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万年筆のペン先の種類|字幅の記号と金・ステンレスの違い

万年筆を選ぼうとすると、EFやF、Mといった記号が並んでいて迷います。金とステンレスの違いも、値段が違うことは分かっても中身が分かりません。そこでこの記事では、万年筆のペン先の種類を、メーカー公式と業界団体の説明だけを使って整理します。字幅の記号、素材、ニブの構造の順に見ていきます。

万年筆のペン先は、3つの軸で整理できます

ペン先の種類は、次の3つに分けると把握しやすくなります。字幅、素材、そして形状です。

字幅は線の太さで、EFやF、Mといった記号で示されます。素材は金合金かステンレスかという違いです。形状は、通常の丸いペンポイントか、特殊な研ぎ方をしたものかという分け方になります。

この3つは独立していません。日本筆記具工業会は、書き味について「ペン先の種類(字幅や柔らかさ)や軸の太さや重さによって決まります」と説明しています。字幅だけを見ても、書き味は決まらないということです。

参考:万年筆の使い方(初めての方へ)|日本筆記具工業会

字幅の記号は、メーカーごとに数も呼び名も違います

まず共通の土台を確認します。日本筆記具工業会が示す字幅の区分は4つで、EF(極細字)・F(細字)・M(中字)・B(太字)が挙げられています。

同じページには、続けてこう書かれています。表はペン先の太さを表すものだが、そのほかに柔らかさや形状などメーカーや商品によって用意されているペン先の種類は様々である、という内容になります。

参考:ペン先の種類・インキの種類|日本筆記具工業会

つまり4区分は最大公約数であって、実際の商品はこれより細かく分かれています。各社の公式表記を並べると、違いがはっきりします。

メーカー・団体 公式に挙げている字幅の表記
日本筆記具工業会 EF(極細字)・F(細字)・M(中字)・B(太字)の4区分
パイロット EF・F・FM・M・B・BB のほか PO・SF・SFM・SM・FA・SU・C・MS・WA を含む15種
セーラー万年筆(スタンダードニブ) 極細[EF]・細字[F]・中細[MF]・中字[M]・太字[B]・ズーム[Z]・ミュージック[MS]
プラチナ万年筆(#3776センチュリー) UEF(超極細)・EF(極細)・F(細)・SF(細軟)・M(中)・B(太)・C(極太)
プラチナ万年筆(プレピー) 03(細)・05(中)

参考:万年筆のペン先の種類|PILOT LIBRARY(パイロット)

参考:ペン先の種類と特長|セーラー万年筆

参考:#3776 センチュリー|プラチナ万年筆

参考:プレピー|プラチナ万年筆

注目したいのは、同じプラチナ万年筆でも機種によって表記の体系が違う点です。金のペン先を使う#3776センチュリーはUEFからCまでの記号で、ステンレスペンのプレピーは03と05という数字を使っています。表記の統一は、メーカー内でも必ずしも取られていません。

パイロットの説明には、字幅ごとに向いている持ち方も添えられています。EFやFは立てて持つ方に、FMやMはやや立てて持つ方に、BやBBはやや寝かせて持つ方に向くという整理です。

同じ記号でも、線の太さが同じとは限りません

ここが、万年筆選びでいちばん誤解されやすいところです。EFやFといった記号は、各社が共通の数値基準にもとづいて付けているわけではありません。

セーラー万年筆は、字幅の決まり方をこう説明しています。「字幅は、ペンポイントの大きさや研ぎ方により決まります」という一文です。

参考:ペン先の種類と特長|セーラー万年筆

日本筆記具工業会も、ペンポイントについて「字幅の基本を決め、紙へのタッチのなめらかさを左右する」と書いています。研ぎと玉の大きさで決まる以上、工場や機種が違えば結果も変わります。

参考:万年筆とわ|日本筆記具工業会

メーカー公式で、太さの差にはっきり触れている記述が2つあります。

1つはパイロットの説明です。海外製の万年筆は画数の少ないアルファベットを書くためペン先がやや太めに作られているものが多く、国産の万年筆は同じペン種でも細めに仕上げられている、という内容が書かれています。

参考:万年筆を使ってみよう 第1回|PILOT(パイロット)

もう1つはセーラー万年筆の長刀研ぎについての記述です。「同じ字幅のスタンダードニブに比べると、長刀研ぎの方が太くなります」と明記されています。同じメーカーの同じ字幅表記でも、研ぎが違えば線の太さが変わるということです。

参考:ペン先の種類と特長|セーラー万年筆

なお、各社が公表する線幅のミリ数は、今回調べた範囲の公式ページでは確認できませんでした。「Fは何ミリ」という数値を根拠に比べるのは難しいと考えてください。

セーラー万年筆は2021年9月の生産分から、ペン先左側面の字幅表示の刻印を変更しています。より分かりやすく見やすくすることが目的で、ペン先自体の品質や性能に従来との違いはないとのことです。

参考:万年筆ペン先の字幅表示および新ロゴ仕様への変更について|セーラー万年筆

ペン先の素材は、金合金とステンレスに大きく分かれます

素材の話に移ります。日本筆記具工業会は、ペン先には腐食に強く適度な弾力がある金属が使われるとし、14金や18金を使用したものやステンレスが一般的だと説明しています。14金という表記が何を指すのかは、585の刻印とK14の関係で整理しています。

参考:万年筆とわ|日本筆記具工業会

各社の公式説明を並べます。

素材 公式の説明
18金 耐酸性が非常に高く、同じペン先形状の比較では柔軟性が高い(プラチナ万年筆)
14金 耐酸性が非常に高く、止めやはねの強弱ある筆致感に最適で適度な腰のあるしなやかさを持つ(プラチナ万年筆)
金合金(14K・18K・21K) 腐食に強く弾力に富み、数値が大きいほどペン先自体が柔らかい(セーラー万年筆)
ステンレス(SUS316) 耐酸性が高く、ペンの腰と弾力性が高くなる一方でしなやかさは無くなる(プラチナ万年筆)
特殊ステンレス ハード調の弾力があり、筆圧の影響を受けにくく一定の線幅で筆記しやすい(セーラー万年筆)

参考:ペンポイントの種類|プラチナ万年筆

参考:ペン先の種類と特長|セーラー万年筆

パイロットは、金が使われる理由をインキの酸に侵されずに適度な弾力性と書き味があるからだと説明しています。同社は、現在では金を使わなくてもすぐれた特殊合金が開発され使用されている、とも書き添えました。

参考:万年筆は「書く為の道具」|PILOT LIBRARY(パイロット)

選び方については、パイロットが具体的に案内しています。金ペンタイプは高価になるが本格的なペン先のしなりを感じる弾力のある書き心地が楽しめる、特殊合金タイプはお手頃価格も多く筆圧が強めの方や硬めの書き味が好きな方に向く、という内容です。

同社のよくある質問にも、筆圧が強い方にはソフトペン先ではなくハードペン先か特殊合金ペンを勧める、と書かれています。

参考:どの種類のペンを選んでよいのかわかりません|よくあるご質問(パイロット)

金かステンレスかは、上下ではなく相性の問題として説明されているわけです。筆圧が強い方が金のソフトペン先を選ぶと、かえって扱いにくくなります。

ニブの構造を、部位ごとに見ていきます

ペン先まわりの部品には、それぞれ役割があります。セーラー万年筆の「万年筆の仕組み」が、部位ごとの解説として最もまとまっています。

ペンポイント。 紙と接する先端に付いた、非常に硬い耐摩耗性合金です。金合金は柔らかく、そのままでは先端が摩耗してしまう素材です。パイロットは、この材料をイリジウムなど白金属の合金で作られたイリドスミンと呼んでいます。同社によれば、約600万字も書くことが可能とのことです。

スリット(切り割り)。 ペン先の中央に入った切れ目です。筆圧により隙間が開くことでインクが流れ、独特の柔らかい書き味を生み出すと説明されています。

ハート穴。 ペン先の中央部分に開いている、ハート型もしくは丸い穴です。セーラー万年筆はここを「ペン先の弾力を決める重要部分」としています。同社の製造工程の説明では、空気の入り口でもあると書き添えられました。

ペン芯。 ペン先にインクを送り続ける部分です。毛細管現象を利用してインクが流れるようになっており、流れた分だけ空気を取り込む気液交換が行われます。

櫛溝。 ペン芯に刻まれた細い溝です。温度差や気圧差によって引き出されてしまったインクを一時的に蓄え、ボタ落ちを防ぐ働きをします。日本筆記具工業会は、飛行機や高所で気圧が下がった場合を例に挙げています。

首軸(大先)。 ペン先とペン芯を固定して内蔵する部分です。セーラー万年筆はこれを大先と呼び、パイロットは首軸と呼んでいます。

参考:万年筆の仕組み|セーラー万年筆

参考:万年筆ができるまで|セーラー万年筆

参考:万年筆は「書く為の道具」|PILOT LIBRARY(パイロット)

プラチナ万年筆は、ペンポイントの作り方を説明しています。イリジウムとオスミウムを混ぜ合わせた粉末に瞬間的に高熱を加え、溶けたときの表面張力で丸められた玉を使うという内容です。これをペン地金の先に溶接し、インクの通る溝を切ってから研ぐ工程が続きます。

参考:万年筆の仕組み|プラチナ万年筆

セーラー万年筆の製造工程では、玉付けの後に「字幅ごとに決められたサイズに砥石で粗取りし」形状を整えると書かれています。字幅がペンポイントの加工で決まるという説明と、工程の記述はここで一致します。

特殊なペン先には、それぞれ狙いがあります

通常の丸いペンポイント以外にも、目的を絞ったペン先があります。公式の説明を抜き出します。

パイロットのラインアップには、次のものが含まれます。FA(フォルカン)は超ソフト調で毛筆のような筆跡になるペン先です。SU(スタブ)は縦の線が太字、横の線が中細字になり、文字に味が出ると説明されています。MS(ミュージック)は楽譜用と言われるものの、字幅が異なるためカリグラフィーペンのようにも使えると書き添えられました。

PO(ポスティング)はペン先を下向きにした硬めの極細字で、ペンの開きが少ないため帳簿などに向くとされています。WA(ウェーバリー)はペン先を上向きにした軟らかめの中字で、筆記角度を問わず使えるという位置づけです。

参考:万年筆のペン先の種類|PILOT LIBRARY(パイロット)

セーラー万年筆のズーム[Z]は、筆記角度や縦線と横線の違いにより、細い線から太い線まで強弱のある線が書けるペン先です。ミュージック[MS]は横線が細く縦線が太くなります。

同社のスペシャルニブには、長刀研ぎがあります。通常より大きいペンポイントを付け、長刀の刃型のように長く角度を滑らかに研ぎ出したものです。ペンを寝かせると太い線が書け、立てると細い線が書けると説明されています。

参考:長刀研ぎ 万年筆|セーラー万年筆

ほかにも、巻きペン先を重ねた長刀エンペラー、インク溝が十文字に見えるクロスポイントなどが公開されています。いずれも用途が絞られたペン先ですから、最初の1本には向きません。

選ぶときと使うときに、押さえておきたいこと

最後に、実際の場面での注意点をまとめます。

字幅は用途から決める。 パイロットはEFを手帳など細かい文字を書く方に、Fをノートや日記や手紙に、Bを宛名書きやサインにと案内しています。日本語を細かく書くなら細めが無難です。

筆圧の強さで素材を決める。 筆圧が強い方には、金のソフトペン先より特殊合金ペンが勧められています。売り場で試し書きができるなら、そこで確かめるのが確実です。

持ち方は寝かせ気味にする。 パイロットと日本筆記具工業会は、ペン先の刻印のある面を上に向け、ボールペンよりもやや寝かせ気味に書くよう案内しています。強い筆圧は必要ないというのが共通の説明になります。

参考:万年筆の使い方|PILOT LIBRARY(パイロット)

参考:万年筆の使い方(持ち方)|日本筆記具工業会

筆圧をかけすぎない。 パイロットは、筆圧をかけすぎるとペン先の切割が開いて太い文字になり、さらに開きすぎるとインキ流動が途切れたりペン先の変形につながると注意しています。

試し書きの場を使う。 日本筆記具工業会は、万年筆を熟知した店ではペンの持ち方や筆跡、どの程度筆圧がかかっているかを観察したうえで一本を提案してくれるはずだと書いています。記号だけで判断せず、実際に書いてみるのが確実です。

使い込むと変わる。 同工業会は、使用するうちに使用者の癖に応じてペン先の形状などが変化し、使用者に合った書き心地になると説明しています。中古の万年筆で書き味が独特になっていることがあるのは、この性質によるものです。

よくある質問

EFとFはどのくらい違いますか

パイロットはEFを「やや硬めの極細字」、Fを「やや硬めの細字」と説明しました。用途はEFが手帳など細かい文字を書く方向けで、Fはノートや日記や手紙まで幅広いと案内されています。ただし線幅のミリ数は公式に公開されていないため、数値での比較はできません。実際に書いて確かめるのが確実です。

メーカーが違っても、同じFなら同じ太さですか

同じとは限りません。日本筆記具工業会は共通の区分としてEF・F・M・Bの4つを示していますが、メーカーや商品によって用意されているペン先の種類は様々だと書いています。パイロットは、国産の万年筆が海外製と比べて同じペン種でも細めに仕上げられていると説明しました。セーラー万年筆は、同じ字幅でも長刀研ぎのほうが太くなると明記しています。

金のペン先とステンレスでは、どちらがよいのですか

用途と筆圧によります。パイロットは金ペンタイプを弾力のある書き心地が楽しめるもの、特殊合金タイプを筆圧が強めの方や硬めの書き味が好きな方に向くものとして案内しています。セーラー万年筆は、特殊ステンレスについて筆圧の影響を受けにくく一定の線幅で筆記しやすいと書きました。

14金と18金では書き味が変わりますか

セーラー万年筆は、金合金について数値が大きいほどペン先自体が柔らかいと説明しています。プラチナ万年筆は18金について「同じペン先形状の比較では柔軟性が高い」と、条件を付けた書き方をしました。形状や大きさが違えば結果も変わるため、含有率だけでは決まらないという理解が実際に近いといえます。含有率そのものの意味は、純金(24K)とK18の違いで確認できます。

ペン先が開いてしまったように見えます

パイロットは、筆圧をかけすぎるとペン先の切割が開いて太い文字になり、さらに開きすぎるとインキ流動が途切れたりペン先の変形につながると案内しています。見た目で判断がつかない場合は、自分で曲げ戻そうとせず、メーカーの窓口や万年筆を扱う専門店に相談してください。

まとめ

万年筆のペン先の種類は、字幅の記号・素材・研ぎの形状という3つで整理できます。共通の区分はEF・F・M・Bの4つだけで、それ以外の記号は各社が独自に設定しています。同じ記号でも太さが同じとは限らない点は、メーカー公式にも記述がありました。使わなくなった万年筆を手放す場合も、ペン先の刻印を確認しておくと状態の説明がしやすくなります。買取で高く売るコツと査定前の準備を押さえておくと段取りがつけやすく、書斎の道具をまとめて整理するなら硯の買取価値がどこで決まるかもあわせて確認できます。

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