樋口洋の雪の東京駅|背景と確認しておきたい点
自宅に飾ってある絵の題名が「雪の東京駅」で、作者名に樋口洋とあり、どう扱えばよいか迷っている方は多いようです。作家についても作品についても、まとまった情報は見つけにくいのが実情です。そこでこの記事では、樋口洋と雪の東京駅について公的な資料で確認できる範囲の事実と、手元の一点を見るときの手順を整理します。
樋口洋について公式資料で確認できること
樋口洋という画家について、公的な一次情報として確認できるのは日展の公開資料です。公益社団法人日展は、大臣賞の受賞者一覧をウェブサイトで公開しています。
その一覧には、2012年(平成24年)の第44回日展で内閣総理大臣賞を受けた人物として「樋口 洋」の名前が記載されています。受賞の区分は洋画の欄にあります。
一方で、生年や出身地・所属団体といった経歴は美術館や公募団体の公式ページでは確認できませんでした。断定できる裏づけがないため、本記事では経歴の細部に踏み込みません。
作品ごとの出品歴についても同様です。日展の公開資料からは、受賞年と部門までは分かるものの、受賞作の題名まではたどれませんでした。公開資料で確認できる範囲から見ていく進め方は、青山義雄の絵画を確かめるときと共通します。
日展とはどのような展覧会なのか
樋口洋の名前が出てくる日展について、成り立ちを押さえておくと作品の位置づけが分かりやすくなります。日展の公式サイトには、その沿革が詳しく掲載されています。
同サイトによると、始まりは明治40年の第1回文部省美術展覧会です。以後「帝展」「新文展」「日展」と名称を変えながら続いてきました。
部門の構成も変化してきました。最初は日本画と西洋画、彫刻の3部制で始まり、昭和2年の第8回帝展から美術工芸が加わっています。昭和23年の第4回日展からは書が参加し、5科制の総合美術展になりました。
会場についても記載があります。東京会場展は99年間にわたり東京都美術館で開かれ、2007年からは国立新美術館に移りました。東京会場展の終了後は、全国の主要都市で巡回展が開かれます。
つまり日展は、公募展として長い歴史を持つ大規模な展覧会です。洋画は5つの部門のひとつという位置づけになります。
東京駅丸ノ内本屋という題材の背景
「雪の東京駅」という題名からは、東京駅の丸の内側の駅舎が思い浮かびます。この建物は、国の重要文化財に指定されています。
文化庁の国指定文化財等データベースによると、名称は「東京駅丸ノ内本屋」です。重要文化財への指定年月日は2003年5月30日と記載されています。
参考:東京駅丸ノ内本屋|国指定文化財等データベース(文化庁)
同じ記録から、建物の基本情報も読み取れます。整理すると次のとおりです。
| 項目 | データベースの記載 |
|---|---|
| 名称 | 東京駅丸ノ内本屋 |
| 年代 | 大正3年(1914年) |
| 構造及び形式等 | 鉄骨煉瓦造、二階建、一部三階建、スレート葺 |
| 建築面積 | 7,821.39平方メートル |
| 種別 | 近代/産業・交通・土木 |
| 重文指定年月日 | 2003年5月30日 |
| 所有者名 | 東日本旅客鉄道株式会社 |
詳細解説の欄には、明治41年3月25日に着工し、大正3年12月14日に竣工したと書かれています。設計は辰野金吾が手がけ、南北の折曲り延長は約335メートルに及ぶ長大な建築にあたります。
参考:東京駅丸ノ内本屋|国指定文化財等データベース(文化庁)
同じ解説には、指定の理由にあたる評価も載っていました。わが国鉄道網の起点となる停車場の中心施設であり、首都東京を象徴する貴重な建築だと説明されています。煉瓦を主体とする建造物のうち最大規模の建築という記載もあります。
赤煉瓦の長い壁面と、雪の白さの対比は絵になりやすい組み合わせです。東京駅が繰り返し描かれてきた背景には、こうした建築そのものの特徴があります。
なお、丸の内側の駅舎は、後年の保存復原工事によって外観が変わっています。作品に描かれた屋根の形やドームの有無から、いつ頃の東京駅を写した画面なのかを推し量れる場合があります。
原画・版画・複製画の違いを見分ける
「雪の東京駅」という題名の作品には、油彩の原画のほかに、版画や印刷による複製が出回っている場合があります。どれに当たるかで扱いが変わるため、最初に確認しておきましょう。
見分け方の目安を整理すると、次のようになります。
| 種類 | 画面の見え方 | 余白や裏面の特徴 |
|---|---|---|
| 油彩の原画 | 絵の具に厚みがあり筆跡が立体的に見える | 裏側に書き込みや画廊のラベルがあることが多い |
| リトグラフなどの版画 | 平坦だが刷りのムラや紙の質感が残る | 余白に鉛筆のサインと分数状の番号が入る |
| 印刷による複製画 | ルーペで規則正しい点の並びが見える | 番号がない、または印刷でサインが入っている |
判断に迷う場合は、斜めから光を当ててみてください。油彩であれば筆の跡が影になって浮かび上がります。
版画の場合は、余白の分数状の数字が手がかりです。左が通し番号で、右が刷った総数を表します。刷った数が価格にどう響くかは、シルクスクリーン版画の相場の見方が参考になります。
複製画も、飾って楽しむものとしての価値はあります。ただし取り扱いの区分は原画や版画と異なるため、事前に伝えておくと話が早く進みます。
手元の作品を確認するときの手順
査定を依頼する前に、自分で確認できる項目があります。作品と付属品の両方を順に見ていきます。
まず、画面のサインを確認してください。位置と書き方を写真に撮っておくと、問い合わせのときに役立ちます。落款や印章から真贋を見る手順も、考え方は同じです。
次に、額を壁から下ろして裏側を見ます。作品名や制作年の書き込み、画廊のラベル、展覧会のシールが残っていることがあります。
そして、寸法を測ります。額を含めた寸法と、絵の部分だけの寸法を分けて記録しておきましょう。
最後に、付属品をそろえます。鑑定書や証明書・購入時の書類・箱・たとう紙などがあれば一緒に保管してください。
書類を処分してしまうと、後から取り戻すことはできません。判断に迷うものは残しておくほうが安全です。
同じ題名の作品が複数存在することもあります。画家が同じ題材を繰り返し描く例は珍しくなく、寸法や構図が少しずつ違っています。したがって、題名だけで同一の作品と決めつけないほうが正確です。
保管と状態のチェックで気をつけたいこと
絵画の評価では、作品そのものだけでなく現在の状態も見られます。日ごろの置き場所が結果に影響します。
直射日光は退色の原因になります。窓際や、照明が近すぎる壁面は避けてください。
湿気はカビを招きます。北側の壁や押し入れの奥に長く置くと、額の裏からカビが出ることがあります。
温度差の大きい場所も向いていません。キャンバスは伸び縮みするため、画面に細かなひびが入る要因になります。
自分で汚れを落とそうとするのは避けましょう。表面を拭くと絵の具が持っていかれることがあり、かえって状態を損ないます。
床に直接置くのもおすすめできません。壁から少し離して立てかけ、当て布を挟んでおくと安心です。
買取に出すときの流れと必要なもの
買取を依頼する場合は、店頭・出張・宅配のいずれかで査定を受ける流れになります。額装された絵は大きく重いため、出張査定を選ぶ方が多くいます。
問い合わせの際は、作品の全体・サイン部分・裏側・付属品の写真を用意してください。題名と寸法が分かれば、あわせて伝えます。
古物営業法にもとづき、買取の際には本人確認が行われます。運転免許証やマイナンバーカードなど、氏名と住所が確認できる書類を準備しておきましょう。
相続で受け継いだ作品は、経緯を整理しておくと手続きが滞りません。相続人が複数いる場合は、事前の合意も必要になります。
なお、評価は作家・技法・寸法・状態・来歴の裏づけによって変わります。作家がはっきりしない場合は、作者が分からない絵画の調べ方と売却先から進めることになります。この記事では金額の目安を扱いませんので、実際の評価は査定でご確認ください。
よくある質問
樋口洋はどのような画家ですか。
公益社団法人日展が公開している大臣賞受賞者一覧には、2012年(平成24年)の第44回日展で内閣総理大臣賞を受けた洋画の受賞者として「樋口 洋」の名前が記載されています。生年や所属団体については、美術館や公募団体の公式ページで確認できませんでした。裏づけのない情報は避け、公開資料で確認できる範囲を基準にしてください。
「雪の東京駅」は日展の出品作ですか。
日展の公開資料からは、受賞の年と部門までは確認できますが、作品の題名までは確認できませんでした。したがって、この記事では出品作かどうかを断定していません。手元の作品に出品歴が記されたラベルなどがあれば、そこから確認できる場合があります。
東京駅の駅舎はいつ建てられたのですか。
文化庁の国指定文化財等データベースによると、明治41年3月25日に着工し、大正3年12月14日に竣工したと記載されています。設計は辰野金吾で、南北の折曲り延長は約335メートルに及びます。重要文化財への指定年月日は2003年5月30日です。
版画でも買取の対象になりますか。
版画も取り扱いの対象になることがあります。版画の価格を左右する要素を踏まえつつ、余白に鉛筆のサインと分数状の番号があるかどうかを確認してください。印刷による複製画は扱いが異なるため、ルーペで点の並びが見えるかどうかも見ておくと、相談がスムーズに進みます。
額から外して持ち込んだほうがよいですか。
額装されたままの状態で持ち込むほうが安全です。額から外す作業には破損のおそれがあり、裏側のラベルを失う原因にもなります。運搬が難しい場合は、出張査定に対応している業者へ相談してください。
まとめ
樋口洋については、日展の公開資料から2012年の第44回日展で内閣総理大臣賞を受けた記録が確認できます。題材となる東京駅丸ノ内本屋も、文化庁のデータベースで重要文化財としての記録をたどれます。手元の作品は、原画か版画か複製かを見極めたうえで、状態と付属品を整理してから相談してください。当社では実物と来歴を確認し、一点ずつ丁寧に評価いたします。