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茶道具の読み方一覧|棗・柄杓・建水など難読名と用途

蔵や納戸から出てきた茶道具の箱書きを読もうとして、そもそも道具の名前が読めずに困った経験はないでしょうか。茶道具の名称は漢字も読みも独特で、辞書を引いても出てこないものが少なくありません。そこでこの記事では、茶道具の読み方を用途別に整理し、それぞれが何をするための道具なのかを流派の公式解説にもとづいて説明します。

茶道具の名前が読みにくい理由

音読みと訓読みが混ざっています

茶道具の名称には、「建水(けんすい)」のように音読みするものと、「棗(なつめ)」のように訓読みするものが混在しています。並びに規則性がないため、初めて見る名前を推測で読むのは難しくなります。

さらに、日常語では別の読みをする漢字が茶の湯だけ特別な読みになる例もあります。「茶碗」を「ちゃわん」ではなく「ぢゃわん」と表記する用語もその一つです。

一つの道具に複数の呼び名があります

同じ道具でも、形や素材によって呼び名が変わることがあります。菓子を盛る器を例に取ると、表千家不審菴は主菓子器として縁高・銘々皿・鉢・食籠を挙げています。

用途で覚え、名称は用途に紐付けて記憶するほうが確実です。以下では用途ごとに分けて整理します。

この記事の出典について

以下の読みと説明は、表千家不審菴が公開している「茶の湯用語集」および「茶の湯の道具」の記述にもとづいています。流派によって扱いが異なる部分もありますので、稽古で用いる名称はご自身の流派の指導に従ってください。

参考:茶の湯用語集|表千家不審菴

なお三千家とは、千利休を祖とする表千家・裏千家・武者小路千家を指します。江戸時代初期に元伯宗旦の三男の江岑宗左が表千家をたてました。四男の仙叟宗室が裏千家を、次男の一翁宗守が武者小路千家をたてたと説明されています。道具の名称の多くは流派を越えて共通しますが、扱いや呼称に差がある点はご留意ください。

参考:茶の湯の道具|表千家不審菴

抹茶を点てるための基本の道具

棗(なつめ)

薄茶を入れる器のうち、代表的なものが棗です。形が棗の実に似ていることから、この名が付いたと説明されています。

「利休形」として大・中・小の大きさが定められており、黒漆が一般的です。ほかに「紹鴎形」や「道安形」などもあり、時代とともに素材・形・色・模様がさまざまに作られるようになりました。

茶器(ちゃき)

薄茶を入れる容器を指す言葉ですが、茶道具を総称して「茶器」と呼ぶ場合もあります。文脈によって指す範囲が変わる語です。

茶杓(ちゃしゃく)

抹茶をすくう匙が茶杓です。ほとんどは竹で作られますが、象牙・木地・塗物もあります。

茶杓を入れる筒が添えられるのが通例です。竹の茶杓は家元の自作が多く、代々の家元の個性がよく表れる道具だと説明されています。

茶碗(ちゃわん)と楽茶碗(らくぢゃわん)

楽茶碗は楽焼の茶碗で、楽長次郎を祖とする楽家によってその伝統が継承されています。千利休がわび茶にふさわしい茶碗として創造して以来、茶の湯で大きな位置を占めるようになりました。

黒と赤の二種が多く、轆轤(ろくろ)挽きによらない手捏(てづく)ねの技法が用いられます。

天目茶碗(てんもくぢゃわん)は、抹茶の飲用のため日本に最も古く伝わった中国の茶碗です。高麗茶碗(こうらいぢゃわん)は朝鮮半島で作られた茶碗の総称を指します。

高台(こうだい)

茶碗・鉢・皿などの底に付いた台が高台です。茶碗を拝見するときの重要な見どころの一つとされ、形もさまざまだと説明されています。高台のまわりに窯や作者の印が残っていることもあり、陶器の裏印の調べ方が手がかりになります。

参考:茶の湯用語集「棗」「茶杓」「楽茶碗」「高台」|表千家不審菴

水と火にまつわる道具

水指(みずさし)

釜に入れる水や、茶碗・茶筅などをすすぐ水を入れておく器が水指です。金属・陶磁器・竹などのものがあります。

柄杓立・建水・蓋置などと組み合わせ、材質や紋様を同一に作ったものは皆具(かいぐ)と呼ばれます。皆具は台子や長板に飾り付ける場合が多い道具です。

建水(けんすい)

茶碗をすすいだ湯や水を捨てる器が建水です。金属・陶磁器・木地の曲物などがあります。

「たてみず」とは読みません。「けんすい」が正しい読みです。

柄杓(ひしゃく)

釜の湯や水指の水を汲む道具が柄杓です。竹製で、合(ごう)と柄(え)から成り、炉用と風炉用があります。

柄の先端が合を貫いた「真の柄杓」のほか、一般には「月形」と呼ぶ柄の先に合を差した柄杓が使われます。

蓋置(ふたおき)

釜の蓋をのせたり、柄杓の合をのせたりする道具が蓋置です。金属・陶磁器類・竹などがあります。金属の茶道具を代々手がけてきた家としては、千家十職の金物師である中川浄益が知られています。

竹の蓋置は引切(ひききり)といい、節の高さによって炉用と風炉用の別があります。

水屋(みずや)

茶室に付属し、点前や茶事の準備をするための部屋が水屋です。水屋棚を設け、釜をかける丸炉や料理をするための炉などを備えます。「水遣」とも書きます。

参考:茶の湯用語集「水指」「建水」「柄杓」「蓋置」|表千家不審菴

釜(かま)

茶の湯に用いる鋳鉄製の器が釜です。炉用・風炉用ともに形や地紋の種類が多く、口・肩・鐶付・羽などによってさまざまな形があります。

茶事や茶会を行うことを「懸釜(かけがま)」「釜をかける」と表現します。

風炉(ふろ)と炉(ろ)

15世紀に炉が茶室に取り入れられるまで、茶の湯の湯は一年を通じて風炉で用意されていました。5月から11月にかけて、炭を入れて釜をかけ湯を沸かすために用いるのが風炉です。材質は土・唐銅・鉄などがあります。

11月はじめの立冬を待って炉を開くことを開炉(かいろ)といい、「炉開き」とも呼ばれます。11月から翌春5月までの半年間は炉による茶の湯が行われます。

なお、立夏を迎えて炉から風炉に替わった当初の茶の湯は初風炉(しょぶろ)と呼ばれます。

炭斗(すみとり)

炭点前のとき、炭・火箸・鐶・釜敷・香合・羽箒を組み入れて茶席に持ち出す器が炭斗です。籐・竹・棕櫚皮(しゅろがわ)・蓮茎(はすくき)などで編まれた籠がよく用いられます。

炉には大ぶりのもの、風炉には小ぶりで浅いものを用います。

香合(こうごう)

香を入れる器が香合で、炭点前をするための炭道具の一つです。香木を香として使う風炉には漆塗・木地・竹・瓢などの香合、練り香を使う炉には焼物の香合が用いられます。

炭点前(すみでまえ)

炉や風炉に炭をつぐ作法が炭点前です。茶事では初座の「初炭(しょずみ)」と後座の「後炭(ごずみ)」があります。

自在(じざい)

炉に釜を釣る道具が自在です。小間では竹の自在が用いられます。広間の釣釜には鎖が用いられると説明されています。

参考:茶の湯用語集「釜」「風炉」「開炉」「炭斗」「香合」|表千家不審菴

濃茶の道具と袋物・棚物

茶入(ちゃいれ)

濃茶を入れる陶製の容器が茶入です。仕覆(袋)に入れ、点前のはじめには棚物や道具畳に飾られます。

蓋は象牙を用い、蓋裏には金箔をはります。唐物と和物があり、茶の湯の道具のなかでも古くから高い位置を占めてきたため、名物が数多くあると説明されています。

仕覆(しふく)

茶入や茶碗を収める袋が仕覆で、「仕服」とも書きます。茶入の場合は「名物裂」や「古代裂」と呼ばれるものが用いられることが多い道具です。

茶入の袋は、茶入・茶杓とともに客の拝見に供されます。

台子(だいす)と棚物(たなもの)

台子は、茶の湯の点前で用いる棚です。長方形の天板と地板を四本の柱で支えた黒塗のものが正式で、「真台子(しんだいす)」と呼ばれます。二本柱の及台子(およびだいす)や、竹台子など「草」の格のものもあります。

棚物は、四畳半以上の広間の道具畳に据え、その上に水指・茶器・香合などを随時のせて点前に用いるものです。大棚(台子・長板など)と小棚に大別されます。

濃茶(こいちゃ)と薄茶(うすちゃ)

濃茶は一人分が茶杓3杓を目安とし、葛湯に似た濃さに練った一碗を4〜5人で回し飲みします。茶事においては濃茶が最も大切なもてなしです。

薄茶は茶杓に一杓半の抹茶を入れ、湯を加えて攪拌したものを指します。

菓子と懐石まわりの道具

食籠(じきろう)

蓋の付いた菓子器が食籠です。主菓子を入れ、蓋の上に黒文字を添えます。陶器・磁器・漆器のものが多くあります。

縁高(ふちだか)

主菓子器の一種で、五つ重ねの黒の真塗のものが最も正式な器とされています。一重に一つずつ菓子を入れ、客の人数が多い場合は菓子の数を適宜増やします。

重ねた一番上に蓋をし、蓋の上に人数分の黒文字をのせて出します。

黒文字(くろもじ)

菓子器に添える楊枝が黒文字です。皮目に黒い斑点のある黒文字の木を削って作り、長さは6寸(約18cm)のものを用いると説明されています。

干菓子器(ひがしき)

干菓子を盛る器が干菓子器です。漆器類や木地のものが多く使われますが、唐銅・南鐐などの金属器や陶磁器が用いられることもあります。

なお干菓子(ひがし)は、主に薄茶のときに出される乾いた菓子を指します。主菓子(おもがし)は、濃茶に用いられる練切や饅頭などの菓子です。

煙草盆(たばこぼん)

火入・煙草入・灰吹の喫煙道具一式を収める器が煙草盆です。待合や中立の腰掛に用意され、薄茶の席では正客が座る前の畳の縁外に置かれます。濃茶の席には使われません。

懐紙(かいし)

茶席で客が常に懐中する紙が懐紙です。濃茶の茶碗の飲み口をふいたり、菓子を取って食べるときなどに用います。大小2種があり、大は男子のみ、小は男女ともに用いると説明されています。

参考:茶の湯用語集「食籠」「縁高」「黒文字」「干菓子器」「煙草盆」「懐紙」|表千家不審菴

難読な茶道具の読み方一覧

点前と水火まわりの道具

表記 読み 用途
なつめ 薄茶を入れる器
茶杓 ちゃしゃく 抹茶をすくう匙
水指 みずさし 釜に入れる水などを入れる器
建水 けんすい すすいだ湯水を捨てる器
柄杓 ひしゃく 釜の湯や水指の水を汲む道具
蓋置 ふたおき 釜の蓋や柄杓の合をのせる道具
かま 湯を沸かす鋳鉄製の器
風炉 ふろ 5月から11月に釜をかける器
炭斗 すみとり 炭道具一式を持ち出す器
香合 こうごう 香を入れる器
自在 じざい 炉に釜を釣る道具
皆具 かいぐ 同一の作りでそろえた水指一式

器物・袋物・菓子まわりの道具

表記 読み 用途
茶入 ちゃいれ 濃茶を入れる陶製の容器
仕覆 しふく 茶入や茶碗を収める袋
台子 だいす 点前で用いる正式な棚
棚物 たなもの 広間の道具畳に据える棚
食籠 じきろう 蓋付きの菓子器
縁高 ふちだか 五つ重ねの主菓子器
黒文字 くろもじ 菓子器に添える楊枝
干菓子器 ひがしき 干菓子を盛る器
煙草盆 たばこぼん 喫煙道具一式を収める器
天目茶碗 てんもくぢゃわん 中国から伝わった茶碗
高麗茶碗 こうらいぢゃわん 朝鮮半島で作られた茶碗
懐紙 かいし 客が懐中する紙

道具に付いてくる言葉の読み方

箱書(はこがき)と書付(かきつけ)

箱書は、茶の湯の道具を収める箱の甲や蓋裏に、作者・銘・伝来・由緒などを書いて内容を証明するものです。「箱書付」ともいいます。

表千家不審菴は、家元をはじめその時代の著名な茶人が箱の蓋裏に書く習いがあると説明しています。これによって内容となる茶碗や茶器の名や由来が明示され、道具そのものが保証されるとしています。

書付は、道具の作者名・伝来・銘などを紙に書いて添えたり、箱に書き付けたりすることを指します。箱に書かれたものが箱書です。焼物の場合は、陶印と共箱を照らし合わせる手順が確認の基本になります。

参考:茶の湯の道具「道具の箱書」|表千家不審菴

銘(めい)

道具に付けられた名が銘です。形や色合いの特徴を何かに見立てたり、作者・所有者・産地・逸話・和歌や俳句にちなんだりと、由来はさまざまです。

茶碗・茶入・茶杓・竹の花入などは、作者や所有者によって銘が付けられる場合が多いと説明されています。

極(きわめ)

極書(きわめがき)のことで、茶道具の鑑定を証明するものです。折紙・極札・箱書などの形があり、落款・箱書・表装から鑑定を進める考え方は掛け軸とも共通します。江戸時代初期には古筆の鑑定を業とする古筆家が成立し、幕末まで続いたと記されています。

好み物(このみもの)と見立て(みたて)

好み物は、家元をはじめ茶の宗匠が茶の湯にふさわしいものとして選び出したものです。「利休好み」というように茶人の名を冠して呼ばれます。

見立ては、本来は茶の湯の道具でなかったものを茶の湯の道具として用いることを指します。武野紹鴎が井戸の釣瓶を水指として用いた例が挙げられています。

唐物(からもの)と国焼(くにやき)

唐物は中国から舶載された美術工芸品を指します。唐絵・墨跡・天目茶碗・天目台・茶壺・茶入・香合などが、鎌倉時代末から室町時代にかけて特に珍重されました。

国焼は、中国や朝鮮半島で作られた陶磁に対し、日本のやきもの全般を指す言葉です。

会記(かいき)

茶会の道具などを記録したものが茶会記(ちゃかいき)で、「会記」ともいいます。客が帰宅後に記す「他会記」と、亭主が自分の茶会を記録する「自会記」があります。

古い道具に会記が添えられている場合は、伝来をたどる手がかりになります。

参考:茶の湯用語集「銘」「極」「好み物」「見立て」「唐物」「茶会記」|表千家不審菴

よくある質問

Q1. 「茶道」は「さどう」と「ちゃどう」のどちらが正しいですか

表千家不審菴の用語集は「茶堂(道)」を「さどう」の読みで収録しています。一方で流派や場面によって「ちゃどう」と読む場合もあります。どちらかが誤りというより慣用の違いですので、稽古の場ではご自身の流派の読み方に合わせてください。

Q2. 箱に読めない字が書かれています。どうすれば読めますか

崩し字は独学で読み切るのが難しい領域です。無理に判読して結論を出すより、蓋の甲・蓋裏・側面をそれぞれ撮影して記録に残すことをおすすめします。二重箱・三重箱の場合は、すべての箱の書付を撮っておいてください。

Q3. 茶道具の名前を調べられる公的な資料はありますか

表千家不審菴が公開している茶の湯用語集では、分類を指定して用語を検索できます。分類には道具・美術、点前・作法、茶室・露地などがあります。また、裏千家系の一般財団法人今日庵は茶道資料館と今日庵文庫を運営しており、蔵書検索も公開されています。

参考:茶道資料館|一般財団法人今日庵 茶道総合資料館

Q4. 皆具と棚物は何が違うのですか

皆具は水指・杓立・建水・蓋置を同じ材質や紋様でそろえた組み物を指します。棚物は道具をのせる棚そのものです。皆具は台子や長板に飾り付ける場合が多いため、両者はしばしば一緒に使われます。

Q5. 一式そろっていない茶道具でも意味はありますか

道具は単体でも用途と由来を持ちます。表千家不審菴も、道具に付けられた銘は道具の取合せの上で大切な機能を持つと説明しています。そろっていないことを理由に処分を急がず、まずは箱書や添付の紙類を確認してください。

まとめ

茶道具の読み方は、棗・柄杓・建水・水指・茶杓のように用途と結び付けて覚えると定着します。名称が読めなくても、用途の系統が分かれば道具の位置付けは把握できます。箱書や銘、極書といった付属の文字情報は、道具の由来をたどる大切な手がかりです。当社では箱や添付資料もあわせて拝見し、一点ずつ丁寧にご説明いたします。

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