リヤドロはなぜ高いのか|製法と歴史からたどる価格の理由と、売るときの見方
百貨店でリヤドロの人形を見て、思っていたより高い値札に驚いた方もいるのではないでしょうか。同じ磁器の置物でも、リヤドロは数万円から数十万円という価格帯のものが少なくありません。この記事では、リヤドロが高い理由を、スペイン・バレンシアの工房で行われている製法や工程の側面から整理します。あわせて、中古市場や買取での評価がどう決まるのかも見ていきます。
リヤドロとはどんなブランドか
リヤドロ(LLADRÓ)は、スペインの磁器ブランドです。公式サイトによると、創業は1953年。バレンシア近郊のアルマセラ村で、フアン、ホセ、ビセンテというリヤドロ三兄弟が自宅の窯から始めた事業がもとになっています。当初はプレートや花瓶、置物を、ヨーロッパの名門メーカーに刺激を受けながら制作していたとされています。
1960年代に入ると、細く伸びやかな造形とパステル調の色合いという独自のスタイルが確立していきます。1965年にアメリカ市場へ進出し、1969年には本社をバレンシアのタベルネス・ブランケスへ移しました。1985年には愛好家組織「リヤドロ・コレクターズ・ソサエティ」が発足し、15年ほどで10万人を超える会員を集めたと紹介されています。1988年にはニューヨークに博物館を開設し、1991年にはエルミタージュ美術館で展覧会が開かれました。日本では1995年に東京・銀座へブティックを構えています。
現在も、リヤドロの磁器が生まれる工房は世界でバレンシアの1か所だけです。生産拠点を分散させず、1つの場所で作り続けている点は、このブランドを理解するうえで押さえておきたいところです。
リヤドロが高い理由①:すべてが職人の手作業でつくられている
価格の理由としてもっとも大きいのが、製造工程がほぼ手作業で成り立っていることです。
リヤドロ公式サイトには、1953年の創業以来、作品はすべて1つずつ手作業で仕上げられていると明記されています。工程に関わるのは彫刻家、装飾彫刻家、技術者、ペインター、そしてフラワーアーティストといった職種の職人たちです。1つの作品に多くの職人が関わり、それぞれの技術が積み重なることで完成します。
新作の開発には数か月から、大型の作品では数年を要するものもあるとされています。工業製品のように型に流し込んで大量生産する方式ではないため、1点あたりにかかる人の時間がそのまま原価に反映されます。ここが、量産品の磁器と価格が大きく開く理由です。
公式サイトでは、職人の名前が作品に刻まれることで「世界にまたとない作品になる」という趣旨の説明もされています。同じモデルであっても、手作業である以上、細部はまったく同じにはなりません。この一点性が価格の前提にあります。
リヤドロが高い理由②:素材と焼成の方法
リヤドロが使っているのは、天然素材のポーセリン(磁器)です。公式サイトによれば、石英・長石・カオリンという3つの鉱物に水を混ぜ合わせてつくられ、これらの原料は主にスペイン国内で調達されています。
技術面で特徴的なのが、焼成の方法です。リヤドロは1960年代に、それまで一般的だった三度焼き(トリプルファイアリング)に代わる「シングルファイアリング(単一焼成)」方式を導入しました。1回の焼成で仕上げるこの手法が、リヤドロらしい柔らかなパステルトーンを生んだと公式の沿革で説明されています。
一方で、1回の焼成で仕上げるということは、途中でやり直しがきかないということでもあります。焼成中に破損したり、色が想定どおりに出なかったりすれば、その作品は世に出ません。歩留まりの低さは、そのまま販売価格に乗ってきます。
工程を分解すると価格の理由が見えてくる
リヤドロの制作は、大きく次のような流れで進みます。各工程で人の手が入る点を押さえておくと、価格の理由が理解しやすくなります。
| 工程 | 内容 | 手作業が関わる部分 |
|---|---|---|
| デザイン・原型制作 | スケッチをもとに彫刻家が原型をつくる | 造形のすべて |
| 型取り・分割 | 原型から石膏型を起こし、パーツごとに分割する | パーツ分割の判断 |
| 成形・組み立て | 各パーツを成形し、接合して1体に組み上げる | 接合と形の整え |
| 花などの装飾制作 | 花びらを1枚ずつ成形して取り付ける | ほぼ全工程 |
| 彩色 | 職人が絵付けを行う | 筆による着色 |
| 焼成 | 窯で焼き上げる | 温度・時間の管理 |
| 検品 | 基準に満たないものは製品にしない | 目視での判断 |
とくに手間がかかるのが、花の装飾です。リヤドロの代表的な意匠である繊細な磁器の花は、花びらを1枚ずつ職人が成形し、組み上げていきます。小さなブーケ1つでも多数のパーツが必要になるとされ、この部分だけで相当の時間が費やされます。花飾りの多い作品ほど価格が上がりやすいのは、この工程量の差によるものといえます。
公式サイトでは、同社の姿勢について「より多くの作品を作ることではなく、より良いものを作ること」にあるという表現が使われています。生産量を増やす方向に舵を切っていないこと自体が、価格帯を支えている面もあります。
リヤドロが高い理由③:希少性とコレクター市場の存在
リヤドロには、限定生産のシリーズがあります。公式の沿革によると、限定シリーズが登場したのは1970年代です。発行数があらかじめ決められている作品は、後から追加生産されません。
さらに、リヤドロは定番シリーズであっても製造を終了することがあります。廃盤になった作品は新品として流通しなくなるため、中古市場での取引に移ります。欲しい人が一定数いる状態で供給が止まれば、価格は下がりにくくなります。
こうした需要を支えているのが、コレクターの層です。1985年に発足したコレクターズ・ソサエティは、短期間で10万人規模まで拡大したとされています。世界各地に愛好家が存在することが、二次流通の価格を下支えしてきました。
また、2000年代には「ハイポーセリン」と呼ばれる高級ラインが確立されています。大型で複雑な構成の作品が中心で、制作に数年かかるものもあるとされ、価格帯も通常のシリーズとは別のものになります。「リヤドロは高い」という印象の一部は、このクラスの作品が持たれていることもあるかもしれません。
リヤドロが高い理由④:ブランドとしての評価の積み重ね
リヤドロは、美術館での展示や、著名デザイナーとの協業を重ねてきたブランドです。1991年のエルミタージュ美術館での展覧会、1988年のニューヨーク博物館開設などは、その一例といえます。2010年代以降は、マルセル・ワンダースをはじめとする外部デザイナーとのコラボレーションを展開し、照明やジュエリー、ホームアクセサリーへも領域を広げています。
こうした活動の積み重ねが、「磁器の置物」ではなく「アートピース」として受け止められる土台になっています。ブランドの位置づけそのものが価格に反映されている、という見方もできるのではないでしょうか。
なお、2017年にはPHIインダストリアル・グループの傘下に入っています。経営体制は変わっていますが、バレンシアでの手作業による制作という基本は維持されています。
中古・買取市場ではどう評価されるのか
新品価格が高いブランドではありますが、買取価格が新品価格に比例するとは限りません。ここは分けて考えておく必要があります。
買取業者が公開している実績を見ると、一般的なサイズの人形は数千円から1万円台の範囲に収まる例が多く報告されています。バイセルが公開している買取例では、馬の作品が10,000円、子犬と少女が7,000円、子犬と男の子が7,000円、傘を持つ犬連れの女性が6,000円といった価格が挙げられています。あくまで個別の事例であり、同じ作品でも状態や時期によって結果は変わります。
参考:「リヤドロの買取相場は?高価買取のポイントや買取事例を紹介」|バイセル公式
査定額を左右しやすいのは、次のような点です。
| 見られる点 | 評価に影響する内容 |
|---|---|
| 作品のサイズ・複雑さ | 大型で花飾りや人数が多い作品ほど高くなりやすい |
| シリーズ・人気 | 限定品・廃盤品・人気モチーフは需要が読みやすい |
| 保存状態 | 欠け、ヒビ、指先や花びらの破損は減額要因 |
| 付属品 | 純正箱、証明書、台座がそろっていると評価されやすい |
| 刻印(バックスタンプ) | 真贋と制作時期の確認に使われる |
リヤドロの底面には、ベルフラワーをかたどったバックスタンプが入っています。この刻印は真贋と年代を判断する手がかりとして扱われるため、査定に出す前に確認しておくとよいでしょう。
査定に出す前にしておきたいこと
高いブランドだからといって、扱いを誤ると評価が下がることがあります。準備の段階でできることを整理しておきます。
まず、無理に汚れを落とそうとしないことです。細い指先や花びらは非常に折れやすく、洗浄中の破損は珍しくありません。ほこりは柔らかい筆や乾いた布で軽く払う程度にとどめるのが無難です。
次に、付属品を探しておきます。購入時の箱、証明書、リヤドロ・ソサエティの会員関連の資料などが残っていれば、まとめて提示できるようにしておきます。箱があるかどうかは、輸送時の安全性という面でも意味があります。
最後に、作品名やモデル番号を控えておくことです。底面の刻印や、箱に記載されている番号が分かれば、どのシリーズのどの作品かを特定しやすくなります。査定の話が具体的になり、こちらも結果を判断しやすくなります。
複数の業者に見てもらうことも検討してよいと思います。磁器やアンティークの取り扱い実績がある業者かどうかで、評価が変わることがあります。
よくある質問
リヤドロの新品価格はどのくらいですか
作品によって幅があり、小さめのものから、ハイポーセリンのように制作に数年を要する大型作品までさまざまです。公式サイトで現行品の価格を確認するのが確実です。廃盤品については公式の定価が存在しないため、中古市場での取引価格を参照することになります。
手作業で作られているのに、なぜ同じ作品が複数あるのですか
原型から型を起こして成形するため、同じモデルの作品は複数存在します。ただし、成形の接合や彩色、花の取り付けは職人が1点ずつ行うため、細部は個体ごとに異なります。公式サイトも、まったく同じものはないという趣旨の説明をしています。
欠けやヒビがあると買取してもらえませんか
状態は減額の要因になりますが、作品によっては査定対象になることもあります。とくに希少性の高い作品や大型作品は、多少の傷があっても評価される場合があります。自分で接着剤などで補修すると、かえって評価が下がることがあるため、そのままの状態で相談するのがおすすめです。
箱や証明書がないと売れませんか
売れないわけではありません。ただし、付属品がそろっている場合と比べると、評価が下がる傾向があります。箱がない場合でも、緩衝材で丁寧に包んで持ち込めば問題ありません。
買取価格は新品価格の何割くらいになりますか
一律の割合はありません。リヤドロに限らず、中古の磁器や置物は新品価格とは別の基準で評価されます。廃盤かどうか、需要があるモチーフか、状態はどうかといった条件で結果が変わるため、実際に見てもらうまでは幅を持って考えておくとよいでしょう。
まとめ
リヤドロが高い理由を整理すると、次のようになります。
- 1953年の創業以来、バレンシアの1工房で、すべて手作業で制作されている
- 彫刻家からフラワーアーティストまで複数の職人が1点に関わり、開発には数か月から数年かかる
- 石英・長石・カオリンを原料とする磁器を、単一焼成という失敗の許されない方法で焼き上げている
- 限定生産や廃盤によって供給が止まり、コレクター需要が価格を支えている
- 美術館展示やデザイナー協業を重ね、アートピースとしての位置づけを築いてきた
一方で、買取価格は新品価格とは別の基準で決まります。相場として語られる金額はあくまで目安であり、作品の種類・状態・付属品によって結果は変わります。手元のリヤドロを売るかどうか検討している場合は、刻印や付属品を確認したうえで、複数の業者に見てもらうところから始めるとよいのではないでしょうか。