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サックスのサビの落とし方|仕上げ別の手入れと業者に任せる判断

久しぶりにケースを開けたら、サックスが黒ずんでいたり、ベルの内側がざらついていたりして驚くことがあります。市販の研磨剤で削ってよいものか、判断に迷う方も少なくありません。そこでこの記事では、サックスのサビの落とし方を、メーカー公式が案内している範囲に絞って整理しました。仕上げごとの違いと、手を出さない方がよい範囲も確認できます。

サックスの「サビ」は何が起きているのでしょうか

一口にサビと呼ばれていても、実際に起きている現象は一つではありません。まずは切り分けから始めます。

ヤマハはトランペットのお手入れの解説で、銀メッキの楽器に付く黒ずみについて説明があります。これは銀が空気中や人間の汗に含まれる硫黄分などに反応するためであり、機能としては心配する必要はないとされています。

参考:トランペットのお手入れ:演奏後のお手入れ|ヤマハ株式会社

フルートのお手入れのページでも同じ説明があります。表面の変色はフルート表面の銀が空気中などの硫黄成分と結びついてできる硫化銀だと明記されています。つまり銀の黒ずみは、金属が痩せていく腐食とは別の現象です。

参考:フルートのお手入れ:演奏後のお手入れ|ヤマハ株式会社

一方でヤマハは、サクソフォンのベルの内側に出る「さび」にも触れました。同社はさびについて、気持ち良いものではなく、ものによってはひどい匂いがすると述べています。演奏への影響については、よほどのことがない限り問題はないという説明です。

参考:サクソフォンのお手入れ:必要に応じて行うお手入れ|ヤマハ株式会社

見た目が気になるのか、演奏に支障が出ているのか。この切り分けをしないまま研磨剤を持ち出すと、必要のない作業で楽器を痛める結果になりかねません。

落とし方を決める前に仕上げを確認します

サックスの表面には仕上げが施されています。何が塗られているか、何がメッキされているかによって、使ってよい道具が変わります。

ヤナギサワは製造工程のページで、原材料はブラス・ブロンズ・シルバーの3種類に分類されると説明しています。表面処理の工程では、ポスト付けを終えた本体とキーをバフで磨きます。続いて超音波洗浄で油分や残った研磨剤を落とし、ラッカーを吹き付けて炉で焼付けすると記載されています。

参考:製造工程|YANAGISAWA Saxophones

つまりラッカー仕上げの楽器の表面には、工場で焼き付けられた塗膜があります。この塗膜を削り落としてしまうと、家庭で元に戻すことはできません。

ヤマハはポリッシュを仕上げ別に分けて販売しています。製品情報に記載されている用途は次のとおりです。

製品 対象となる仕上げ 公式の説明
シルバーポリッシュ SP2 銀・銀メッキ 銀や銀メッキ仕上げの楽器専用ポリッシュ
ラッカーポリッシュ LP2 ラッカー ラッカー仕上げの楽器専用ポリッシュ
メタルポリッシュ MP2 ニッケルメッキ・洋白 ニッケルメッキ品や洋白材の部分に使用する研磨力の強いポリッシュ
シルバークロス SVCM2 銀・銀メッキ 表面の変色や汚れを取り、きめ細かな光沢をもたらす
ラッカークロス LQC ラッカー ラッカー塗装の金管楽器、サクソフォンのための専用クロス
シルバーポリシングシート SVPS 銀・銀メッキ 銀や銀メッキ仕上げの楽器専用拭き上げシート
ブラスソープ BS2 管体・マウスピース内面 管体やマウスピースの内面のクリーニングに最適
シルバープロテクター SPR1 銀の変色を防ぐ液材

参考:お手入れ用品|ヤマハ株式会社

表を見ると、公式が「専用」という言葉を繰り返している点に気づきます。メタルポリッシュについては、研磨力が強いこととニッケルメッキ品や洋白材に使うことが、あわせて書かれています。研磨する道具である以上、対象を選ばずに使えるものではありません。

銀メッキの黒ずみへの対処

銀メッキ仕上げのサックスや、銀メッキのキイが黒ずんできた場合の手順です。

ヤマハはトランペットの解説で、見た目に綺麗になったほうが良いのであればシルバーポリッシュで磨くとよいとしています。クロスにシルバーポリッシュを染み込ませたシルバークロスを使う方法もあるという案内です。

そのうえで、磨き方についても具体的な指示があります。シルバーポリッシュを使うときは、少量だけ布につけて薄く広げるように、軽く磨いてくださいと書かれています。

参考:トランペットのお手入れ:演奏後のお手入れ|ヤマハ株式会社

ここで重要なのは「少量」と「軽く」という条件です。力を込めて何度も往復させる磨き方は、公式の想定とは違います。

フルートのお手入れのページでも、ポリシングクロスだけでは落ちないほど表面の黒ずみがひどくなった場合に、シルバークロスやシルバーポリッシュを使うのも効果的だと説明されています。まずは日常の乾拭きで、それでも落ちない場合に専用品へ進む順序です。

参考:フルートのお手入れ:演奏後のお手入れ|ヤマハ株式会社

なおヤマハは、銀の変色を防ぐ液材としてシルバープロテクターも扱っています。落とすことと同じくらい、変色させないことにも手段が用意されています。

ラッカー仕上げの楽器を扱うとき

ラッカー仕上げのサックスには、銀用の道具を使いません。ヤマハはラッカー仕上げの楽器専用ポリッシュとして、ラッカーポリッシュを用意しています。

ラッカークロスについては、マイクロファイバー生地にラッカーポリッシュを浸したものだと説明されています。楽器表面を拭くと、指紋などの皮脂汚れを拭き取ってツヤを出したり、シリコンの被膜を形成してさらに汚れを付きにくくしたりする効果が得られるという説明です。

参考:お手入れ用品|ヤマハ株式会社

ヤマハの「動く!お手入れの達人」サクソフォン編でも、楽器をきれいに保つための項目としてラッカーポリッシュやラッカークロスが挙げられています。同じ動画では、ネック内部の洗浄にブラスソープを使う場面も章立てに含まれます。

参考:動く!お手入れの達人|ヤマハ株式会社

ラッカーの塗膜は、工場の炉で焼き付けられたものです。研磨剤で削れば、その分だけ薄くなります。落ちない汚れがあるからといって、番手の粗いものへ持ち替えないでください。

ベルの内側のサビへの対処

サックスで相談が多いのが、ベルの内側に出る変色やざらつきです。ヤマハはこの点について、具体的な製品名を挙げて回答しています。

さび取りや内面の掃除であれば、メタルポリッシュやブラスソープなどがよいという回答です。ただし、ここには条件が付いています。ベルにはキイがついているため、タンポに付着させないようにという注意が付いています。

そのうえで同社は、いずれも楽器店で扱っていると思われるので、お店の方に相談してみてくださいと結んでいます。

参考:サクソフォンのお手入れ:必要に応じて行うお手入れ|ヤマハ株式会社

タンポは革などでできた消耗部品であり、薬剤や研磨剤が付けば傷みます。ベルの内側は、ちょうどタンポが並んでいる領域です。狭い場所に液剤を流し込むような扱いは避けてください。

自信が持てない場合は、最初から楽器店に相談する方が結果的に早く済みます。ヤナギサワは「サックス工房 ヤナギサワ・クロッシュ」で楽器の状態を診断し、調整・修理の見積りを出しており、診断見積りは無料だと案内しています。予約が必要な点にはご注意ください。

参考:アフターサービス|YANAGISAWA Saxophones

やってはいけないサビの落とし方

公式の記述をたどると、避けるべき扱いが浮かび上がります。整理しておきます。

仕上げに合わないポリッシュを使う

ヤマハのポリッシュは銀メッキ用、ラッカー用、ニッケルメッキ・洋白用に分かれています。手元にあるものを流用する使い方は、公式の想定から外れます。

タンポやコルクに薬剤を付ける

ベル内側の作業では、タンポに付着させないようメーカーが明確に注意しています。

楽器を分解して奥まで磨く

ヤマハはサクソフォンのお手入れのページで、トーンホールを掃除するにはキイを外す作業が必要になると説明したうえで、自分で楽器を分解するのはお勧めできないと明記しています。あわせて、楽器店にメンテナンスに出すよう案内しています。

参考:サクソフォンのお手入れ:演奏後のお手入れ|ヤマハ株式会社

力を込めて何度も磨く

シルバーポリッシュの使い方として公式が示しているのは、少量を薄く広げて軽く磨く方法です。強くこする指示はどこにもありません。

なお、家庭用の洗剤や台所用の研磨剤をサックスに使ってよいとする記載は、今回確認したメーカー公式の各ページには見当たりませんでした。裏付けがない以上、この記事でも代用品はご案内しません。

サビと変色を出さないための予防

落とす作業にはリスクが伴います。出さない方向に力を入れる方が、楽器にとっては安全です。

タイミング やること 根拠となる公式の記述
演奏後(毎回) スワブとクリーニングペーパーで水分を取る 汚れと水分を取ることがお手入れのポイント
演奏後(毎回) ポリシングクロスで手垢やゴミを拭く 管体表面の手垢やゴミを拭き取る
週に1回 ポリシングガーゼとトーンホールクリーナーで細部を掃除 キイに余分な力がかからないよう注意する
2〜3カ月に1回 キイオイルを差す キイオイルは錆や摩耗を防ぐと製品情報に記載
3〜4カ月に1回 楽器店などで診断・調整を受ける ヤナギサワが定期的な診断・調整を推奨

水分については、ヤマハがトランペットの解説で明確な注意を書いています。抜差管の材料である真ちゅうや洋白は耐食性に優れているものの、水分が長時間残留すると腐食が進行する恐れがあるという注意書きです。演奏後に水分を残さないことが、サビ対策の中心にあると分かります。

参考:トランペットのお手入れ:演奏後のお手入れ|ヤマハ株式会社

キイオイルについても、ヤマハは製品情報でキイポストと鍵管の間や鍵管内面に使い、錆や摩耗を防ぐと説明しています。オイルを差す作業は動きのためだけではありません。

参考:お手入れ用品|ヤマハ株式会社

ヤナギサワは、適切なお手入れと使用をしていてもサクソフォンはバランスが狂ってくるとしたうえで、3〜4カ月に一度の定期的な診断・調整を勧めています。同社は本体の厚みが0.7〜0.8ミリメートルと非常に薄いことにも触れており、扱いに気を使う楽器であることが分かります。

参考:製造工程|YANAGISAWA Saxophones

よくある質問

サビを落とさないまま吹き続けても大丈夫ですか

ヤマハはサクソフォンのベル内側のさびについて、演奏への影響はよほどのことがない限り問題はないと説明しています。ただし匂いの問題には触れられており、衛生面が気になる場合は楽器店に相談するのが確実です。音が出にくいなどの症状がある場合は、さびとは別の原因を疑ってください。

銀メッキの黒ずみは自分で磨いてよいのでしょうか

ヤマハはシルバーポリッシュやシルバークロスで磨く方法を案内しています。ただし少量だけ布につけて薄く広げるように、軽く磨くという条件も添えられました。手順に自信がない場合や、範囲が広い場合は楽器店に依頼する方が安全です。

重曹やクエン酸で落とす方法は使えますか

今回確認したメーカー公式のページには、家庭用の粉末や酸を使ってよいとする記述は見当たりませんでした。案内されているのは仕上げごとの専用ポリッシュとクロス、そして楽器用のブラスソープです。裏付けのない方法は避けることをおすすめします。

彫刻の入った部分はどう扱えばよいですか

ヤナギサワは彫刻について、手彫りの美しさを尊重し熟練した職人が丁寧に彫り上げていると説明しています。細かい溝に薬剤や研磨剤が残りやすい部分でもあります。判断に迷う場合は、無理に自分で磨かず相談する方が安心です。

手放す予定の楽器は磨いてから持ち込むべきですか

無理に磨く必要はありません。仕上げに合わない道具で磨くと、かえって表面を傷めてしまう可能性があります。日常の乾拭きまでにとどめ、状態はそのままでご相談いただくのが安全です。

まとめ

サックスのサビや黒ずみは、仕上げごとに使う道具が決まっています。メーカーは専用のポリッシュとクロスだけを案内しており、分解や強い研磨は勧めていません。手放すことを検討している楽器も、自己流の作業で表面を変えてしまう前にお声がけください。当社では現状のまま拝見し、状態を確認したうえでご案内しています。