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ナポレオン金貨とは|20フラン金貨の種類・仕様と価値の見方

家族の遺品や古いコインケースから、横顔が刻まれた小さな金貨が出てきて、ナポレオン金貨ではないかと調べている方もいるのではないでしょうか。ナポレオン金貨はフランスの20フラン金貨を指す通称で、19世紀から20世紀初めにかけて大量に鋳造されました。図柄は時代によって何度も変わっており、まず自分の1枚がどの図柄かを見分けることが、価値を考える入り口になります。この記事では、ナポレオン金貨の成り立ち、仕様、図柄ごとの種類、価値の決まり方を、フランス国立図書館やパリ造幣局などの公表情報に沿って整理します。

ナポレオン金貨とは何を指すのか

ナポレオン金貨(Napoléon)は、フランスの20フラン金貨に対して使われてきた呼び名です。

狭い意味では、ナポレオン1世やナポレオン3世の肖像が刻まれた20フラン金貨を指します。ただし実際には、王政期のものや共和政期のものも含め、同じ規格でつくられた20フラン金貨全体をまとめて「ナポレオン」と呼ぶことが定着しています。フランス国内では、金貨を数える単位のように「ナポレオン◯枚」と言うこともあり、ほぼ普通名詞として使われてきた言葉です。

そのため、手元の20フラン金貨に描かれているのがナポレオンでなくても、ナポレオン金貨と呼ぶこと自体は誤りではありません。ただ、図柄によって発行された時期も現存数も違うため、価値を考えるときは図柄で種類を確かめるところから始めることになります。

20フラン金貨が生まれた背景|フラン・ジェルミナル

ナポレオン金貨の規格は、1803年に定められた通貨制度に由来します。

フランス国立図書館(BnF)の解説によると、1803年にボナパルトは「共和暦11年ジェルミナルの法(lois de germinal an XI)」によってフランスの通貨制度を定め、銀を基準とするフランを制定しました。これがフラン・ジェルミナルと呼ばれる制度です。革命期に混乱していた通貨を整理し、統一した基準を置き直すことが目的でした。

この制度のもとで発行された20フラン金貨は、品位900/1000(金90%)と定められました。BnFの解説では、この体系のもとで金貨は5億枚、銀貨は9億枚近くが鋳造されたと述べられています。フラン・ジェルミナルは政治体制が何度も入れ替わるなかでも比較的安定を保ち、1914年まで続いたとされています。

さらに1865年のパリ条約により、フランス、ベルギー、イタリア、スイス、ギリシャのあいだでラテン通貨同盟が結ばれました。BnFによると、この同盟のもとで金貨の品位は900/1000に統一され、1868年にはフラン・ジェルミナルがヨーロッパの一部で共通の通貨となりました。フランスの20フラン金貨と、スイスやイタリア、ベルギーの20フラン相当の金貨が同じ規格でつくられているのは、この取り決めによるものです。

参考:「Le franc germinal (1803-1914)」|BnF Essentiels(フランス国立図書館)

ナポレオン金貨の仕様

20フラン金貨の仕様は、ラテン通貨同盟の規格として各国で共通しています。同じ規格でつくられたスイスの20フラン金貨について、スイス造幣局(Swissmint)は次のように公表しています。

項目 内容 額面 20フラン 量目(金貨全体の重さ) 6.452g 品位 金900/1000 純金含有量 約5.81g 直径 21mm 厚さ 1.25mm

(※スイス造幣局が公表する20フラン金貨の仕様です。純金含有量は量目×品位から算出。フランスの20フラン金貨も同じラテン通貨同盟の規格に基づいています)

500円硬貨より小さく、手のひらに乗せると意外なほど小ぶりに感じるサイズです。含まれる純金は約5.81gで、これがのちに述べる価値の土台になります。

フランス側の資料としては、パリ造幣局が収蔵する「20 FRANCS AN 13」という原型のマトリクス(錫製の型)が知られています。パリ造幣局の収蔵品情報によると、これは彫刻家ジャン=ピエール・ドローズ(Jean-Pierre Droz、1746年〜1823年)が共和暦13年(1804年〜1805年)にパリで手がけたもので、表面は左を向いた無冠の頭部、裏面は2本の枝でつくられた冠のなかに「20 FRANCS」と記されたデザインです。初期の20フラン金貨がどのような姿だったかを伝える資料といえます。

参考:「DAS GOLDVRENELI」|Swissmint(スイス造幣局)

参考:「20 FRANCS AN 13 – EMPREINTE MATRICE EN ETAIN」|Monnaie de Paris(パリ造幣局)収蔵品

図柄で見るナポレオン金貨の種類

20フラン金貨は、フランスの政治体制が変わるたびに図柄が変わりました。手元の1枚がどれかを見分けるとき、表面の肖像と裏面のデザインが手がかりになります。おもなものを整理します。

裏面は雄鶏第三共和政期

通称 表面の図柄 時期の目安
ナポレオン1世 ナポレオン・ボナパルトの横顔(無冠のものと月桂冠のものがある) 19世紀初頭
王政期の20フラン金貨 ルイ18世、シャルル10世、ルイ・フィリップの肖像 復古王政〜七月王政期
ケレス/天使 女神ケレスの横顔、あるいは憲法を刻む天使 第二共和政期
ナポレオン3世(無冠) 月桂冠をかぶらないナポレオン3世の横顔 第二帝政の前半
ナポレオン3世(有冠) 月桂冠をかぶったナポレオン3世の横顔 第二帝政の後半
マリアンヌ/雄鶏(コック) フリジア帽をかぶったマリアンヌの横顔。

パリ造幣局は、ナポレオン3世の月桂冠をいただいた肖像について、叔父にあたるナポレオンの肖像から強い影響を受けたものであり、ジャン=ジャック・バール(Jean-Jacques Barre)が彫刻したナポレオン期のフランを再解釈したデザインだと説明しています。

図柄ごとに現存する枚数は異なりますが、いずれも大量に鋳造されたため、コレクションとしての希少性で大きく差がつくことは多くありません。日本の市場でよく見かけるのは、ナポレオン3世の肖像のものと、マリアンヌと雄鶏の組み合わせのものです。

参考:「Golds of France – the Napoleon III」|Monnaie de Paris(パリ造幣局)

ナポレオン金貨の価値はどう決まるのか

ナポレオン金貨の価値を考えるうえで、まず押さえておきたいのが「地金価値が土台になる」という点です。

BnFの解説にあるとおり、フラン・ジェルミナルのもとで金貨は5億枚規模で鋳造されました。ラテン通貨同盟に加わった国々でも同じ規格の金貨が発行されているため、同種の金貨は世界に大量に存在します。フランスでは個人が金貨で資産を持つ習慣が長く続いたこともあり、現存数は多い部類に入ります。

その結果、ナポレオン金貨の価格は、含まれる純金約5.81gの価値が中心になります。年号や造幣所の記号によって希少なものはありますが、多くの個体はコレクション性による大きな上乗せがつかず、地金相場に連動して評価されます。この点は、南アフリカのクルーガーランド金貨などの地金型金貨と似た性格といえます。

価値が地金価値を明確に超えるのは、次のようなケースに限られます。

  • 発行枚数が特に少ない年号・造幣所のもの
  • 未使用に近い状態で保たれているもの
  • 鑑定機関のスラブ(密封ケース)に入り、グレードが認定されているもの
  • ケース入りのセットなど、当時の販売形態が残っているもの

逆に言えば、使用による摩耗があり、年号にも特別な事情がないものは、地金価値がそのまま評価の目安になると考えておくと大きく外れません。

買取価格の目安と計算の考え方

具体的に、いくらぐらいになるのかを計算してみます。

田中貴金属工業が公表している2026年8月6日時点の金の店頭買取価格は、1gあたり23,493円(税込)です。ナポレオン金貨1枚に含まれる純金は約5.81gですから、地金価値はおおよそ次のようになります。

5.81g × 23,493円 = 約13万6,000円

これが1枚あたりの地金価値の目安です。実際の買取では、ここから業者の手数料等が差し引かれるのが一般的で、状態が良ければ地金価値を少し上回る提示になることもあります。

状態・条件 買取価格の目安
摩耗があり、年号に特別な事情がないもの 地金価値と同程度、またはやや下
状態が良好なもの 地金価値と同程度~わずかに上乗せ
未使用に近い、または鑑定済みのもの 地金価値を上回ることがある
希少とされる年号・造幣所のもの 個別評価。地金価値を大きく上回ることもある

(※2026年8月6日時点の金価格をもとにした目安です。金相場は日々変動し、買取業者の提示額は手数料や在庫状況によって変わります)

金相場は日々動くため、同じ金貨でも売却するタイミングによって金額が変わります。何枚かまとめて持っている場合は、その差が積み上がるため、相場の水準を確認してから判断するとよいでしょう。

参考:「金・プラチナ・銀の価格」|田中貴金属工業

本物かどうかを確かめるときの見方

ナポレオン金貨は流通量が多いぶん、模造品も出回っています。査定に出す前に、自分でできる範囲の確認点を挙げます。

寸法と重さ:直径21mm、量目6.45g前後、厚さ1.25mm前後が基準です。0.01g単位まで量れるはかりがあれば、大きくずれていないかは確認できます。ただし比重の近い金属を使った模造品もあるため、重さだけで断定はできません。

縁のつくり:20フラン金貨の縁には文字や刻みが入っています。時期によって内容が異なりますが、縁の仕上げが雑なものや、まったく無地のものは注意が必要です。

メダル・ジュトンとの混同:20フラン金貨に似せてつくられた記念メダルやジュトン(代用貨)が存在します。これらは金貨ではなく、金の含有量もありません。図柄が似ていても額面や刻印が異なる場合があるため、細部を見比べる必要があります。

アクセサリー加工の有無:ペンダントにするために枠を付けたり、縁に穴を開けたりしたものは、金貨としての評価が下がります。加工されている場合も、含まれる金の価値は残るため、その旨を伝えて査定を受けるとよいでしょう。

磨かない:表面を磨くと細かい傷が入り、状態の評価が下がります。金の目減りにもつながるため、汚れが気になってもそのままにしておくのが基本です。

最終的な真贋の判断は、比重測定や蛍光X線分析などの設備を持つ業者に委ねるのが確実です。

よくある質問

ナポレオン金貨とは、ナポレオンが描かれた金貨だけを指すのですか。

いいえ。もともとはナポレオンの肖像を刻んだ20フラン金貨を指す呼び名でしたが、現在では同じ規格でつくられたフランスの20フラン金貨全体をまとめてこう呼ぶのが一般的です。マリアンヌと雄鶏の図柄のものもナポレオン金貨に含まれます。

ナポレオン金貨は何グラムで、金はどれくらい含まれていますか。

ラテン通貨同盟の規格に基づく20フラン金貨は、量目6.452g、品位900/1000、直径21mmです。含まれる純金は約5.81gになります。

参考:「DAS GOLDVRENELI」|Swissmint(スイス造幣局)

古い年号のものほど高く売れますか。

必ずしもそうとは限りません。ナポレオン金貨は総じて大量に鋳造されており、古さそのものより、その年号・造幣所の鋳造枚数と状態のほうが評価に影響します。多くの個体では、含まれる純金の価値が評価の中心になります。

フランス以外の20フラン金貨も同じように扱われますか。

スイス、ベルギー、イタリアなどラテン通貨同盟に加わった国の20フラン相当の金貨は、フランスの20フラン金貨と同じ規格でつくられています。金の含有量が同じであるため、地金価値としての評価もほぼ同じ水準になります。図柄や国によって収集家の人気に差はあります。

参考:「Le franc germinal (1803-1914)」|BnF Essentiels(フランス国立図書館)

ペンダントに加工されたナポレオン金貨も売れますか。

枠を外せない状態でも、含まれる金の価値は残るため、買取の対象になることが一般的です。ただし金貨としての状態評価は下がるため、地金価値を基準とした金額になると考えておくとよいでしょう。枠が金でない場合は、その分は金の重さから除かれます。

まとめて何枚もある場合、1枚ずつ査定してもらえますか。

枚数が多い場合でも、年号や状態に差があれば個別に見てもらえることが一般的です。特別な年号のものが混じっている可能性もあるため、まとめて一括の金額を提示された場合は、内訳を確認してみるとよいでしょう。

まとめ

ナポレオン金貨は、1803年のフラン・ジェルミナル制定に始まるフランスの20フラン金貨を指す通称です。品位900/1000、量目6.45g前後、直径21mmという規格は、1865年のラテン通貨同盟によって加盟国で共通のものとなり、スイスやイタリアなどにも同じ規格の金貨があります。図柄はナポレオン1世、王政期の各王、ケレスや天使、ナポレオン3世、マリアンヌと雄鶏など時代によって変わりますが、いずれも大量に鋳造されたため、価値の土台は含まれる純金約5.81gの地金価値になります。希少な年号や未使用に近い状態のものは地金価値を超えて評価されることもありますが、多くは相場に連動した金額になると考えておくとよいでしょう。磨いたり加工したりせず、真贋の確認ができる業者に相談してみてはいかがでしょうか。