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翡翠の見分け方|硬玉と軟玉の違いと処理の有無を確かめる

緑色の石を前にして、これは翡翠なのか、それとも似た別の石なのかと迷う方は少なくありません。翡翠と呼ばれるものには鉱物として別種のものが含まれ、さらに樹脂や染料による処理が施されている場合もあります。そこでこの記事では、翡翠の見分け方を公的機関の解説にもとづいて整理します。硬玉と軟玉の違い、光にかざしたときに見える内部の様子、処理の有無を確かめる方法を順に説明します。

翡翠と呼ばれる石には二種類あります

硬玉と軟玉は別の鉱物です

新潟県糸魚川市のフォッサマグナミュージアムは、多くの教科書でヒスイ(jade)が硬玉(jadeite ジェイダイト)と軟玉(nephrite ネフライト)の2種に分けられると書かれてきたと説明しています。宝石店で販売されているヒスイは硬玉のほうで、価格的にも硬玉のほうが高価だとしています。

そのうえで同館は、日本では太古の昔からヒスイ輝石からできている硬玉と、角閃石(透閃石・透緑閃石)からできている軟玉をきちんと区別してきたと述べています。一方、欧米では硬玉と軟玉の区別があいまいで、緑色をした緻密な石がまとめて「Jade」と呼ばれる状況が今も見られると指摘しています。

参考:ヒスイって何だろう|フォッサマグナミュージアム(糸魚川市)

呼び方は分野によって異なります

同館は、大部分がヒスイ輝石やオンファス輝石などからなるものをヒスイやヒスイ輝石岩と呼んでいます。大部分が透閃石〜透緑閃石からなり緻密なものは軟玉(ネフライト)・透閃石岩と呼び、「硬玉」という用語は使わないことにしていると明記しています。

硬玉という呼び方はほとんど死語になっており、この用語をいまだに使っているのは考古学の世界ぐらいだとも説明されています。宝石の分野ではジェイダイト、地質の分野ではヒスイ輝石岩という言い方が使われます。

比較の要点

項目 硬玉(ヒスイ輝石岩・ジェイダイト) 軟玉(ネフライト・透閃石岩)
主な構成鉱物 ヒスイ輝石、オンファス輝石 透閃石〜透緑閃石(角閃石)
鉱物のグループ 輝石 角閃石
一般的な扱い 宝石店で「ヒスイ」として販売される 別種として区別される
日本での産地 糸魚川および周辺地域が最大

硬玉の中身は「複数の鉱物の集合体」です

単一の鉱物ではありません

フォッサマグナミュージアムは、ヒスイがさまざまな鉱物の集まりでできていると説明しています。ダイヤモンドやルビーのように単一の鉱物からなる宝石とは、成り立ちが異なります。ほとんどの部分はヒスイ輝石という鉱物ですが、濃い緑色の部分はオンファス輝石に近い組成を持つことが分かってきたとしています。

そのほかに曹長石やぶどう石、方沸石、ソーダ珪灰石、チタン石、ジルコンなどが含まれることもあります。一方で石英は含まれないと明記されています。

この「複数の鉱物の集合体である」という性質が、後述する見た目の特徴に直結します。

色の原因

同館は、ヒスイの色が含まれる微量成分の違いによって生み出されると説明しています。要点をまとめると次のとおりです。

  • 白色:純白に近いヒスイ輝石からなり、色の原因となる元素を含まない
  • 緑色:オンファス輝石に含まれる微量の鉄やクロムによる
  • 薄紫色:ヒスイ輝石に含まれる微量のチタンと鉄による
  • 青色:オンファス輝石に含まれるチタンと鉄による
  • 黒色:石墨からなり、色の原因は炭素

緑色以外に白・淡紫・青・黒・黄・橙・赤橙などの色があり、日本では橙〜赤橙色のヒスイは発見されていないとされています。

なお、かつて糸魚川で「ピンクヒスイ」と呼ばれた石はヒスイではなく、桃色の単斜灰れん石(桃れん石)を含むロディン岩だと説明されています。似た色の石がヒスイと取り違えられてきた実例です。

日本の国石に選ばれています

一般社団法人日本鉱物科学会は、2016年9月24日の総会において「ひすい(ひすい輝石およびひすい輝石岩)」を国石として選定しました。会員による投票で、決選投票の結果ひすいが71票、水晶が52票となったと公表されています。

選定の条件には「その石の産出が現在まで継続し、野外で見学できること」「野外での見学が、法律による保護などによって持続可能であること」が挙げられていました。

参考:日本の国石「ひすい」|一般社団法人日本鉱物科学会

光にかざしたときに見える内部の様子

多結晶であることが手がかりになります

一般社団法人宝石鑑別団体協議会(AGL)は、ジェイダイトについて「粒状〜繊維状の微細な結晶が集合した多結晶の宝石です」と説明しています。単結晶の透明宝石とは異なり、内部からの輝きは期待できないとしています。

そのため、表面の光沢や質感を表現する目的で、ふっくらとした曲面を持つカボション・カットが施されるとも述べられています。ファセット(切子面)を付けて内部で光を反射させる石とは、そもそも仕上げの考え方が違うということです。

参考:コメントの解説「ジェイダイト(ひすい)」|一般社団法人 宝石鑑別団体協議会(AGL)

光にかざすときに見るポイント

強い光を当てて透かしたときに観察できるのは、次のような点です。いずれも決め手にはなりませんが、疑問点を洗い出す材料にはなります。

  1. 全体が均一に透けるか、部分によって透け方が違うか
  2. 細かな粒や繊維が絡み合ったような組織が見えるか
  3. 色が斑(まだら)に分布しているか、外縁部だけ濃いか
  4. 気泡のような丸い空隙が見えるか
  5. 表面と内部で色の見え方に差があるか

このうち3番目は特に注意が必要です。AGLは、樹脂含浸処理されたジェイダイトの切断面について「樹脂が浸透した外縁部のみ濃色」になる例を図示しています。外縁だけ色が濃い場合は、処理の可能性を検討する材料になります。

硬度について分かっていること

AGLはジェイダイトの硬度を6.5〜7としています。そのうえで「それ程硬くはありませんが、カケや割れに対する抵抗力が高い宝石素材です」と説明しています。そのしなやかさと強靭さゆえに、非常に繊細な彫刻を施すことが可能だとしています。

つまり硬玉の特徴は「硬さ」よりも「割れにくさ」にあります。硬玉という名称から硬さを期待すると、実態を取り違えることになります。

比重について

比重は鑑別の指標の一つとして扱われます。ただし、硬玉と軟玉それぞれの比重の具体的な数値は、本記事で確認できた公的機関の解説ページには記載がありませんでした。

インターネット上には数値を示す情報が多数ありますが、出典が確認できないものを判断の基準にするのは避けてください。比重を根拠にしたい場合は、後述する鑑別機関に測定を依頼するのが確実です。

処理の有無は分析機器でしか判断できません

翡翠には複数の処理があります

AGLは、ジェイダイトの鑑別書に記載される開示コメントを次のように整理しています。処理の種類ごとに表現が定められています。

処理の方法 鑑別書の開示コメント
ワックス 通常、ワックス加工が行われています
着色 色素による着色処理がおこなわれています
樹脂含浸 無色樹脂の含浸処理が行われています
有色樹脂含浸 有色樹脂の含浸処理が行われています

同協会は、カット・研磨の最終工程で艶出しのためにワックス加工が施されると説明しています。産出するほとんどのものは白色であるため、古くから見かけの価値が高い緑色や藤色に染色されることがあったとも述べています。

さらに1990年代に入って新しい処理法が開発されたとし、これは酸化鉄などで汚れた原石を強酸で漂白し、無色あるいは有色樹脂を含浸する方法だと説明しています。この処理が施されると、見かけの透明度と色が見違えるほどに向上するとされています。

家庭では判別できません

AGLの用語解説は、含浸について「トルコ石、ラピスラズリ、ヒスイなどの多孔質あるいは多結晶宝石には外観と共に耐久性向上のため、ワックスやプラスチックなどの素材が含浸されます」としたうえで、次のように明記しています。

ヒスイの含浸処理の識別にはFT-IR(フーリエ変換型赤外分光)分析が必要である、というものです。専用の分析機器を使わなければ判別できない、と公式に述べられているわけです。

参考:コメントの解説「主な処理について」|一般社団法人 宝石鑑別団体協議会(AGL)

鑑別書を確認する

AGLは、会員が発行する宝石鑑別書には鑑別結果のコメント欄に個々の宝石に施された処理の情報が記載されていると説明しています。手元の石に鑑別書が付いている場合は、まずコメント欄を読んでください。

鑑別書がない場合は、AGLの会員機関に鑑別を依頼するのが確実な手順です。会員名簿は同協会のサイトで公開されています。

参考:一般社団法人 宝石鑑別団体協議会(AGL)

自分で試してはいけない確認方法

薬品や加熱による試験は勧められません

インターネット上では、薬品を垂らす方法や火であぶる方法が紹介されていることがあります。傷を付けて硬さを試す方法も同様です。これらは試料を損なうため、当社としてはお勧めできません。

AGLは、ほとんどのジェイダイトにワックス加工が施されているため超音波洗浄機の使用は避けるよう促しています。またワックスが吸い取られるおそれがあるとして、脱脂綿などに包んで保管することも避けたほうが無難だとしています。

さらに、含浸処理や漂白された素材は超音波洗浄や化学薬品、熱にさらさないよう注意が必要だとも記されています。着色や染色処理された素材については、染料を溶かす可能性があるためアセトンやアルコールに触れないよう注意が必要で、退色のおそれがあるため日光に長時間さらさないよう促されています。

傷を付ける試験の問題点

硬度を確かめるために別の石でこする方法も知られていますが、傷は元に戻りません。前述のとおりジェイダイトの硬度は6.5〜7で、決して傷が付かない素材ではありません。

そもそも処理の有無は硬度では判別できません。傷を付けても得られる情報は限られ、失うものだけが残ります。

公立博物館の鑑定サービスという選択肢

フォッサマグナミュージアムは、海岸などで拾った石の名前を教える鑑定サービスを無料で行っています。ただし利用には条件があり、事前に配布する鑑定券を持つ方のみが対象で、郵送による鑑定は受け付けていないと案内されています。

長さが15cm以上のもの、ぬれている石や汚れている石、販売目的や加工・研磨された石は対象外とされています。鑑定は1人5個までです。

参考:石の鑑定|フォッサマグナミュージアム(糸魚川市)

なお、素材そのものの真贋や価値の考え方は、べっ甲白珊瑚など他の天然素材とも共通する部分があります。天然素材の見方については別記事もあわせてご覧ください。

糸魚川では文化財指定地での採取が禁止されています

国の天然記念物に指定されています

糸魚川市には、国の天然記念物に指定された硬玉の産地が二か所あります。文化庁の文化遺産オンラインによれば、「小滝川硬玉産地」は昭和31年(1956年)6月29日に天然記念物に指定されました。明星山の山麓、小滝川下流の川床に散在する巨礫からなり、我が国唯一のヒスイの集団的産地として学術上の価値がきわめて高いと解説されています。

参考:小滝川硬玉産地|文化遺産オンライン(文化庁)

「青海川の硬玉産地及び硬玉岩塊」は昭和32年(1957年)2月22日に指定されています。黒姫山の西方、青海川の橋立集落付近の川床に散在する約30個の硬玉を含む曹長岩塊からなり、蛇紋岩と硬玉を含む岩石との地質学的関係を明らかに示す点で特に意義があると解説されています。

参考:青海川の硬玉産地及び硬玉岩塊|文化遺産オンライン(文化庁)

採取は法律で罰せられます

糸魚川市は公式サイトで「文化財指定地内でヒスイや石、動植物を傷つけたり、採取・捕獲したりすると文化財保護法により罰せられます」と明記しています。文化財を守るため、見学時には現地の看板や施設管理者の指示に従うよう求めています。素材そのものに法規制がかかる例は、象牙が関わる印材にもあります。

参考:文化財指定地でのヒスイ等の採取は禁止されています|糸魚川市

文化財保護法第125条は、史跡名勝天然記念物に関してその現状を変更し、またはその保存に影響を及ぼす行為をしようとするときは文化庁長官の許可を受けなければならないと定めています。同法第196条は、史跡名勝天然記念物を滅失・毀損・衰亡させた者に対する罰則を定めています。

参考:文化財保護法 第百二十五条・第百九十六条|e-Gov 法令検索

現地に行く前に規制範囲を確認する

指定範囲は現地の看板や自治体の案内で示されています。「川原だから自由に拾える」という判断は成り立ちませんので、必ず事前に糸魚川市の案内を確認してください。

フォッサマグナミュージアムも、小滝川や青海川のヒスイ峡が天然記念物に指定されるなど大事に保全されており、そのおかげでヒスイは今でも野外で見ることができると説明しています。保全と見学は表裏一体の関係にあります。

よくある質問

Q1. 緑色で硬い石なら翡翠と考えてよいでしょうか

緑色で緻密な石は翡翠以外にも多数あります。フォッサマグナミュージアムは、欧米では蛇紋岩すらもヒスイ(Jade)とラベルされていることがあると指摘しています。糸魚川で「ピンクヒスイ」と呼ばれた石がロディン岩だった例もありますので、見た目の色だけでの判断は避けてください。見た目が似た素材を断面や層から判断するという点では、本堆朱と木彫堆朱の見分け方も同じ構図です。

Q2. 家庭で比重を測れば硬玉かどうか分かりますか

比重は鑑別の指標の一つですが、家庭の器具での測定は誤差が出やすく、判断の根拠としては弱くなります。また比重が近い別の石も存在します。数値で確かめたい場合は、宝石鑑別団体協議会の会員機関など、測定設備のある鑑別機関に依頼してください。

Q3. 樹脂含浸されているかどうかを自分で確かめる方法はありますか

ありません。宝石鑑別団体協議会は、ヒスイの含浸処理の識別にはFT-IR(フーリエ変換型赤外分光)分析が必要だと明記しています。外縁部だけ色が濃いといった特徴は疑いを持つきっかけにはなりますが、確認は分析機器を持つ機関に依頼してください。

Q4. 糸魚川の海岸でヒスイを拾ってもよいのでしょうか

文化財指定地内での採取は文化財保護法により罰せられると糸魚川市が明記しています。指定地の範囲や、それ以外の場所での取り扱いについては、市の案内や現地の掲示が最新の情報になります。現地に行く前に必ず糸魚川市の公式ページを確認し、看板や施設管理者の指示に従ってください。

Q5. 鑑別書があれば真贋の心配はいらないでしょうか

鑑別書は宝石の種類と処理の有無を示す文書です。宝石鑑別団体協議会は、会員が発行する鑑別書のコメント欄に処理の情報が記載されると説明しています。まずコメント欄まで読み、ワックス加工や含浸処理の記載がないかを確認してください。

まとめ

翡翠の見分け方は、硬玉と軟玉という鉱物の違いを押さえることから始まります。色や透け方は手がかりになりますが、処理の有無は分析機器がなければ判別できません。薬品や加熱による自己判断は試料を損ないますので避けてください。糸魚川の文化財指定地での採取も禁じられています。当社では鑑別書の有無もあわせて確認し、丁寧にご説明いたします。

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