エラーコインとは?製造工程から見た種類と価値の考え方|見分け方も解説
財布の中の硬貨をよく見たら、穴の位置がずれていたり、模様が傾いていたりして、「これはエラーコインではないか」と気になった方もいるのではないでしょうか。エラーコインは製造工程で生じた不具合が残ったまま世に出た硬貨のことで、種類によっては額面を超えた評価がつくことがあります。一方で、流通中についた傷や後から加工されたものと区別がつきにくく、判断が難しい分野でもあります。この記事では、造幣局が公開している貨幣の製造工程をもとに、エラーコインの種類・見分け方・価値の考え方を整理します。
エラーコインとは|貨幣の製造工程で生じた不具合が残った硬貨
エラーコインとは、貨幣が造られる過程で何らかの不具合が生じ、本来とは異なる形や模様のまま市中に出た硬貨を指す呼び方です。造幣局の公式な用語ではなく、収集や売買の現場で使われている言葉です。
エラーがどこで生まれるのかを理解するには、貨幣がどう造られるかを知っておくと分かりやすくなります。造幣局によると、通常貨幣の製造は次の順序で進みます。
| 工程 | 内容 |
|---|---|
| 溶解 | 銅・ニッケルなどの貨幣材料を電気炉で溶かし、連続鋳造装置で鋳塊をつくる |
| 圧延 | 鋳塊を熱間圧延・冷間圧延で貨幣の厚みまで延ばす |
| 圧穿(あっせん) | 圧延板を貨幣の形に打ち抜き、「円形(えんぎょう)」と呼ばれる素材をつくる |
| 圧縁 | 円形の周囲に縁をつけ、その後に加熱してやわらかくする |
| 圧印・検査 | 表・裏の模様とギザを同時につけ、模様を検査してキズのある貨幣など不合格品を除く |
| 計数・袋詰め | 合格品を数えて袋に詰める |
一般にエラーコインと呼ばれるものの多くは、このうち圧穿・圧縁・圧印のいずれかで生じた不具合です。そして造幣局の工程には「検査」が組み込まれており、模様を検査して不合格品を除く仕組みになっています。つまり、エラーのある貨幣は本来なら検査ではじかれるものであり、市中に出ること自体が例外的だといえます。エラーコインに希少性が生まれるのは、この点が理由です。
なお、造幣局は1円から500円までの6種類の通常貨幣を製造しており、記念貨幣やプルーフ貨幣もあわせて手がけています。プルーフ貨幣は「表面を磨きあげた極印(ハンコの役目をする金型)を使用」し、「模様を鮮明にするため、2回以上の圧印(プレス)など、特別丁寧に製造」されると説明されています。通常貨幣とは工程が異なるため、エラーの出方も同じには論じられません。
エラーコインの主な種類|どの工程で生じたかで分けて考える
エラーコインは見た目の特徴で呼び分けられるのが一般的ですが、製造工程と結びつけて整理すると、それぞれが何を意味しているのかが分かりやすくなります。以下は収集・売買の現場で使われている呼び名を、生じる工程の観点から並べたものです。呼び名は業界で完全に統一されているわけではなく、業者によって表記が異なる場合があります。
穴に関するエラー(圧穿の工程)
5円硬貨と50円硬貨には中央に孔(あな)があります。造幣局の仕様では5円硬貨の孔径は5mm、50円硬貨の孔径は4mmです。この孔をあける位置がずれたものが「穴ずれ」、孔があいていないものが「穴なし(無孔)」と呼ばれます。孔の有無や位置は目視で判断しやすいため、比較的話題になりやすい種類です。
模様の位置に関するエラー(圧印の工程)
圧印は、円形に表・裏の模様とギザを同時につける工程です。ここで円形と極印の位置関係がずれると、模様が中心から外れた「刻印ずれ(ずれ打ち)」になります。表と裏の模様の向きが本来の関係からずれたものは「角度ずれ(傾打ずれ)」と呼ばれます。
圧印が正常に行われなかったエラー
模様がまったくつかない、あるいは極端に薄い状態のものは「無刻印」と呼ばれます。前の硬貨が極印との間に残ったまま次の円形が打たれ、鏡像の模様がうっすら写ったものは「影打ち」「裏写り」と呼ばれます。また、素材の表層が薄くめくれたような状態は「ヘゲ」と表現されます。
素材そのものに関するエラー(圧延・圧穿の工程)
圧延板の端で打ち抜かれたために円形が欠けている、あるいは厚みが規格から外れているといったものも、素材段階の不具合として扱われます。
| 呼び名 | 見た目の特徴 | 関係する工程 |
|---|---|---|
| 穴ずれ | 孔の位置が中心から外れている | 圧穿 |
| 穴なし(無孔) | 本来あるはずの孔がない | 圧穿 |
| 刻印ずれ(ずれ打ち) | 模様全体が偏り、無地の部分が出る | 圧印 |
| 角度ずれ(傾打ずれ) | 表と裏の模様の向きの関係がずれている | 圧印 |
| 無刻印 | 模様がつかない、極端に薄い | 圧印 |
| 影打ち・裏写り | 反対面の模様が鏡像で薄く残る | 圧印 |
| ヘゲ | 表層がめくれている | 圧延・圧印 |
| 縁の異常 | 縁が二重、または縁がない | 圧縁 |
エラーコインと「ただの傷・変形」は違う
エラーコインとして評価される可能性があるのは、あくまで製造工程で生じた不具合です。流通する過程でついた傷や変形は、これに含まれません。次のようなものは、見た目が変わっていてもエラーコインとは区別されます。
- 落としたり踏まれたりしてできた打痕、擦り傷
- 曲がった硬貨、潰れた硬貨
- 熱や薬品によって変色した硬貨
- 長年の使用による摩耗で模様が薄くなった硬貨
判断の手がかりは「製造の順序として説明がつくか」です。たとえば模様のずれであれば、ずれた部分に相応の無地の面が生じ、縁の形も対応して変化します。一方、後から力を加えて変形したものは、模様の彫り自体は正常なのに全体がゆがむという形になります。造幣局の工程を踏まえて「この状態は圧印のどの段階で起こりうるか」と考えると、区別しやすくなります。
ただし、実際には判別が難しい例も少なくありません。摩耗と圧印不足はどちらも模様が薄くなりますし、軽微な角度ずれは製造上の許容範囲との線引きが専門的な判断になります。自分だけで結論を出そうとせず、古銭を扱う専門業者に確認してもらうのが確実です。
後加工品・偽造エラーコインに注意|貨幣損傷等取締法という前提
参考:「貨幣損傷等取締法(昭和二十二年法律第百四十八号)」|e-Gov法令検索
エラーコインの分野で必ず押さえておきたいのが、後から人の手で加工されたものの存在です。孔をずらして開け直したり、模様を削ったりして「エラーらしく」見せた品が出回ることがあります。
そもそも、日本では貨幣を損傷する行為が法律で禁じられています。貨幣損傷等取締法は、第一項で「貨幣は、これを損傷し又は鋳つぶしてはならない。」と定め、第二項で「貨幣は、これを損傷し又は鋳つぶす目的で集めてはならない。」としています。そのうえで第三項は、これらに違反した者を「一年以下の拘禁刑又は二十万円以下の罰金に処する。」と定めています。
つまり、エラーコインらしく見せるために硬貨へ手を加えることは、法律に触れる行為です。買取の現場でも、加工が疑われるものは取り扱われないのが一般的です。手元の硬貨に不自然な加工痕がある場合は、価値の有無以前の問題として、無理に売買しようとしないほうがよいでしょう。
加工品を疑う手がかりとしては、切断面や孔の内側に工具の跡が残っている、削られた部分だけ金属の色味が違う、規格の量目から大きく外れている、といった点が挙げられます。財務省が公表している通常貨幣一覧では、1円が1.00g・直径20.0mm、5円が3.75g・22.0mm、10円が4.50g・23.5mm、50円が4.00g・21.0mm、100円が4.80g・22.6mm、500円(バイカラー・クラッド)が7.10g・26.5mmとされています。0.01g単位まで量れるはかりがあれば、規格からの大きなずれは自分でも確認できます。
参考:「通常貨幣一覧」|財務省
エラーコインの価値はどう決まるのか|「必ず高値」ではない
エラーコインについては高額取引の事例が話題になりやすいのですが、エラーがあれば必ず高く売れるわけではありません。実際の評価は、次のような要素の組み合わせで決まるとされています。
エラーの明確さ:誰が見てもはっきり分かるずれや欠けほど評価されやすく、ルーペでようやく気づく程度のものは差がつきにくい傾向があります。
エラーの種類:発生の仕組み上、出現しにくい種類ほど希少とされます。ただし、どの種類がどの程度出やすいかを示す公的な統計はありません。
保存状態:未使用に近い状態と、摩耗が進んだ状態では評価が変わります。これはエラーの有無にかかわらず、古銭全般に共通する考え方です。
額面と年号:製造枚数が少ない年号の硬貨は、母数が小さいぶん、その年のエラー品も出回りにくくなります。
需要:最終的には、その品を求める収集家がどれだけいるかによって価格が動きます。需要は時期によって変わるため、相場は固定的なものではありません。
一点だけ注意しておきたいのは、インターネット上で紹介される「◯◯万円で落札」といった事例が、そのまま自分の硬貨に当てはまるとは限らないという点です。落札事例は、エラーの程度・状態・鑑定の有無がすべて揃った個体についての結果であり、似た種類のエラーというだけで同じ評価になるものではありません。相場を見るときは、あくまで幅のある目安として捉えるのが現実的です。
手元の硬貨を確かめる手順と保管の注意
エラーコインかもしれないと思ったとき、専門業者に見てもらう前に自分でできる確認は次のとおりです。
1. 量目を量る:0.01g単位のデジタルスケールで重さを確認し、財務省の通常貨幣一覧の値と比べます。大きく外れていれば、加工や別素材の可能性を考えます。
2. 直径と厚みを測る:ノギスがあれば正確に測れます。孔のある硬貨は孔径も確認します。
3. 表と裏の向きを確認する:表を上にして左右に回し、裏の模様がどの向きになるかを見ます。角度ずれの確認に使えます。
4. 縁とギザを見る:圧縁・圧印の工程で生じるエラーは、縁の状態に現れることがあります。
5. 写真を撮っておく:査定を依頼する際、表・裏・縁の3方向の写真があると話が早く進みます。
保管については、洗浄や研磨をしないことが基本です。表面の状態は評価に関わるため、汚れを落とそうとして磨くと、かえって評価が下がる場合があります。硬貨用のカプセルやフォルダに入れ、直射日光と湿気を避けた場所に置いておくのが無難です。素手で触ると皮脂が残るため、縁を持つようにするとよいでしょう。
よくある質問
エラーコインは銀行で両替できますか
エラーコインであっても額面どおりの貨幣として通用しますので、通常の硬貨と同じ扱いで両替できます。ただし、両替すればその硬貨は手元から離れ、収集品としての価値を検討する機会もなくなります。エラーの可能性がある硬貨は、両替する前に専門業者へ相談してみるとよいでしょう。
傷や曲がりがある硬貨もエラーコインになりますか
流通後についた傷や、外から力が加わって曲がった硬貨は、製造工程で生じたエラーとは区別されます。エラーコインとして評価されるのは、造幣局の製造工程のいずれかの段階で生じた不具合が残ったものです。
ギザ10はエラーコインですか
いいえ。側面にギザのある10円硬貨は、当時の仕様としてギザが付けられていたもので、製造上の不具合ではありません。エラーコインとは別の話題として扱われます。
エラーコインを自分で加工して作ることはできますか
貨幣損傷等取締法により、貨幣を損傷することも、損傷する目的で集めることも禁じられています。違反した場合は一年以下の拘禁刑または二十万円以下の罰金に処されると定められています。加工品は買取の対象外となるのが一般的でもあり、行うべきではありません。
鑑定書がないと売れませんか
鑑定書がなくても査定自体は受けられます。ただし、第三者機関による鑑定やスラブ(密封ケース)に入った状態のものは、真贋と状態の判断がしやすくなるため、評価が安定しやすい傾向があります。付属品がある場合は、そろえて査定に出すとよいでしょう。
まとめ
エラーコインは、造幣局の製造工程のいずれかで生じた不具合が残ったまま市中に出た硬貨です。圧穿で生じる穴のずれ、圧印で生じる模様のずれや影打ちなど、工程と結びつけて考えると種類の整理がしやすくなります。造幣局の工程には検査が組み込まれており、不合格品を除く仕組みになっているため、エラーが残った硬貨は例外的な存在だといえます。
ただし、エラーがあれば必ず高値になるわけではありません。エラーの明確さ、種類、保存状態、需要といった要素で評価は大きく変わりますし、流通後の傷や後加工品との区別が難しい例も少なくありません。貨幣を損傷する行為は貨幣損傷等取締法で禁じられている点も、前提として押さえておきたいところです。
手元の硬貨が気になる場合は、重さと寸法を規格と比べたうえで、洗ったり磨いたりせずそのまま保管し、古銭に詳しい買取業者へ相談してみてはいかがでしょうか。判断の難しい分野だからこそ、実物を見てもらうのが確実です。