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サックスのつば抜きの正しい手順|水分を残さない演奏後のお手入れ

サックスを吹き終えたあと、管の中に残った水分をどう処理すればよいか迷う方は少なくありません。トランペットのようなウォーターキイが付いていないため、やり方が分かりにくい楽器でもあります。そこでこの記事では、サックスのつば抜きについて、メーカー公式が案内している手順をもとに整理しました。使う道具の違いと、やってはいけない扱いも合わせて確認できます。

サックスの「つば抜き」は何を指すのでしょうか

金管楽器の場合、管の中にたまった水分はウォーターキイから外へ出します。ヤマハはトランペットのお手入れについて、ピストンを押さえながら抜差管を抜くよう案内しています。抜いた抜差管から水分を出し、ウォーターキイからも管体内の水分を出す流れです。

参考:トランペットのお手入れ:演奏後のお手入れ|ヤマハ株式会社

一方でサクソフォンには、この排水用のキイがありません。ヤマハがサクソフォンの演奏後のお手入れとして案内しているのは、クリーニングスワブとクリーニングペーパーで水分を拭き取る方法だけです。つまりサックスのつば抜きとは、栓を開けて水を落とす作業ではなく、布と紙で水分を吸い取る作業を指します。

同ページでは、演奏後のお手入れのポイントを「汚れと水分を取ること」と表現しています。ここを押さえておくと、以降の手順の意味が理解しやすくなります。

参考:サクソフォンのお手入れ:演奏後のお手入れ|ヤマハ株式会社

なお「つば」と呼ばれてはいますが、管内にたまるものの多くは息に含まれる水蒸気が冷えて水になったものです。呼気そのものに由来する以上、放置すれば衛生面でも楽器の面でも良いことはありません。

演奏後のつば抜きは5つの工程で進めます

ヤマハがサクソフォンの演奏後のお手入れとして示している手順は、大きく5つに分かれます。順番に見ていきましょう。

1.マウスピースと吹込管(ネック)

リードを外し、クリーニングスワブ(S)でマウスピースの汚れを落とします。このときマウスピースの先端を傷つけないよう注意します。続いて吹込管の内側の水分も、同じクリーニングスワブ(S)でしっかり取ります。

2.タンポの水分

タンポが湿っている場合は、タンポとトーンホールの隙間にクリーニングペーパーをはさんで水分を完全に取ります。この工程は次の見出しで詳しく扱います。

3.管体の内側

ソプラノ・アルト・テナーサックス用のクリーニングスワブは、ベル側から通してネックジョイント部から引き出します。バリトンサックス用はネックジョイント部から入れて3・4番管を掃除する方式です。楽器に合ったサイズのスワブを使ってください。

4.表面の汚れ

ポリシングクロスで管体表面の手垢やゴミを拭き取ります。

5.オクターブキイ

オクターブキイのトーンホールは小さくてつまりやすいため、トーンホールクリーナーを使って掃除します。トーンホールクリーナーの先端は金属部になっており、トーンホールを傷つけないよう十分な注意が必要です。

参考:サクソフォンのお手入れ:演奏後のお手入れ|ヤマハ株式会社

ヤマハは学校向けの「動く!お手入れの達人」サクソフォン編でも、同じ流れを動画の章立てにしています。取り出し方と組み立てのあと、クリーニングスワブとクリーニングペーパー、パウダーペーパーが続きます。公式が想定している流れは、紙面でも動画でも共通していると分かります。

参考:動く!お手入れの達人|ヤマハ株式会社

タンポの水分はクリーニングペーパーで抜きます

つば抜きで最も気を使うのがタンポです。革などでできた消耗部品であり、水分の影響を直接受けます。

ヤマハの手順は次のとおりです。クリーニングペーパーをタンポとトーンホールの間にはさみ、キイを軽く数回押さえます。ペーパーの当てる場所を変えて、2〜3回繰り返します。

そのうえで、公式は2つの注意を明記しています。ひとつは、キイを押さえた状態でペーパーを拭き取らないことです。もうひとつは、タンポがベタつく際にパウダーペーパーを使うという点です。

参考:サクソフォンのお手入れ:演奏後のお手入れ|ヤマハ株式会社

キイを押さえたままペーパーを引き抜くと、タンポの表面をこすってしまいます。この一点を守るだけでも、タンポの持ちは変わってきます。

ヤマハはクリーニングペーパーCP3について「タンポやトーンホール(音孔)に溜まった水分、油分などを取るためのペーパー」であり「タンポの寿命を延ばします」と製品情報に書きました。消耗品を守るための道具という位置づけが、はっきり示されています。

参考:お手入れ用品|ヤマハ株式会社

つば抜きを省くと楽器にどう響くのでしょうか

水分を残したままケースにしまうと、何が起きるのでしょうか。メーカーの記述から読み取れる範囲で整理します。

まず消耗品への影響です。ヤナギサワは製造工程を紹介するページの締めくくりで、使用後のお手入れはタンポなどの消耗品を長持ちさせるために不可欠なものだと述べました。加えて、適切なお手入れと使用をしていてもサクソフォンはバランスが狂ってくるため、3〜4カ月に一度の定期的な診断・調整を勧めています。

同ページでは、サクソフォンの本体の厚みが0.7〜0.8ミリメートルと非常に薄く、ケースに入れた状態で倒れても本体が曲がることがあるとも説明されています。デリケートな楽器だという前提を、作り手自身が示している形です。

参考:製造工程|YANAGISAWA Saxophones

次に金属への影響です。ヤマハはトランペットの解説で、抜差管の材料である真ちゅうや洋白は耐食性に優れているものの、水分が長時間残留すると腐食が進行する恐れがあると注意しています。ヤナギサワによればサクソフォンの原材料はブラス・ブロンズ・シルバーの3種類に分類されており、管楽器の管体が金属である点は共通します。

参考:トランペットのお手入れ:演奏後のお手入れ|ヤマハ株式会社

さらにタンポの寸法変化もあります。ヤマハの講師向けQ&Aはフルートについての記述ですが、タンポが水分を含んで膨張し自然に乾燥することを繰り返していると、タンポがだんだん縮んで急に音が鳴らなくなることがあるという説明です。水分をこまめに取るよう勧める理由が、ここに示されています。

参考:講師がアドバイス!フルート初心者が知っておきたい5つのポイント|ヤマハミュージックジャパン

頻度ごとのお手入れを組み合わせます

つば抜きは毎回の作業ですが、それだけでは足りません。ヤマハは頻度別にお手入れを整理しています。

タイミング 主な内容 公式ページでの説明
演奏後(毎回) スワブ、クリーニングペーパー、ポリシングクロス、トーンホールクリーナー 汚れと水分を取ることがポイント
週に1回 ポリシングガーゼをひも状にして細部を掃除 キイに余分な力がかからないよう注意する
週に1回 トーンホールクリーナーでキイの間の汚れを除去 タンポを傷めないよう注意する
2〜3カ月に1回 キイオイルの給油 油がきれてキコキコ擦れた音がしたら差す
3〜4カ月に1回 楽器店などでの診断・調整 ヤナギサワが定期的な診断・調整を推奨

週に一度の掃除については、ポリシングガーゼをひも状にし、キイに余分な力がかからないように注意しながら掃除すると案内されています。キイの間の細かい汚れやゴミは、トーンホールクリーナーでタンポを傷めないように取り除きます。

参考:サクソフォンのお手入れ:週に1回行うお手入れ|ヤマハ株式会社

キイオイルはキイを支えている軸の両端に少し差す程度で構いません。キイポストとキイの軸の間に少し差し、余ったオイルは拭き取ってください。ヤマハは、油がきれてノイズがするようになったら差すべきであり、目安は2〜3カ月に1度程度としています。

参考:サクソフォンのお手入れ:必要に応じて行うお手入れ|ヤマハ株式会社

使う道具と役割を整理しておきます

つば抜きに使う道具は、それぞれ役割が決まっています。ヤマハの製品情報に記載されている用途をもとにまとめました。

道具 主な用途 押さえておきたい点
クリーニングスワブ(S) マウスピースと吹込管(ネック)の内側 木管楽器マウスピース、サクソフォンネック用として案内
クリーニングスワブ(SAX) アルト・テナーサクソフォンの管体内側 楽器に合ったサイズを使う
バリトンサックス用スワブ 3番管・4番管の内部 公式に「吹込管(ネック)には使用できません」と明記
クリーニングペーパー タンポとトーンホールの水分・油分 タンポの寿命を延ばす目的の消耗品
パウダーペーパー タンポのベタつき ベタつく際に使うものとして案内
ポリシングクロス 管体表面の手垢やゴミ ネル素材やマイクロファイバー素材がある
トーンホールクリーナー トーンホールやキイの細部 先端の金属部で傷つけないよう注意

参考:お手入れ用品|ヤマハ株式会社

バリトンサックス用のスワブについて、ヤマハは吹込管には使用できないと製品説明に書いています。サイズが合わない道具を無理に通す使い方は、公式の想定から外れると考えてください。

つば抜きでやってはいけないこと

公式の記述から、避けるべき扱いを抜き出しておきます。いずれも短い注意書きですが、守る価値のある内容です。

キイを押さえたままペーパーを引っ張らない

タンポの表面をこすることになるため、ヤマハははっきり注意しています。

マウスピースの先端を傷つけない

スワブを通すときに先端へ力がかからないよう気をつけてください。

トーンホールクリーナーの金属部でトーンホールを傷つけない

オクターブキイのトーンホールは小さく、慎重な作業が求められます。

自分で楽器を分解しない

ヤマハはサクソフォンのお手入れのページで、トーンホールを掃除するにはキイを外す作業が必要になると説明したうえで、自分で楽器を分解するのはお勧めできないと明記しました。そのうえで、楽器店にメンテナンスに出すよう案内しています。

参考:サクソフォンのお手入れ:演奏後のお手入れ|ヤマハ株式会社

分解して奥まで掃除したくなる気持ちは分かりますが、ここはメーカーが自分でやらないよう求めている領域です。無理に手を出さず、専門の技術者に任せてください。

自分で対処せず相談した方がよい状態

つば抜きを続けていても、時間の経過とともに調整は狂っていきます。次のような状態は、自己流で直そうとしない方が安全です。

ヤマハは、音孔を閉じたときに隙間ができると低音部が出にくくなり、タンポ調整がくるっていると考えられるという説明です。そのうえで、楽器店に相談してタンポ交換や修理をすることを勧めています。

参考:サクソフォンのお手入れ:困ったときの対処法|ヤマハ株式会社

ヤナギサワは「サックス工房 ヤナギサワ・クロッシュ」を運営しており、楽器の状態を診断し、調整・修理の見積りを出しました。同社は診断見積りは無料であり、試奏や修理、調整を希望する場合は事前に電話予約が必要だと案内しています。

参考:アフターサービス|YANAGISAWA Saxophones

技術者の側の事情も知っておくと、判断がしやすくなります。ヤマハは1978年から管楽器テクニカルアカデミーを開設しており、これは修了後に全国のヤマハ特約店への就職を前提とした職業訓練校です。カリキュラムは1年間で、実技には木管楽器の全タンポ交換調整や金管楽器の凹み直しなどが含まれています。

参考:管楽器テクニカルアカデミー|ヤマハ株式会社

1年かけて学ぶ内容を、道具だけそろえて再現するのは現実的ではありません。日々のつば抜きは奏者が行い、調整と修理は技術者に任せる。この線引きが、結果として楽器を長持ちさせます。

よくある質問

演奏の途中でもつば抜きをした方がよいですか

ヤマハの公式ページは、演奏後のお手入れとケースにしまう前の手順として構成されています。演奏中の手順を指定した記述は確認できませんでした。演奏中に水分が気になる場合も、タンポとトーンホールの間にクリーニングペーパーをはさむ方法が基本です。

クリーニングペーパーはティッシュで代用できますか

メーカーが案内しているのは、専用のクリーニングペーパーとパウダーペーパーです。家庭用の紙で代用してよいとする記述は、ヤマハの公式ページでは確認できませんでした。タンポは調整の要になる部品ですので、専用品を使うことをおすすめします。

スワブが管の中でつまってしまったら、どうすればよいですか

無理に引っ張ると、キイやタンポに力がかかります。公式ページにはつまった場合の対処法の記載が見当たらないため、そのまま楽器店へ持ち込んで相談する方が安全です。自力で解決しようとして、状態を悪化させないことが優先です。

マウスピースの汚れがスワブだけで落ちません

ヤマハはマウスピース用の道具として、マウスピースクリーナーとマウスピースブラシを案内しています。マウスピースクリーナーはマウスピースに直接スプレーし、拭き取って汚れを落とすタイプの製品です。専用品を使い、先端に力をかけないよう気をつけてください。

参考:お手入れ用品|ヤマハ株式会社

しばらく吹いていなかったサックスは、すぐ吹いても大丈夫ですか

長期間ケースに入れたままだった楽器は、タンポやコルクの状態が変わっている可能性があります。ヤナギサワは3〜4カ月に一度の定期的な診断・調整を勧めており、間隔が空いた楽器はまず点検に出すのが安全です。音が出るかどうかだけで判断しない方が無難です。

まとめ

サックスのつば抜きは、スワブとクリーニングペーパーで水分を残さない作業です。メーカーは分解を勧めておらず、調整やタンポ交換は楽器店に任せるよう案内しています。手放すことを検討している楽器も、自己流の作業で状態を変えてしまう前にご相談ください。当社では現状のまま拝見し、内容を確認したうえでご案内しています。