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掛け軸のサイズと買取|尺五・尺八の寸法と需要の関係

譲り受けた掛け軸を手放そうとして、「尺五」「尺八」といった見慣れない表記に戸惑った方もいるのではないでしょうか。掛け軸のサイズは、飾れる場所を左右するため、需要とも無関係ではありません。そこでこの記事では、掛け軸のサイズ呼称の成り立ちと寸法の測り方を整理し、寸法が査定でどう扱われるのかまでをまとめます。

掛け軸のサイズが買取の話で出てくる理由

掛け軸は、床の間や壁に掛けて使うものです。東京文化財研究所は、掛軸について、絵の周りや裏を紙や布地で表装することにより床の間に掛けて鑑賞したり室内を飾ったりできると説明しています。あわせて、使わない時は巻いて収納でき、日光や空気にさらされることなく安全に保管できるとも述べています。

参考:日本絵画の修復「掛軸」|東京文化財研究所

掛けて使うものである以上、掛けられる場所に収まるかどうかは、次に使う方にとって現実的な条件になります。買取の現場で寸法が確認されるのは、この点が理由のひとつです。

ただし、寸法が価格を決めるわけではありません。作者や作品の内容、状態のほうが判断に与える影響は大きいと考えられます。寸法は「飾りやすさ」という別の軸から、需要の広さに関わってくる要素だと捉えておくとよいでしょう。

この記事では、寸法と需要の関係に絞って整理します。落款や箱書から作者をたどる手順は掛け軸の鑑定方法にまとめていますので、あわせて確認いただけます。

尺三・尺五・尺八という呼称は何を指すのか

尺貫法の長さを略した呼び方

掛け軸の「尺三」「尺五」「尺八」といった呼び名は、尺貫法の長さを略したものです。尺三は一尺三寸、尺五は一尺五寸、尺八は一尺八寸を指します。

国立国会図書館が公開している度量衡換算表によれば、尺貫法とメートル法の対応は次のとおりです。

尺貫法 メートル法
1寸 約3.03cm
1尺 約30.3cm
1間(6尺) 約1.82m
1町(60間) 約109.1m

参考:度量衡換算表|国立国会図書館

この換算にあてはめると、一尺三寸はおよそ39.4cm、一尺五寸はおよそ45.5cmになります。一尺八寸であればおよそ54.5cmです。

呼称の数値と実際の総幅は一致しない

ここで注意したいのは、この換算値が掛け軸全体の幅ではないという点です。実際に流通している掛け軸の総幅は、呼称から換算した値より大きくなります。

理由は掛け軸の構造にあります。中央の書画(本紙)の左右には、表装の裂地が加わります。呼称が示しているのは本紙側の幅の目安であり、表装込みの仕上がり幅ではありません。

そのため「尺五は何cm」と一律に覚える方法は、実務ではあまり役に立ちません。手元の掛け軸について知りたい場合は、自分で測るのが確実です。

なお、規格ごとの総寸法を定めた資料は、表具の業界団体・行政・公的機関のいずれにも確認できませんでした。販売店ごとの表記に差が出るのは、統一された規格表が存在しないためだと考えられます。

同じ呼称でも実寸が違う|表装形式が寸法を決める

掛軸の形式は8つに整理されている

総寸法を左右するのが表装の形式です。協同組合京都表装協会は、掛軸の形式は作品によってほぼ定まっているとしたうえで、主な掛軸の形式は8形式だと説明しています。

同協会によれば、表補(ひょうほ)表装は仏画や曼荼羅など宗教的な作品に、幢補(どうほ)表装は歌切・色紙をはじめ広く絵画作品に、輪補(りんぽ)表装は茶人の書や墨蹟などに用いるとされています。

形式の区分 呼び方 主に用いる作品
真の形式 表補表装(真の真・真の行・真の草) 仏画、曼荼羅など宗教的な作品
行の形式 幢補表装(幢補三段表装、幢補二段表装) 歌切、色紙をはじめとする絵画作品
草の形式 輪補表装(輪補三段表装、輪補二段表装) 茶人の書、墨蹟など

参考:表具の形|協同組合京都表装協会

同協会は、ほかに文人画などに用いる「袋表装」「袋明朝表装」や「台貼表装」「筋割表装」など多くの形式があるとも記しています。形式が複数ある以上、同じ本紙でも仕立てによって仕上がりの寸法は変わってきます。

裂地の選び方も寸法に関わる

表装に使う裂地についても、同協会は具体的に説明しています。表装裂は表装・表具に用いる織物で、掛物は巻いて保管するものであるため厚手より薄手の裂地が望ましいとされています。平織り・綾織り・繻子織り・搦織りの4種類があり、金襴、銀襴、緞子、錦、間道、紹巴などが主な裂地として挙げられています。

参考:表具の材料|協同組合京都表装協会

裂地の種類と各部の寸法配分は、表具師が本紙の内容と飾る場所に合わせて決めるものです。「尺五」という同じ呼称の掛け軸でも実寸に差が出るのは、この裁量があるためだと考えられます。

つまり、呼称は分類のラベルであって、寸法の保証ではありません。買取の相談をする際に呼称だけを伝えると、話が食い違う場合があります。

サイズは「飾りやすさ」を通じて需要につながる

掛けられる場所が限られると、買い手も限られる

大きな掛け軸ほど、掛けられる場所は限られます。幅が広ければ広い床の間が必要になり、高さがあれば落し掛けから床までの距離が必要になります。

床の間の幅は尺貫法で語られることが多く、「一間」であれば6尺、国立国会図書館の換算表によればおよそ1.82mです。一方で「半間」であればその半分になります。同じ掛け軸でも、どちらに掛けられるかで、収まる家の数が変わってきます。

高さが取れない床の間もあります。地袋や違い棚がある、窓が切ってあるといった条件では、掛けられる縦寸法が短くなります。横長に仕立てられた横物や、高さを抑えた仕立てが使われるのはこうした場合です。

需要の広さと評価の関係

飾れる場所が多い寸法ほど、次に使う方が見つかりやすいという関係があります。買取の場で寸法が確認されるのは、この需要の広さを見るためです。

ただし、寸法が小さければ評価が高いという単純な話ではありません。作品の内容と寸法が釣り合っているかどうかも見られます。大きく仕立てるにふさわしい作品が大きく仕立てられていれば、それは自然な状態です。

寸法だけで判断しないほうがよい、というのが実際のところです。寸法は、作者・内容・状態と並ぶ判断材料のひとつとして扱われます。

仕立て直しで寸法を変えられるか

高さが合わない場合、表装を仕立て直して寸法を変える方法はあります。ただし、仕立て直しには費用と工期がかかります。

本紙の状態によっては、仕立て直し自体が勧められないこともあります。手放すことが決まっているのであれば、自分で改装してから出すより、現状のまま相談したほうが二度手間になりにくいでしょう。

掛け軸の寸法を自分で測る手順

査定の前に寸法を控えておくと、相談のやり取りが短く済みます。測る箇所は次のとおりです。

測る箇所 測り方 用途
総幅 表装の裂地の左右端どうし 掛けられる場所の判断
総丈 八双の上端から軸先の下端まで 高さが取れるかの判断
本紙の幅 中央の書画部分の左右 呼称との突き合わせ
本紙の丈 中央の書画部分の上下 作品そのものの大きさ
軸先を含む幅 軸先の突き出しを含めた左右端 収納箱に収まるかの確認

測るときの注意点をいくつか挙げます。

1つ目は、平らな場所に広げてから測ることです。掛けた状態で測ると、たわみの分だけ数値がずれます。

2つ目は、風帯や紐を含めないことです。風帯は上部から垂れる細い帯で、総幅には含めないのが一般的です。

3つ目は、巻いた状態のまま無理に伸ばさないことです。協同組合京都表装協会は、掛け外しの時に折れが生じないようとりわけ注意すること、折れには修理が必要になることを挙げています。寸法を測るために強く引っ張ると、そこから傷む場合があります。

参考:表具の管理|協同組合京都表装協会

箱がある場合は、箱の内寸も控えておくとよいでしょう。箱と中身の寸法が合っているかどうかは、後から確認されることがあります。

寸法とあわせて確認しておきたい状態

寸法を測る作業は、掛け軸を広げる作業でもあります。この機会に状態も見ておくと、相談が一度で済みます。

  • 本紙のシミ、変色、虫損
  • 折れや巻き癖の強さ
  • 絵具や墨の剥落
  • 裂地の擦れ、裂け、剥がれ
  • 軸木の割れ、軸首の緩み
  • 掛緒・巻緒の擦り切れ

協同組合京都表装協会は、保管について、よく晴れて湿気の少ない日に毛ばけなどで軽く風を送り表面の塵や埃を落としてからしまうこと、湿気の少ない場所に保管すること、年に2回程度は春と秋の晴れた日に虫干しをすることを挙げています。あわせて、あまり堅く巻かず適度にゆるやかに巻き、紐もゆるく掛けることも示しています。

参考:表具の管理|協同組合京都表装協会

汚れを自分で落とす作業は避けたほうが安全です。掛軸は何層もの紙が貼り重ねられた構造であるため、表面を拭くだけでも下の層まで影響が及ぶ場合があります。

手放すときに確認しておきたい実務

箱と付属品をそろえる

桐箱や、購入時の書類、仕立て時の控えが残っていれば、まとめて用意しておくとよいでしょう。箱書がある場合、そこに寸法や由来が書かれていることもあります。

箱を「かさばるもの」と考えて先に処分してしまうと、後から取り戻せません。掛け軸と一緒に見てもらうのが基本です。

訪問購入という取引形態のルール

自宅に来てもらって買い取ってもらう形は、特定商取引法上の「訪問購入」にあたる場合があります。消費者庁の特定商取引法ガイドによれば、事業者は勧誘に先立って、事業者の氏名、勧誘の目的、購入しようとする物品の種類を告げなければならないとされています。

契約の申込みを受けたときや契約を締結したときには、物品の種類や購入価格などを記載した書面を渡すことも定められています。法律で決められた書面を受け取った日から数えて8日以内であれば、書面または電磁的記録により申込みの撤回や契約の解除(クーリング・オフ)ができるとされています。クーリング・オフ期間内は、事業者に対して物品の引渡しを拒むこともできると説明されています。

参考:訪問購入|特定商取引法ガイド(消費者庁)

寸法が大きい掛け軸は持ち運びに気を使います。出張での査定を選ぶ場合は、こうした取引ルールと出張買取でトラブルを避けるための準備を知っておくと落ち着いて判断できます。

金額の考え方

掛け軸の買取価格について、公的な価格基準は存在しません。寸法・作者・内容・状態・付属品の組み合わせで判断されるため、寸法だけを伝えて金額を確かめる方法はありません。古物商許可の確認を含めた買取業者の選び方を押さえたうえで現物を見てもらい、何を根拠に評価されたのかを聞くのが確実です。

よくある質問

Q1. 「尺五」と書かれていても店によって寸法が違うのはなぜですか

呼称の由来が本紙側の幅にあり、表装によって左右に加わる裂地の幅が変わるためです。協同組合京都表装協会は掛軸の主な形式を8形式としており、ほかにも多くの形式があると説明しています。規格ごとの総寸法を定めた公的な資料は確認できませんので、実寸を測るのが確実です。

Q2. 大きい掛け軸のほうが高く評価されるのですか

寸法だけで決まるわけではありません。大きい掛け軸は掛けられる場所が限られるため、飾りやすさという点では条件が狭くなります。作者や作品の内容、状態のほうが判断に与える影響は大きいと考えられます。

Q3. 寸法はどこからどこまで測ればよいですか

幅は表装の裂地の左右端どうし、高さは八双の上端から軸先の下端までを測るのが一般的です。風帯や紐は含めません。あわせて本紙の寸法と、軸先の突き出しを含めた幅も控えておくと、収納や輸送の判断がしやすくなります。

Q4. 高さが合わないので仕立て直してから売りたいのですが

仕立て直しには費用と工期がかかります。本紙の状態によっては勧められない場合もありますので、先に現状のまま見てもらうほうが二度手間になりにくいでしょう。判断は作品の内容によって分かれます。

Q5. 箱に入っていない掛け軸でも相談できますか

相談自体はできます。ただし箱書には作者や由来が書かれていることがあり、作者が分からない作品を調べるうえでの情報源として意味を持ちます。たとう紙の中や押し入れの別の場所に残っていることもありますので、探してみることをおすすめします。

まとめ

掛け軸の「尺三」「尺五」「尺八」という呼称は尺貫法に由来し、1尺は約30.3cmです。ただし、この換算値は本紙側の幅の目安であって、表装込みの総幅ではありません。表装の形式は主なものだけで8形式あり、仕立てによって仕上がりの寸法は変わります。サイズは飾れる場所を通じて需要の広さに関わりますが、作者や内容、状態と並ぶ判断材料のひとつです。実寸と状態を控えたうえで、当社までご相談ください。

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