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10気圧防水の腕時計は水洗いしていい?防水表示の意味と正しい洗い方|メーカー公式の案内で確認

腕時計の裏ぶたに「10BAR」「10気圧防水」と刻印されているのを見て、これなら水道で洗っても大丈夫だろうと考える方は多いと思います。ただ、10気圧という表示が実際に何を保証しているのかは、意外と誤解されています。この記事では、日本時計協会の用語規約とJISの区分をもとに10気圧防水の意味を整理し、メーカー公式が案内している水洗いの方法、避けたほうがよい扱い、そして防水性能が経年で落ちる理由までをまとめます。

10気圧防水(10BAR)とは?「水深100mまで潜れる」ではない

まず用語の整理からです。一般社団法人日本時計協会(JCWA)の用語規約では、「防水性」を「外部から時計のケース内へ、水・汗などが侵入することを防ぐ特性」と定義しています。そのうえで、性能の程度によって区分が設けられています。

  • 日常生活用防水:「日常生活での汗や洗顔のときの水滴・雨などに耐える性能」
  • 日常生活用強化防水:「水泳など水中での使用が可能な性能」
  • スクーバ潜水用防水:「自給気式水中呼吸装置(SCUBA)を使用する浅海潜水に耐える性能」
  • 飽和潜水用防水:「ヘリウムなどの不活性ガスと酸素から成る高圧混合ガスを呼吸気体として用いる深海潜水で最低200mの潜水に耐える性能」

いずれも検査方法と要求事項は規格で定められており、日常生活用防水と日常生活用強化防水は「JIS B 7021 一般用防水携帯時計」および「ISO22810 防水ウオッチ」、潜水用の区分は「JIS B 7023 潜水用携帯時計」および「ISO6425 ダイバーズウオッチ」で規定されています。

参考:「時計用語 JCWA-T006:2024」|一般社団法人日本時計協会

10気圧防水はこのうち「日常生活用強化防水」に該当します。シチズンの公式サイトでは、日常生活用強化防水を5気圧から30気圧の範囲として説明しており、「1barは1気圧、水深約10mに相当します」と記載されています。ここから「10気圧=水深100m」と読み替えたくなりますが、これはあくまで圧力の換算であって、水深100mまで潜れるという意味ではありません。

その根拠として分かりやすいのが、セイコーの取扱説明書に掲載されている使用可否の案内です。10気圧・20気圧の時計について「空気ボンベを使用しないスキンダイビングに使用できます」とされている一方で、空気ボンベを使うスキューバダイビングは対象外とされています。レクリエーションのスキューバダイビングは一般に水深数十メートルの範囲ですから、換算上の「水深100m相当」よりずっと浅い領域です。それでも対象外になっているのは、防水試験が静止した状態の圧力を前提としているためです。

実際の着用では、水中で腕を振る、飛び込む、蛇口の水を勢いよく当てるといった動作で、表示値を超える瞬間的な圧力がかかります。10気圧という数字は「その水深まで行ける」ではなく「日常生活の範囲であれば水に濡れても内部に水が入りにくい」という性能の目安、と理解しておくのが実態に合っています。

JISの区分と、10気圧防水で使える範囲

メーカー公式の案内をもとに、区分ごとの使用可否を整理すると次のようになります。

防水表示 区分 水仕事・手洗い 水泳 素潜り(スキンダイビング) スキューバ
表示なし(非防水) 非防水 × × × ×
WATER RESISTANT 日常生活用防水 × × ×
WATER RESISTANT 5 BAR 日常生活用強化防水 × ×
WATER RESISTANT 10(20)BAR 日常生活用強化防水 ×
200m〜300m表示 潜水用防水

参考:「防水性能について」|セイコーウオッチ

参考:「防水性能について」|シチズンウオッチ

10気圧防水は、水泳や素潜りまでカバーする性能です。手洗いや洗顔、雨、水仕事はもちろん、プールでの使用も想定の範囲に入ります。日常の中で「濡れて困る」場面はほとんどないと言ってよい水準です。

なお、シチズンでは潜水用防水を200m〜300m、飽和潜水用防水を300m〜1000mとして案内しており、飽和潜水用にはヘリウムガス排気バルブなどの専用構造が備わっているとしています。数字の桁が変わるだけでなく、そもそも設計思想が別物だということです。

10気圧防水の腕時計は水洗いできる

本題の水洗いについてです。結論として、10気圧防水の腕時計は水洗いできます。ただし、メーカーが案内している手順には条件が付いています。

シチズンの「日常のお手入れ」では、流水で洗浄するには「『5気圧防水(W.R.5BARなど)』以上の防水性能が必要です」と明記されています。10気圧防水はこの条件を満たしています。

そのうえで注目したいのが、同じページに書かれている洗い方です。金属バンドの汚れがひどい場合は「柔らかい歯ブラシなどを使い、せっけん水でバンドを洗ってください」としつつ、その際は「時計本体を台所用ラップなどで包んで水がかからないようにし、洗った後は良く乾燥させます」と案内されています。つまり公式が想定しているのは、時計まるごとを流水にさらす洗い方ではなく、汚れが溜まりやすいバンドを重点的に洗い、本体は保護するという方法です。

セイコーの取扱説明書でも、海水につけた後の手入れについて「必ず真水でよく洗ってからふき取ってください。その際、直接蛇口から水をかけることは避け、容器に水をためるなどしてから洗ってください」と記載されています。蛇口の水を直接当てるのを避けるのは、水流の勢いが局所的に高い圧力になるためです。

参考:「日常のお手入れ」|シチズンウオッチ

参考:「お手入れについて」|セイコーウオッチ

水洗いの手順と、洗う前に確認すること

公式の案内をふまえた実際の手順は次のとおりです。

1. 洗う前の確認

裏ぶたやダイヤルの防水表示を確認します。表示が「WATER RESISTANT」だけであれば日常生活用防水にとどまるため、流水での洗浄は避けます。ねじロック式のリューズが付いているモデルは、確実にロックされているかを確かめてください。シチズンでは、ねじロックりゅうずのロックをしないままでの使用を避けるよう案内しています。革バンドや布バンドのモデルは、バンドを外すか、そもそも水洗いを避けます。

2. 容器に水をためる

蛇口から直接水を当てず、洗面器などに水をためます。使うのは水であって、お湯ではありません(理由は次章で説明します)。

3. バンドを中心に洗う

柔らかい歯ブラシで、コマの隙間やバックル裏側の汚れをやさしく落とします。金属バンドで汚れがひどい場合は、公式の案内どおり石けん水を使う方法もありますが、その場合は時計本体にかからないようラップなどで保護し、あとで石けん分が残らないようすすいでください。

4. 水分を完全に拭き取り、乾燥させる

洗い終えたら乾いた柔らかい布で水分を吸い取るように拭きます。コマの隙間やラグ(バンドの取り付け部)には水が残りやすいので、しっかり乾かします。濡れたまま放置すると、金属バンドでもさびの原因になります。

お湯・洗剤・サウナを避けたい理由

水洗いそのものは問題なくても、条件が変わると話が別になります。

温水・サウナ・温泉

シチズンでは、防水時計であっても「温水や温泉に浸けたり、サウナでの使用」は避けるよう案内しています。理由は温度です。時計内部の空気は温度が上がると膨張し、冷えると収縮します。この繰り返しがパッキンに負担をかけ、内部が陰圧になったタイミングで水分を吸い込むことがあります。加えて、温泉には成分によって金属やパッキンを傷めるものが含まれます。防水性能は常温での試験を前提としているため、温水はそもそも想定外の使い方だと考えてください。

リューズやボタンの操作

シチズンでは「水中でのりゅうずやボタンの操作」を避けるよう明記しています。セイコーの取扱説明書にも「りゅうずを引き出して洗わないでください」という記載があります。リューズはケースに開いた穴を、パッキンで密閉している構造です。引き出したり回したりしている状態は、密閉が解けているか、パッキンが動いている状態にあたります。水がかかっている場面でこれをやると、水が入る経路をこちらから開けてしまうことになります。

洗剤・シャンプー

洗剤やシャンプーの成分は、ゴム製パッキンの弾力を損なう可能性があります。前述のとおりシチズンは金属バンドの手入れに石けん水を挙げていますが、これはあくまで「本体に水がかからないようにしたうえで、バンドを洗う」文脈での案内です。ケースまわりや裏ぶたに洗剤が回り込む洗い方は避けたほうが無難です。入浴時に時計を着けたままボディソープを使う、といった扱いも同様です。

塩水・砂

海に入ったあとは、真水でよく洗ってから拭き取ります。塩分が残るとさびの原因になり、砂粒がパッキンとケースの間に噛み込むと、そこから水が入る隙間ができます。

整理すると、次のようになります。

扱い方 可否の目安 理由
容器にためた水でバンドを洗う 公式が案内している方法。5気圧防水以上が条件
蛇口の流水を直接当てる 避ける 局所的に高い圧力がかかる
手洗い・洗顔・雨・水仕事 日常生活用強化防水の想定範囲
水泳・素潜り ○(10気圧の場合) メーカーの使用可否案内で対象とされている
スキューバダイビング × 10気圧・20気圧でも対象外
水中でのリューズ・ボタン操作 × 密閉が解けた状態になり浸水の原因になる
入浴・温泉・サウナ 避ける 温度変化がパッキンに負担をかける
洗剤・シャンプーが本体にかかる洗い方 避ける パッキンの劣化につながる可能性がある

防水性能は経年で低下する|点検とパッキン交換

見落とされやすいのが、防水性能は購入時の状態が永続するわけではない、という点です。

防水を担っているのはゴムや樹脂のパッキンで、経年で硬くなったり、弾力を失ったりします。リューズの操作を繰り返すことによる摩耗もあります。シチズンでは「2〜3年に一度の定期的な点検にあわせて防水パッキンの交換をお勧めいたします」と案内しています。

つまり、10気圧防水と表示された時計であっても、10年間一度も点検していない個体が今も10気圧の性能を保っている保証はありません。長く使っている時計を水洗いする前に、電池交換やオーバーホールの際に防水検査を受けておくと安心です。裏ぶたを開ける作業を伴った後は、防水性能が正しく回復しているかどうかが特に重要になります。

参考:「防水性能について」|シチズンウオッチ

汚れが落ちない・水が入ったときの選択肢

自分で洗っても汚れが落ちない、あるいは風防の内側が曇っている・水滴が見えるという場合は、対応を切り替える必要があります。

内側の曇りは、すでに内部に水分が入っているサインです。放置すると機械部分のさびや文字盤の劣化につながるため、早めに時計修理店やメーカーのサービス窓口に相談してください。自分で裏ぶたを開けようとすると、防水構造を壊してしまう可能性が高く、おすすめできません。

汚れの蓄積については、ブレスレットのコマを分解して洗浄する超音波洗浄など、修理店で対応してもらえる方法があります。オーバーホールとあわせて依頼すれば、パッキン交換と防水検査も同時に受けられます。

一方で、修理費用が時計の市場価値に見合わないケースもあります。オーバーホール費用がモデルの中古相場を上回るような場合や、そもそも使う機会が減っているような場合は、状態のよいうちに売却を検討するのもひとつの選択肢です。買取店では汚れや小傷を前提に査定するため、無理に自分で磨いてかえって傷を増やすより、そのまま査定に出したほうが結果がよくなることもあります。買取価格は状態やモデル、市場の状況で変動しますので、金額はあくまで目安として、複数社で比較することをおすすめします。

よくある質問

Q. 10気圧防水の時計を着けたままお風呂に入ってもいいですか

メーカーの案内としては、温水やサウナでの使用は避けるよう記載されています。防水性能の試験は常温を前提としており、温度変化はパッキンに負担をかけます。石けんやシャンプーが付着する点も含め、入浴時は外すのが無難です。

Q. 10気圧防水なら水泳や素潜りはできますか

セイコーの案内では、10気圧・20気圧の時計は空気ボンベを使用しないスキンダイビングに使用できるとされています。水泳も同様に想定の範囲です。ただしスキューバダイビングは対象外です。

Q. 蛇口の水を直接当てて洗うのはだめですか

セイコーの取扱説明書では、直接蛇口から水をかけることは避け、容器に水をためてから洗うよう案内されています。流水は勢いによって局所的に高い圧力がかかるため、容器の水で洗うほうが安全です。

Q. 洗ったあとに内側が曇りました。どうすればいいですか

内部に水分が入った可能性があります。時間が経つほど内部のさびが進む可能性があるため、早めに修理店やメーカーの窓口に相談してください。自分で裏ぶたを開けるのは避けてください。

Q. 防水パッキンはどのくらいで交換すべきですか

シチズンは、2〜3年に一度の定期点検にあわせた防水パッキンの交換を推奨しています。電池交換やオーバーホールのタイミングで、あわせて防水検査を依頼するとよいでしょう。

まとめ

10気圧防水(10BAR)は、JISの区分では「日常生活用強化防水」にあたり、水泳や素潜りまで想定した性能です。ただし「水深100mまで潜れる」という意味ではなく、静止した状態での圧力に対する試験値である点に注意が必要です。実際、メーカーの案内では10気圧・20気圧でもスキューバダイビングは対象外とされています。

水洗いについては、シチズンが流水での洗浄に5気圧防水以上を条件として挙げており、10気圧防水はこれを満たします。ただし公式が案内している方法は、本体をラップなどで保護してバンドを中心に洗い、蛇口から直接水を当てず容器の水を使う、というものです。水中でのリューズ・ボタン操作、温水やサウナでの使用、洗剤が本体に回り込む洗い方は避けてください。

そして、防水性能は経年で落ちていきます。2〜3年に一度の点検とパッキン交換を目安に、状態を保ったまま使い続けるのが結果的にいちばん安全な扱い方だと言えます。