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アコギの防音・消音対策|自宅練習で近隣に配慮するための考え方

アコースティックギターを家で弾きたいけれど、隣や下の階に響いていないか気になる。そんな理由で練習が続かなくなってしまう方は少なくないと思います。この記事では、環境省が定める騒音の環境基準や東京都環境局の資料をもとに、まず何を基準に考えればよいのかを整理します。そのうえで、楽器側でできる消音の工夫、部屋側でできる対策、防音室やサイレントギターといった選択肢を順にまとめます。

まず押さえておきたい騒音の基準と時間帯

「何時まで弾いていいのか」を考えるとき、拠り所になるのが環境省の定める騒音に係る環境基準です。これは生活騒音を直接取り締まる基準ではありませんが、どの程度の音量が地域として望ましいとされているかを知る手がかりになります。

環境基準では、時間帯を昼間と夜間に分けています。昼間は午前6時から午後10時まで、夜間は午後10時から翌日の午前6時までです。地域の類型ごとの基準値は次のとおりです。

地域の類型 昼間 夜間
AA(療養施設等が集合する特に静穏を要する地域) 50dB以下 40dB以下
A(専ら住居用地域)・B(主として住居用地域) 55dB以下 45dB以下
C(住居と商業・工業が混在する地域) 60dB以下 50dB以下

参考:「騒音に係る環境基準について」|環境省

住宅地であれば、昼間は55dB以下、夜間は45dB以下がひとつの目安になります。夜間の基準が10dB厳しくなっている点に注目してください。夜は周囲が静かになるぶん、同じ音でも目立ちやすくなります。

東京都環境局も、生活騒音について「昼間は気にならなかった音でも、早朝や夜間にまわりが静かになれば、うるさく感じることもある」と指摘しています。アコギの練習も同じで、絶対的な音量より、その時間帯の周囲との差が問題になります。

参考:「生活騒音」|東京都環境局

なお、これらは環境基準であって、時間帯を法律で定めた「演奏していい時間」ではありません。地域によっては自治体の条例で深夜の音について定めがある場合があります。お住まいの自治体の案内を確認するのが確実です。

アコギの音量はどれくらいなのか

ここは正直に書いておきたいところです。アコースティックギターの音量について、公的機関やメーカーが公表している一次情報は見当たりませんでした。ネット上には「約80〜96デシベル」といった数値が流通していますが、出典をたどれるものが確認できないため、本記事では断定を避けます。

ただし、参考になる数値はあります。東京都環境局は、生活騒音の発生源として楽器を挙げ、ピアノは約80〜90デシベル、エレクトーンは約77〜86デシベルとしています。

参考:「生活騒音」|東京都環境局

アコースティックギターは、ピアノのように打弦機構で大きな音量を出す楽器ではありませんが、胴(ボディ)が共鳴して音を増幅する構造です。ストロークで強く弾けば、それなりの音量になります。また、低音域は壁や床を伝わりやすく、体感より遠くまで届くことがあります。

つまり「アコギは何dBだから大丈夫」という発想より、「住宅地の夜間は45dB以下が望ましいとされている」という基準側から考えるほうが実際的です。

楽器側でできる消音の工夫

まず取り組みやすいのが、ギターそのものの音量を下げる方法です。専用のグッズがいくつか流通しています。

方法 仕組み 留意点
サウンドホールカバー サウンドホールを塞ぎ、胴の共鳴を抑える フィードバック対策用の製品が転用されることもある
弱音器(ギターミュート) ブリッジ付近や弦に取り付け、弦の振動を抑える 弦のテンション感や弾き心地が変わる
サイレントピック 弦に当たる面積や材質を変え、ピッキング音を抑える ストロークの音は下がるが、指弾きには効かない
タオル・スポンジを挟む サウンドホールや弦の下に詰め、振動を吸収する 手軽だが音程感や響きが大きく変わる

いずれも共通しているのは、音量が下がるかわりに、本来の音や弾き心地からは離れるという点です。ギターチューニングや運指、コードチェンジの確認、曲を覚える練習には十分役立ちますが、音色を作り込む練習や、強弱をコントロールする練習には向きません。

このため、消音グッズを使う練習と、しっかり鳴らせる環境での練習を、目的によって分けている方が多いようです。

弾き方でできる工夫

グッズを使わなくても、弾き方でかなり音量は変わります。ピックを使わずに指で弾く、ストロークではなくアルペジオを中心にする、弦に触れる強さを落とすといった調整です。特に夜間は、フォームやコードの確認に絞って、指弾きで静かに練習するというやり方が現実的です。

また、サウンドホールを壁や窓に向けないことも意味があります。音は共鳴して増幅されるため、開口部が向いている方向に強く飛びます。壁際に背を向けて座るより、部屋の中央寄りで、開口部が家具や布に向くようにするほうが穏当です。

部屋側でできる防音・吸音の工夫

部屋側の対策には、大きく「遮音」と「吸音」の2つの考え方があります。東京都環境局は、生活騒音の対策として、発生源を離れた場所へ移す(距離減衰)、音の伝わる経路を遮断する(遮音)、グラスウールなどの吸音材を使用する、ゴム等で防振対策をする、といった方法を挙げています。

参考:「生活騒音」|東京都環境局

具体的には、次のような手段が考えられます。

  • 防音カーテンや厚手のカーテンを窓に掛ける
  • 吸音材や遮音シートを壁に貼る
  • カーペットやラグを敷き、床への振動を減らす
  • 本棚やクローゼットなど、音を吸収するものが多い側で練習する
  • 隣戸と接する壁から離れた位置で弾く

期待しすぎないほうがよいのは、カーテンや吸音材だけで劇的に静かになるわけではないという点です。吸音材は室内の反響を抑えるもので、壁を透過する音を止める働きは限定的です。一方、遮音シートは重さのある材料で音の透過を減らしますが、壁全面をしっかり覆わなければ効果は限られます。

とはいえ、床への振動を減らす対策は比較的効きます。集合住宅では、空気を伝わる音より、床や壁を伝わる振動のほうが下の階に響きやすいためです。ラグを敷き、椅子の脚に緩衝材を付けるだけでも、体感は変わります。

防音室とサイレントギターという選択肢

本格的に環境を整えるなら、防音室という選択肢があります。

ヤマハは、防音室の性能を示す「Dr」という値について、「音を何dB遮音するかということを表しています」と説明しています。同社の解説では、管楽器の音が約90dBだとして、Dr-35の防音室であれば外に出る音は約55dBになる、という例が挙げられています。

参考:「【意外と知らない防音室?】ヤマハで“もっと”配信&音楽を楽しもう 音環境編」|ヤマハ株式会社

定型タイプの防音室は、サイズと遮音性能の組み合わせで価格が変わります。ヤマハの3.0畳・3.5畳のラインでは、Dr-35とDr-40の2つのグレードが用意されています。

参考:「ユニット 3.0畳、3.5畳」|ヤマハ株式会社

もう少し手前の選択肢として、サイレントギターがあります。ヤマハのSLG200シリーズは、胴を持たない構造で生音を大きく抑えつつ、ピックアップを通してヘッドホンやスピーカーで演奏できる楽器です。公式サイトによれば、SLG200Sは一般的なアコースティックギターの約18%の音量、SLG200Nは一般的なクラシックギターの約10%の音量とされています。また、低音弦側のフレームが脱着できる構造で、コンパクトに収納できます。SRTパワードピックアップシステムを採用しており、ヘッドホンやスピーカーにつなげば自然なアコースティックギターの音で演奏できると説明されています。

参考:「SLG200 Series – サイレントギター」|ヤマハ株式会社

生音の大きさを「約18%」という具体的な比率で示している点は、メーカーが公表している数少ない一次情報です。手持ちのアコギに消音グッズを付けるのと、専用に設計された楽器を用意するのとでは、前提が違うことが分かります。

自宅以外で練習する選択肢と近隣への配慮

自宅で無理に音量を落とすより、場所を変えるほうが早いこともあります。音楽スタジオの個人練習枠、楽器店の練習室、公共施設の音楽室などが候補になります。時間を区切って集中できるという副次的な利点もあります。

一方、自宅で弾く場合は、近隣への配慮そのものが最も効く対策です。東京都環境局は、生活騒音について「一人一人が普段から心がけて、必要以上の音を出さないように注意することが大切」だとし、共同生活のルールづくりにも触れています。

参考:「生活騒音」|東京都環境局

集合住宅で意識しておきたいのは、次のような点です。

  • 賃貸や分譲の規約で楽器演奏について定めがないか確認する
  • 練習する時間帯を、環境基準の昼間(午前6時〜午後10時)の範囲に収める
  • 連続して長時間弾かず、区切りを入れる
  • 隣戸と接する壁から離れた位置で弾く
  • 窓を閉めて練習する

規約の確認は地味ですが重要です。楽器可の物件でも、時間帯や音量について条件が付いていることがあります。トラブルになってから知るより、先に読んでおくほうが安心です。

弾かなくなったアコギを手放すという選択肢

防音対策を考えているうちに、そもそも弾く機会が減っていることに気づく方もいます。無理に環境を整えるより、いったん手放すという判断もひとつです。

ギターは、弾かずに置いておくと状態が落ちていきます。弦を張ったままにしておくとネックに負担がかかり、乾燥した場所ではボディが割れることもあります。逆に湿気の多い場所では、三味線の皮と胴と同じようにカビや金属部品の腐食が出ます。使っていない期間が長いほど、状態は下がっていく傾向があります。

手放す場合に見られるのは、おおむね次のような点です。

  • メーカーと型番、製造国
  • ネックの反り、フレットの減り
  • ボディの割れ、打痕、塗装の状態
  • ペグ(糸巻き)やブリッジ、サドルの状態
  • 純正ケースや保証書、取扱説明書の有無

なお、買取価格はクラリネットのメーカーと評価軸と同じく、メーカー・型番・状態・付属品・そのときの需要によって変わります。公的に定まった価格表があるわけではないため、金額は実際に見てもらって確認するのが確実といえます。買取で高く売るコツのとおり、自分で研磨したり部品を交換したりせず、そのままの状態で相談するほうが無難です。

よくある質問

アコギは何時まで弾いてよいのですか

法律で「何時まで」と定められているわけではありません。環境省の騒音に係る環境基準では、夜間を午後10時から翌日午前6時までとし、住宅地では夜間45dB以下が望ましいとされています。この区分にならい、午後10時以降は音を出す練習を避けるのがひとつの目安になります。自治体の条例や住まいの規約に定めがある場合はそちらが優先されます。

弱音器やサイレントピックはどれくらい効きますか

製品によって差があり、公的な性能表示があるものではありません。共通しているのは、音量が下がるかわりに弾き心地や音色が変わるという点です。運指やコード進行の確認には向きますが、強弱の練習には向きません。

防音カーテンを付ければ大丈夫ですか

カーテンは主に室内の反響を抑える働きで、壁や床を伝わる音を止めるものではありません。東京都環境局も、対策として遮音・吸音・防振・距離をそれぞれ挙げています。カーテンだけに頼らず、床への振動対策や、弾く位置・時間帯の工夫と組み合わせるのが現実的です。

サイレントギターに買い替えれば近所迷惑になりませんか

ヤマハの公式情報では、SLG200Sの生音は一般的なアコースティックギターの約18%の音量とされています。大幅に下がることは確かですが、無音になるわけではありません。深夜に弾く場合は、ヘッドホンを使い、床への振動にも気を配るのが安全です。

集合住宅で苦情が来てしまったらどうすればよいですか

まずは音を出す練習を止め、管理会社や管理組合を通じて状況を確認するのが穏当です。直接のやり取りは感情的になりやすいため、間に入ってもらうほうが落ち着いて進みます。そのうえで、時間帯の見直し、弾く位置の変更、消音グッズの導入などを検討することになります。

まとめ

アコギの防音を考えるときは、まず基準を押さえておくと判断がしやすくなります。環境省の騒音に係る環境基準では、昼間を午前6時から午後10時、夜間を午後10時から翌日午前6時とし、住宅地では昼間55dB以下、夜間45dB以下が望ましいとされています。夜間の基準が厳しいのは、周囲が静かになるぶん音が目立つためです。

対策は、楽器側と部屋側の両方から考えられます。楽器側ではサウンドホールカバー、弱音器、サイレントピックなどがありますが、いずれも弾き心地や音色は変わります。部屋側では、遮音・吸音・防振・距離という4つの考え方が東京都環境局から示されています。より本格的には、防音室やサイレントギターという選択肢もあります。

そして、環境を整えることばかりに気を取られず、弾く時間帯と近隣への配慮という基本を押さえることが、結局のところ最も効きます。もし練習の機会自体が減っているのであれば、状態が落ちる前に手放すという判断も、選択肢のひとつだと言えます。

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