かずにしまっておいても状態が落ちる点です。合成皮革やエナメル加工の表面材は、時間の経過とともに樹脂が劣化します。押入れの奥に長く置かれていた草履が、取り出したらべたついていた、表面がひび割れていたというのはよくある話です。ウレタン素材の底も、加水分解でぼろぼろになることがあります。

サイズの合う人が限られる

草履は足を乗せる台の大きさが決まっています。着物のように仕立て直しができる品ではありません。次に使う人の足に合うかどうかがそのまま使えるかどうかになるため、流通できる相手が限られます。

品質表示の制度が及んでいない

意外に思われるかもしれませんが、草履や下駄には品質表示の義務がありません。消費者庁の雑貨工業品品質表示規程には30の対象品目が定められており、そのなかに「靴」は含まれていますが、草履や下駄は一覧に含まれていません。

参考:「雑貨工業品一覧表」|消費者庁

つまり、手元の草履が本革なのか合成皮革なのかを、タグで確認できるとは限らないということです。素材の裏づけが取りにくいことも、評価が慎重になる一因になります。

これらが重なるため、草履単体で高い金額を期待するのは現実的ではありません。ただし、まったく値がつかないという意味でもありません。条件によって差は出ます。

草履の素材による違い

草履の評価で最初に見られるのが、台と鼻緒に使われている素材です。

素材 内容 買取での位置づけ
本革 牛革などの天然皮革 質のよいものは評価されやすい。傷や色落ちは減点
エナメル(表面に樹脂被膜を施した革) 光沢のある仕上げ。礼装用に多い 劣化・べたつき・ひび割れが出やすい
佐賀錦 金銀箔を貼った和紙を経糸に、絹糸を緯糸に織った織物 織物として評価されやすい素材のひとつ
西陣織などの織物 絹の織物を台や鼻緒に用いる 織元や証紙があれば裏づけになる
合成皮革・ビニール 普及品に多い 値がつきにくい。劣化も早い
畳表・パナマ 夏用や雪駄に使われる 状態次第。傷みやすい
桐・杉などの木 下駄の台 木地の状態と鼻緒次第

佐賀錦とはどのような織物か

草履の素材として名前が挙がることの多い佐賀錦について、佐賀県の解説をもとに整理します。

佐賀錦の起源には2つの説があります。鹿島説では江戸時代末期に鹿島藩鍋島家で創作されたとされ、藩の夫人が網代天井に着想を得て印籠の製作が始まりとされています。小城説では、小城藩で作られた錦が鹿島藩に伝えられたとされています。明治初期には生産が中断しましたが、佐賀県出身の大隈重信が再興を働きかけ、1910年のロンドン日英大博覧会で「日本手芸の極致」と称賛されました。この出品を機に「佐賀錦」の名が定着したとされています。

製法は独特です。経糸には、金銀の箔を貼ったり漆を塗ったりした和紙を細く裁断したものを用い、緯糸には染色した絹糸を使います。方眼紙で文様を設計し、経糸を織機に貼り付けたうえで、「あばり」という道具で緯糸を通して織り上げていきます。

参考:「佐賀錦」|佐賀県

紙を経糸に使うという構造は、他の織物にはあまり見られないものです。この手間のかかる製法が、佐賀錦の草履やバッグが和装小物のなかで別格に扱われる理由になっています。

革とエナメルの見方

天然皮革か合成皮革かの区別は、外見だけでは判断しにくいことがあります。参考までに、消費者庁の雑貨工業品品質表示規程の「靴」では、甲皮材料について「合成皮革」と表示することとされ、特殊不織布を基材とする場合には「人工皮革」の用語を使うことも認められています。革・合成皮革・人工皮革は、それぞれ別のものとして扱われています。

参考:「雑貨工業品品質表示規程(二十 靴)」|消費者庁

エナメルは、革の表面に光沢のある被膜を施した仕上げです。見た目は華やかですが、時間が経つとべたついたり、履きジワの部分からひび割れたりします。保管中に他の素材と密着していると、その部分が変色することもあります。長くしまっていた礼装用の草履は、一度出して状態を確認しておくとよいでしょう。

サイズと台の高さがどう見られるか

草履には、洋靴のような統一されたサイズ表記がありません。S・M・L・LLといった表記や、寸で表す表記など、作り手によってまちまちです。前述のとおり品質表示の制度も及んでいないため、表記の基準が定まっていないのです。

そのため、査定に出す場合や着物買取の宅配で送る場合は、台の実寸を測っておくと話が早くなります。測るのは次の3か所です。

  • 台の全長(つま先からかかとまで)
  • 台の最大幅
  • かかとの高さ

かかとの高さは、格の目安としても見られる部分です。一般に、礼装用の草履はかかとが高めに作られ、普段着用は低めになります。同じ素材でも、想定される用途が変わるため、次の使い手の層も変わります。

なお、草履は着物と違って寸法直しができません。台が小さければ足の大きい人は履けず、大きすぎればかかとが余ります。この融通の利かなさが、中古で回りにくい理由のひとつになっています。

鼻緒の状態と箱・付属品の有無

草履で最も傷みが出やすいのが鼻緒です。ここは重点的に確認されます。

見られる点 具体的に確認されること
鼻緒の生地 擦れ、色あせ、ほつれ、シミ
鼻緒の緩み 前坪や側面の付け根が緩んでいないか
前坪 指のあたる部分の傷み、変色
台の表面 傷、剥がれ、べたつき、ひび割れ
台の底 すり減り、汚れ、はがれ
履いた跡 かかとの当たり跡、足指の跡
左右の差 片方だけ傷んでいないか
箱・保存袋 元箱、保存袋、購入時の札の有無

鼻緒は交換できる部品ですが、交換には工賃がかかります。鼻緒が傷んでいる草履は、そのぶん手を入れる前提で判断されることになります。

箱や保存袋が残っているかどうかも、思っているより効きます。元箱があれば、製造元や販売元が分かり、素材の裏づけが取りやすくなります。証紙や購入時の札が箱に入ったままのこともあるため、捨てずに一緒に出すのが基本です。

また、未使用品であれば話は変わります。贈答用に買われたまま履かれていない草履は、着物の小物のなかでは比較的評価されやすい部類に入ります。ただし、未使用でも保管環境が悪ければ劣化は進むため、「未使用だから大丈夫」とは限りません。

着物とセットで出す意味

草履だけを単体で持ち込むより、着物やと一緒に出すほうが実務的です。理由は2つあります。

ひとつは、襦袢の買取と同じく、和装小物の単体では取り扱いが難しいという点です。多くの買取業者では、小物だけの持ち込みに条件を設けていることがあります。着物や帯を主とし、そこに小物を添える形にすると、まとめて見てもらいやすくなります。

もうひとつは、次の使い手にとっての意味です。着物は、長着だけでは着られません。帯、帯揚げ、帯締め、草履、バッグと揃って初めて着られる装いになります。同じ格で揃った一式は、買う側にとって選ぶ手間が省ける組み合わせです。とくに礼装用は、着物・帯・草履・バッグの格を合わせる必要があるため、揃っていることに意味があります。

なお、着物や羽織は家庭用品品質表示法の対象品目に含まれており、消費者庁の手引きでは、繊維の組成、家庭洗濯等取扱方法、表示者名等を表示することが定められています。着物側は品質表示のタグで素材を確認できるため、素材の裏づけが取りやすくなっています。

参考:「羽織及び着物」|消費者庁

なお、家庭用品品質表示法にもとづく繊維の名称の指定用語では、絹を表す言葉として「絹」「シルク」「SILK」が認められています。着物のタグにこれらの表記があれば、絹が使われていることの裏づけになります。混用率の表示には許容範囲が定められており、100%表示の場合、毛はマイナス3%以内、毛以外の繊維はマイナス1%以内とされています。

参考:「繊維製品の表示について」|消費者庁

つまり、素材の裏づけが取りやすい着物と、取りにくい草履をまとめて出すことで、全体として判断しやすい状態になるという構図です。

参考までに、和装小物は呉服市場の一部として集計されています。矢野経済研究所の調査では、呉服小売市場に正絹きもの、紬類、帯類、リサイクルきもの、和装小物、ゆかた、合繊素材きものなどが含まれるとされ、市場規模は2018年で2,681億円(前年比98.9%)、2019年は2,664億円(前年比99.4%)と見込まれていました。同調査では、通信販売とリサイクル販売が好調に推移しているとも指摘されています。着物を手放す人が増えている一方で、中古で買う人も一定数いるという状況がうかがえます。

参考:「呉服市場に関する調査を実施(2019年)」|矢野経済研究所

出す前に確認しておきたいこと

準備といっても、複雑なことは必要ありません。

  • 箱や保存袋から出して、明るいところで状態を確認する
  • 台の裏を見て、すり減りや汚れの程度を把握する
  • 鼻緒の付け根が緩んでいないか、軽く動かして確かめる
  • 台の全長・幅・かかとの高さを測っておく
  • 元箱、保存袋、購入時の札が残っていれば一緒にまとめる
  • 湿気があるようなら、風を通してから包み直す

やらないほうがよいこともあります。

エナメルの表面をクリーナーで強くこすると、被膜が傷むことがあります。革用のクリームを和装履物に使うと、鼻緒の生地にシミが移ることもあります。汚れを落としたい気持ちは分かりますが、状態を悪化させるリスクがあるため、乾いた柔らかい布で軽くほこりを払う程度にとどめるのが無難です。べたつきが出ているものは、無理に拭かず、そのまま見てもらいましょう。

値がつかなかったときの選択肢

正直に書いておくと、草履や下駄は値がつかないと言われることがあります。とくに合成皮革の普及品や、底のすり減ったもの、鼻緒が傷んだものは難しいところです。

その場合の選択肢としては、次のようなものが考えられます。

  • 着物や帯と一緒に引き取ってもらう(売れない着物の処分方法も参考になります)
  • 着付け教室や和装のサークルなど、使う人がいる場に譲る
  • リユースショップやフリマアプリで、状態を正直に書いて出す
  • 自治体の分別ルールに従って処分する

処分する場合、素材が混在しているため分別に迷うことがあります。自治体によって扱いが異なるため、お住まいの自治体の案内を確認してください。

なお、買取価格は素材、状態、サイズ、付属品、そのときの需要によって変わります。公的に定まった価格表があるわけではないため、目安は実際に見てもらったうえで確認するのが確実です。

よくある質問

草履だけでも買取してもらえますか

対象にはなりますが、業者によっては小物単体の取り扱いに条件を設けていることがあります。着物や帯と一緒に出すほうが、まとめて見てもらいやすくなります。着物買取を持ち込みで頼むときの注意点を踏まえ、事前に問い合わせて確認しておくと確実です。

一度も履いていない草履は評価されますか

未使用であることは有利に働きます。ただし、保管環境によっては未使用でも表面材が劣化していることがあります。エナメルや合成皮革は、履かなくても時間の経過とともに状態が落ちるため、一度出して確認しておくとよいでしょう。

下駄や雪駄も対象になりますか

草履と同様に対象になり得ます。下駄は台の木地の状態と鼻緒の傷み具合、雪駄は畳表やパナマの状態が見られます。いずれも消耗品であるため、着物ほどの評価は期待しにくいのが実情です。

鼻緒が傷んでいると値がつきませんか

鼻緒は交換できる部品ですが、交換には工賃がかかります。そのぶんを織り込んで判断されるため、評価は下がりやすくなります。自分で付け替えようとせず、そのままの状態で見てもらうのがよいでしょう。

佐賀錦の草履は評価されますか

佐賀錦は、金銀箔を貼った和紙を経糸に用いる手間のかかる織物で、和装小物のなかでは評価されやすい素材のひとつです。ただし、実際の金額は台や鼻緒の状態、サイズ、箱や証紙の有無によって変わります。素材だけで決まるわけではありません。

まとめ

草履が買取で値がつきにくいのは、履物が消耗品であること、履かなくても表面材が劣化すること、サイズの調整ができないこと、そして品質表示の制度が及んでいないため素材の裏づけが取りにくいことが重なっているためです。消費者庁の雑貨工業品品質表示規程には「靴」が対象品目として含まれていますが、草履や下駄は含まれていません。

それでも差がつく要素はあります。素材が本革や佐賀錦、西陣織などの上質なものであること、台や鼻緒の状態がよいこと、サイズが標準的であること、元箱や保存袋、購入時の札が残っていることです。佐賀錦は、金銀の箔を貼った和紙を経糸に、染色した絹糸を緯糸に用いる独特の織物で、1910年のロンドン日英大博覧会をきっかけに名が定着した歴史を持ちます。

そして、草履は単体で出すより、着物や帯と一緒に出すほうが実務的です。着物は品質表示で素材が確認でき、格を揃えた一式は次の使い手にとって使いやすい組み合わせになります。無理に磨いたり鼻緒を付け替えたりせず、そのままの状態でまとめて相談するのが、落ち着いた進め方といえます。

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