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ノースフェイスはなぜ高いのか|素材・技術と日本での成り立ち、中古で値が落ちにくい理由

店頭でノースフェイスのジャケットの値札を見て、思わず二度見した。そんな経験のある方は少なくないと思います。同じような形のアウターが他所ではもっと安く売られているのに、なぜこのブランドだけ価格が違うのか。この記事では、その理由を「素材と技術」「日本での事業の成り立ち」「修理して使い続けられること」の3つに分けて整理します。あわせて、中古市場で値段が落ちにくいと言われる背景と、手放すときに見られる点も見ていきます。

ノースフェイスというブランドの成り立ち

THE NORTH FACE は1966年、サンフランシスコの小さな店舗から始まったブランドです。現在は米国の VF Corporation の傘下に入っており、同社の公式サイトでもその出自が紹介されています。

参考:「The North Face」|VF Corporation

ブランド名の「ノースフェイス」は、山の北壁を指す言葉です。北半球では北向きの斜面が最も日が当たらず、雪や氷が残りやすいため、登攀の難度が高い面とされています。もともとが登山・クライミングの道具を作るところから出発したブランドである、という点は、価格を考えるうえで前提になります。

日常着として着られている場面が多いため見落とされがちですが、製品の設計思想の出発点は「街で着るアウター」ではありません。過酷な環境で使われることを想定した装備を、街でも着られるデザインに落とし込んでいる、という順序です。この順序が、後述する素材や作りのコストに直結しています。

価格を押し上げている素材と技術

ノースフェイスの価格を語るとき、最もよく挙げられるのが GORE-TEX に代表される高機能素材です。ただ「高機能素材だから高い」で終わらせると実感が湧かないため、素材そのものの中身を見ておきます。

GORE-TEX の中核にあるのは、メンブレンと呼ばれる薄い膜です。素材は延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)で、公式サイトによれば厚さは約0.01mm。この膜の1インチ四方あたりに、約90億個の孔が空いているとされています。

この孔の大きさが要点です。公式の説明では、孔は水滴の20,000分の1という小ささである一方、水蒸気の分子と比べると700倍以上の大きさがあるとされています。つまり、外から来る雨粒は通さないが、内側で発生した汗の水蒸気は通り抜けられる、という寸法差を利用した仕組みです。

参考:「GORE-TEX メンブレン」|GORE-TEX(W. L. Gore & Associates)

項目 数値
メンブレンの素材 延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)
メンブレンの厚さ 約0.01mm
孔の数 1インチ四方あたり約90億個
孔と水滴の大きさの比 水滴の約20,000分の1
孔と水蒸気分子の大きさの比 水蒸気分子の700倍以上

防水と透湿という、本来は両立しにくい性質を一枚の膜で成立させているわけですが、こうした素材は当然ながら単価が高くなります。加えて、膜を挟んだ生地の貼り合わせ、縫い目からの浸水を防ぐシームテープの圧着、止水ファスナーの採用など、素材を活かすための加工が積み重なります。生地代だけでなく、縫製工程そのものが増える点も価格に効いています。

さらに、GORE-TEX には「GUARANTEED TO KEEP YOU DRY」という保証が付帯します。このタグが付いた新品の製品について、防水性能に満足できない場合は修理・交換・返金のいずれかで対応する、という内容です。ただし対象は新品購入者に限られ、中古品やレンタル品は対象外とされており、購入を証明できるものが必要とされています。

参考:「GORE-TEX 製品保証」|GORE-TEX(W. L. Gore & Associates)

こうした保証を成立させるには、生地の供給元が製品の作り方そのものに基準を設ける必要があります。誰がどう縫っても保証はできないためです。素材メーカー側の基準を満たす工場で、決められた手順で作る。この制約もまた、コストが下がりにくい理由のひとつだといえます。

なお、すべてのノースフェイス製品に GORE-TEX が使われているわけではありません。自社開発の防水素材や、保温材、軽量なナイロン生地など、用途に応じて素材は分かれています。価格差もそこに由来する部分が大きいため、「ノースフェイスだから一律に高い」というより「どの素材を使ったモデルか」で見るほうが実態に近いといえます。

日本のノースフェイスは「輸入品」ではない

ここが、価格の話をするうえで意外と知られていない点です。

日本での THE NORTH FACE を手がけているのは、株式会社ゴールドウインです。1950年に富山県小矢部市で創業した会社で、公式の沿革によれば1978年にザ・ノース・フェイス製品の輸入販売を開始しています。その後1985年に原宿駅竹下口へ直営店「ウエザーステーション」を出店し、1995年には日本と韓国におけるザ・ノース・フェイスの商標権を取得しています。

参考:「ゴールドウインの歩み」|株式会社ゴールドウイン

つまり、日本国内のノースフェイスは、海外から完成品を輸入して並べているだけの事業ではありません。商標権を保有したうえで、日本市場に向けた企画・生産・販売を自社で行う体制になっています。2019年にはサンフランシスコに直営店を出店しており、日本発の展開が本国側にも向かう形になっています。

この構造を押さえておくと、しばしば見かける「日本では代理店がライセンス料を上乗せしているから高い」という説明が、公式の沿革とは噛み合わないことがわかります。少なくとも日本と韓国については、商標権そのものをゴールドウインが持っているというのが公式に記載されている事実です。価格差の理由をライセンス料に求める説明は、根拠を確認できる範囲を超えていると考えたほうがよいでしょう。

一方で、企画から販売までを自社で担うということは、開発費・人件費・店舗運営費を自社で負担するということでもあります。ゴールドウインが公表している2026年3月期の決算では、売上高137,516百万円、営業利益25,859百万円、営業利益率18.8%となっています。領域別の売上構成比はライフスタイルが59.8%、パフォーマンスが29.6%、ファッションが9.5%です。

参考:「最新の決算のポイント」|株式会社ゴールドウイン

数字の読み方は人それぞれですが、少なくとも「原価に対して不釣り合いな価格を付けている」と断じられるような水準ではありません。ブランドを維持するための投資が価格に含まれている、という見方のほうが実態に近いといえます。

修理して使い続けられることの意味

価格を判断するときに見落とされやすいのが、買ったあとの話です。ノースフェイスは製品のリペア(修理)体制を整えており、その内容が公式に示されています。

公式の案内によれば、生地や構造上の欠陥が原因である場合、つまり規格設計や生産に由来する損傷については、修理代金は発生しないとされています。一方、通常の使用によって機能が損なわれたり破損したりした場合は、基準価格での有償修理となります。

保証の対象外として挙げられているのは、ソックスやアンダーウエア等の消耗品、経年変化による退色や劣化などです。また修理はあくまで機能の回復を目的としており、デザイン変更を伴わない外観の原状回復までは保証されないとされています。

参考:「リペア・製品保証」|THE NORTH FACE(ゴールドウイン)

修理にかかる期間の目安も公表されており、通常は約4週間、海外での修理が必要な場合は約10週間程度とされています。

参考:「THE NORTH FACE リペアについて」|ゴールドウイン

破れたら買い替えるしかない製品と、直して使い続けられる製品とでは、同じ価格でも意味が変わります。1シーズンで着られなくなる前提の衣類と、10年単位で使う前提の装備を、値札だけで比べても噛み合いません。この点は、価格の高さに納得できるかどうかを分ける大きな要素だと思われます。

中古市場で値が落ちにくいと言われる理由

ノースフェイスは、中古で流通したときにも値が付きやすいブランドとして扱われることが多くあります。断定はできませんが、そう言われる背景としては次のような要素が考えられます。

  • 定番モデルが長く続いている:型番やモデル名が世代をまたいで継続しているものが多く、中古の買い手にとって「どういう製品か」が判断しやすい状態にあります。判断できるものは値が付きやすくなります。
  • 修理という選択肢がある:多少の傷みがあっても直して使える見込みがあるぶん、状態の悪い個体でも一定の需要が残りやすくなります。
  • 用途の幅が広い:登山・キャンプ用途と街着の両方に需要があるため、買い手の母数が大きくなります。
  • 素材の性能が数字で語れる:GORE-TEX 採用モデルかどうかなど、性能の裏付けが明確なものは中古でも説明しやすくなります。

ただし、「ノースフェイスなら何でも高く売れる」というわけではありません。防水素材を使った製品は、経年で生地の内側の層が劣化することがあります。ベタつきや剥離が出ている個体は、機能が失われているとみなされるため評価は下がります。また、退色や毛玉、ファスナーの不具合といった状態の要素は、ブランドにかかわらず影響します。

相場についても、モデル・年式・状態・時期によって幅があり、一律の金額を示すことはできません。示される金額はあくまで目安であり、実際の査定額は現物を見たうえで決まるものだと考えておくのが確実です。

手放すときに見られる点

不要になったノースフェイス製品を査定に出す場合、見られやすいのは次のような点です。

確認項目 内容
モデル・型番 内側のタグに記載。定番モデルかどうかの判断材料になる
素材 GORE-TEX 等の機能素材を使っているか。タグに表示がある
生地の状態 防水層の劣化(ベタつき、剥離)、擦れ、破れ
色あせ 直射日光による退色。特に濃色は目立ちやすい
ファスナー・スナップ 動作するか、止水ファスナーの状態
汚れ・におい 皮脂汚れ、保管によるカビ臭
付属品 フード、ライナー、収納袋、替えボタンなど
サイズ表記 日本規格か海外規格か

タグは切り取らずに残しておくほうが確実です。素材の表示やモデル名が確認できなくなると、判断に必要な情報が失われてしまいます。

保管については、湿気を避けることと、圧縮したままにしないことが要点です。ダウン製品を圧縮袋に入れたまま長期間置いておくと、羽毛が復元しにくくなることがあります。防水素材の製品も、湿ったまま畳んで放置すると内側の層が傷みやすくなります。着用後に乾かしてからしまう、という程度で十分です。

なお、買取業者は古物営業法にもとづく古物商許可を受けて営業しており、取引の相手方を確認する義務が課されています。売却時に身分証の提示を求められるのはこのためです。

参考:「古物営業法の解説等」|警視庁

よくある質問

ノースフェイスはどこの国のブランドですか

米国のブランドです。1966年にサンフランシスコで始まり、現在は VF Corporation の傘下にあります。ただし日本国内での事業は、日本と韓国の商標権を保有する株式会社ゴールドウインが手がけています。

日本で売られている製品と海外の製品は違うものですか

日本国内では、商標権を保有するゴールドウインが企画・生産・販売を行う体制になっています。そのため、日本で展開されているラインナップと海外のラインナップは必ずしも一致しません。ただし、具体的にどのモデルがどう異なるかは製品ごとに異なるため、購入前に公式サイトで仕様を確認するのが確実です。

高い製品と安い製品は何が違うのですか

主に使われている素材です。GORE-TEX などの防水透湿素材を使ったモデルは、素材単価に加えてシームテープの圧着など工程が増えるため価格が上がります。一方、街着向けの軽量なナイロン製品などは、そこまでの加工を必要としません。用途に対して過剰な性能を選ばないほうが、結果として納得できる買い物になりやすいといえます。

古いノースフェイスでも買い取ってもらえますか

年式が古くても、モデルや状態によっては査定の対象になります。ただし防水素材の内側の層が劣化してベタついている、剥がれているといった状態では、機能が失われているとみなされ評価は下がります。判断がつかない場合は、そのままの状態で見てもらうほうが確実です。無理に自分で処置をすると、かえって状態を悪くすることがあります。

洗濯やクリーニングをしてから売るべきですか

軽い汚れを落としておく程度であれば問題ありません。ただし、防水素材の製品は洗い方に指定があることが多く、自己流の洗濯や漂白は生地を傷める原因になります。製品に付いている洗濯表示に従える範囲にとどめ、判断に迷うようであれば手を加えずに査定に出すほうが無難です。

まとめ

ノースフェイスの価格が高い理由を整理すると、次のようになります。

  • 素材そのものが高い:GORE-TEX のメンブレンは厚さ約0.01mm の ePTFE で、1インチ四方に約90億個の孔を持ちます。孔は水滴の20,000分の1、水蒸気分子の700倍以上という寸法差で防水と透湿を両立させており、こうした素材は単価が高くなります
  • 加工の工程が多い:シームテープの圧着や止水ファスナーなど、素材を活かすための工程が積み重なります
  • 日本では自社で企画・生産・販売している:ゴールドウインが1995年に日本と韓国の商標権を取得しており、輸入販売のみの構造ではありません。開発費や店舗運営費を自社で負担しています
  • 修理して使い続ける前提で作られている:生地や構造上の欠陥は無償、通常使用による破損は有償で修理に対応する体制が公表されています

値札だけを見れば確かに高いのですが、1シーズンで買い替える衣類と、直しながら長く使う装備とでは、比べている前提が違います。用途に対して必要な性能を選べば、価格の意味は見えやすくなるのではないでしょうか。

中古市場で値が落ちにくいと言われるのも、定番モデルが長く続いていること、修理という選択肢があること、用途の幅が広いことが背景にあると考えられます。ただし相場はモデル・状態・時期によって幅があり、一律の金額を示せるものではありません。示される金額はあくまで目安として捉え、実際の評価は現物を見てもらったうえで判断するのがよいと思われます。

使わなくなった製品が手元にあるようでしたら、タグを残したまま、生地の状態がこれ以上悪くならないうちに相談してみるのがひとつの方法です。