ウールの着物は買取してもらえる?|正絹との違いと値がつきにくい理由
タンスを片づけていて出てきたウールの着物を、売れるものなのか処分すべきものなのか迷っている方は多いのではないでしょうか。ウールの着物は正絹の着物と比べると、買取で高い金額がつきにくい品です。この記事では、ウールがどんな素材で、正絹と何が違い、なぜ値がつきにくいのかを、公的機関や業界団体の情報をもとに整理します。あわせて、虫害を受けやすい理由と保管のしかた、ウールアンサンブルの扱い、値がつかなかったときの選択肢もまとめます。
ウールの着物とはどんな着物か
ウールの着物は、羊毛(ウール)を使って織られた着物です。家庭用品品質表示法にもとづく繊維の名称の指定用語では、羊毛を表す言葉として「毛」「羊毛」「ウール」「WOOL」の4通りが認められています。手元の着物のタグに「毛100%」とだけ書かれていた場合、それは羊毛を指していると考えて差し支えありません。
着物や羽織は、家庭用品品質表示法の対象品目に含まれています。消費者庁の手引きでは、羽織には袷や単羽織、茶羽織などが、着物には浴衣・振袖・留袖などコート類を除く和服用外衣が含まれるとされ、繊維の組成、家庭洗濯等取扱方法、表示者名等を表示することが定められています。つまり、素材が何かを知りたいときは、まず縫い付けられた品質表示のタグを探すのが確実です。
なお、混用率の表示には許容範囲が定められており、100%表示の場合、毛はマイナス3%以内、毛以外の繊維はマイナス1%以内とされています。毛だけ許容差がやや広く設定されている点は、覚えておくと表示を読むときの目安になります。
ウール系の着物によく使われる呼び名
ウールの着物には、いくつかの呼び名があります。市場でよく耳にするのは次のようなものです。
| 呼び名 | 内容 |
|---|---|
| ウール(毛100%) | 羊毛だけで織られたもの。普段着の着物として使われてきた |
| シルクウール | 絹と羊毛の混紡。丹後織物工業組合が扱う生地では「シルク60%/ウール40%」といった組成例がある |
| モスリン | 幕末以降にヨーロッパから輸入された毛織物。明治から昭和初期にかけて流行し、長襦袢や子ども用の着物として広く普及した |
シルクウールは、絹100%の製品より価格を抑えながら、絹らしいしなやかさと光沢感を残せる生地として紹介されています。ウールが混じっている分、正絹と同じ扱いにはなりませんが、風合いは正絹寄りになります。
モスリンについては、大阪市立住まいのミュージアム 大阪くらしの今昔館の企画展解説で、幕末以降にヨーロッパから大量に輸入された毛織物であり、明治から昭和初期にかけて流行して、特に長襦袢や子ども用の着物として広く普及したと説明されています。ウールの着物が「普段着」として定着していった背景がうかがえます。
参考:「親子で楽しむ企画展 モスリン ―ちょっと昔の普段着きもの―」|大阪市立住まいのミュージアム 大阪くらしの今昔館
ウールと正絹はどこが違うのか
買取の場面で差がつく理由を理解するには、素材そのものの違いを押さえておくとわかりやすくなります。
| 比較項目 | ウール(羊毛) | 正絹(絹) |
|---|---|---|
| 繊維の性質 | 動物性のタンパク質繊維。約97%がケラチンというタンパク質で構成される | 動物性のタンパク質繊維(フィブロイン・セリシン) |
| 見た目 | つや消しの落ち着いた質感。毛羽立ちがある | 独特の光沢がある |
| 手ざわり | ふっくらとして温かみがある。 | やや重い | 滑らかで、しなやか | 着ていく場所 | 普段着・街着として着られてきた | 普段着から礼装まで幅広い | 虫害 | 受けやすい | 受けやすい | 品質表示の指定用語 | 毛/羊毛/ウール/WOOL | 絹/シルク/SILK |
ウール繊維は、人間の毛髪にも含まれるケラチンという天然タンパク質でできており、組成のおよそ97%がタンパク質、2〜3%が脂質とされています。繊維にはクリンプと呼ばれる縮れがあり、これが繊維を切らずに伸ばして元に戻す働きをもたらすため、シワが戻りやすいという特徴につながっています。クリンプによって肌と生地の間に空気が保たれることが、保温性の理由としても説明されています。
参考:「What is the Wool Fibre?」|The Woolmark Company
こうした性質は、着物として着るぶんには扱いやすさにつながります。しかし中古市場での評価は、素材の使い勝手だけでなく、次に着たい人がどれだけいるかで決まります。この点でウールは正絹に大きく差をつけられます。
ウールの着物に高値がつきにくい理由
ここは、正直に書いておきたいところです。ウールの着物は、着物買取の中では評価されにくい部類に入ります。理由はいくつか重なっています。
用途が普段着に限られる
ウールの着物は、街着や普段着として着られてきた着物です。結婚式や式典などの改まった場では着用しません。着る場面が限られる着物は、中古で探している人の数もそのぶん少なくなります。訪問着や留袖、振袖のような礼装用の着物と比べると、需要の層がはっきり薄いのが実情です。
新品の価格帯自体が正絹より低い
中古の評価は、もともとの価格帯の影響を受けます。正絹の着物は、糸そのものが高く、染めや織りに手間がかかるため新品価格が高くなります。ウールは、絹に比べて原料も生産工程も抑えられる素材です。新品の時点で価格差があるものは、中古でも差がそのまま残りやすくなります。
産地証明や証紙のしくみが整っていない
正絹の着物には、産地の織物組合が発行する証紙が付くものが多くあります。証紙があると、どこで、どんな技法で作られたかを買い手に伝えられます。ウールの着物には、こうした産地証明のしくみが広く整っているとは言いがたく、価値を裏づける材料が乏しくなりがちです。
虫害やシミが出ていることが多い
後述しますが、ウールは衣類害虫の食害を受けやすい素材です。長く保管されたウールの着物は、小さな穴が開いていたり、袖口や衿元が擦れていたりすることが少なくありません。状態に難があれば、当然ながら評価は下がります。
以上をまとめると、ウールの着物は「値がつかないこともある」前提で査定に出すのが現実的です。値がつかない可能性を先に理解しておくと、査定結果に振り回されずに済みます。
ウールは虫害を受けやすい 保管でできること
ウールが虫に食われやすいのは、繊維が動物性のタンパク質でできているためです。衣類害虫の幼虫にとって、これが餌になります。
さいたま市が公開している解説では、カツオブシムシ類の幼虫が「動物性の繊維(毛織の衣類やじゅうたんなど)」や「動物性の乾燥食品(かつお節や煮干しなど)」、貯蔵穀物を食べると説明されています。主な種としてヒメカツオブシムシ、ヒメマルカツオブシムシ、ハラジロカツオブシムシが挙げられ、日本全体では20種以上が知られているとされています。幼虫や成虫が家屋内で越冬するため、タンスの中から幼虫や脱皮殻が見つかることがあるとも書かれています。
参考:「サイエンスなび/衣類や食品を食べる害虫『カツオブシムシ類』」|さいたま市
同じ解説では、対策として次のような内容が示されています。買取に出すかどうかにかかわらず、手元に残すウールの着物にも当てはまります。
- 長期間保管する前に、きれいに洗濯しておく
- 定期的に虫干しを行う
- タンスの中の毛くずを掃除する
- 密閉できる容器に入れ、高温・多湿を避ける
すでに穴が開いてしまったものは元には戻りませんが、これ以上増やさないことはできます。なお、被害を見つけたときに自分で繕おうとすると、かえって跡が目立ってしまうことがあります。査定に出す予定があるなら、無理に手を入れず、そのままの状態で見てもらったほうが安全です。
ウールアンサンブルはどう扱われるか
ウールの着物は、同じ生地の着物と羽織がそろった「アンサンブル」で作られていることがよくあります。着物と羽織をセットで着られるため、昭和期の普段着として広く仕立てられました。
買取では、アンサンブルであることが必ずしも高評価につながるわけではありません。ただし、次の点は押さえておくとよいでしょう。
まず、着物と羽織がそろっている場合は、必ず両方まとめて査定に出してください。片方だけでは同じ生地をもう一方に合わせることができないため、そろっている状態のほうが商品として扱いやすくなります。逆に、片方だけを残しておくメリットはほとんどありません。
次に、アンサンブルは着物と羽織で傷み方が違うことが多い点です。羽織は外側に着るため、袖口や衿の擦れ、日焼けが出やすくなります。着物側は問題がなくても、羽織の状態が悪ければセットとしての評価は下がります。
最後に、点数がまとまることの意味です。ウールの着物は1枚あたりの評価が小さいため、1枚だけを持ち込むと出張費や送料に見合わないことがあります。他の着物や帯、和装小物と一緒にまとめて査定に出すと、業者側も対応しやすくなります。ウールだけを単独で売るより、タンスの中身をまとめて相談するほうが現実的です。
値がつきやすいウール着物の条件と、査定前の準備
ウール全般の評価は控えめですが、その中でも差はつきます。査定で見られやすいのは次のような点です。
| 見られる点 | 評価につながりやすい状態 |
|---|---|
| 状態 | 虫穴・シミ・変色・カビ臭がない。生地にハリが残っている |
| 素材の組成 | 毛100%より、絹が混じったシルクウールのほうが風合いで評価されることがある |
| サイズ | 裄や身丈が大きめのもの。現代の体格でも着られる寸法は需要がある |
| 仕立て | 未使用・仕立て上がり直後に近いもの、反物のまま残っているもの |
| 付属品 | 品質表示のタグ、購入時の証紙やしおり、たとう紙が残っている |
| 柄・デザイン | 現代でも着回しやすい色柄。傷みのない無地や細かい柄 |
査定前にできる準備は、それほど多くありません。風通しのよい日陰でしばらく広げ、湿気とにおいを飛ばしておく。たとう紙や品質表示のタグが別の場所にあれば一緒にそろえる。この2つで十分です。直射日光は変色の原因になるため避けてください。汚れを自分で落とそうとすると生地を傷めることがあるので、気になる場合は着物を扱えるクリーニング店に相談するほうが安心です。
なお、着物や帯の品質表示は縫い付けラベルなど、容易に取れない方法で製品に直接付すこととされています。タグを切り取ってしまっている場合は素材の証明が難しくなるため、残っているものは切らずにおくのがおすすめです。
参考:「家庭用品の品質表示」|一般財団法人日本繊維製品品質技術センター
値がつかなかったときの選択肢
査定の結果、値がつかないこともあります。その場合の選択肢を整理しておきます。
無料引き取りを利用する。着物買取業者の中には、値がつかなかった品をそのまま引き取ってくれるところがあります。処分の手間が省けるのが利点です。引き取り後の扱いは業者によって異なるため、気になる場合は事前に確認しておくとよいでしょう。
リメイクの素材として使う。ウールは扱いやすい生地なので、バッグや小物、パッチワークの材料として使われることがあります。虫穴のある部分を避ければ、使える面積は意外と残っています。
自治体のルールに従って処分する。自治体によって、衣類が資源回収の対象になる場合と、可燃ごみになる場合があります。お住まいの自治体の分別ルールを確認してください。
譲る・寄付する。着付け教室やリメイクの活動団体などで、実用の生地として求められることがあります。受け入れ条件は団体ごとに違うため、事前の確認が必要です。
なお、出張買取を利用する際には、訪問購入に関する法律上のルールを知っておくと安心です。消費者庁の特定商取引法ガイドによると、訪問購入とは購入業者が店舗等以外の場所(消費者の自宅等)で契約を締結等して行う物品の購入を指します。法律で決められた書面を受け取った日から数えて8日以内であれば、申込みの撤回や契約の解除ができるとされ、この期間内は債務不履行に陥ることなく、事業者に対して物品の引渡しを拒むこともできるとされています。また、勧誘の要請をしていない相手に対して自宅等で勧誘をしたり、勧誘を受ける意思の有無を確認したりすることは禁じられています。
飛び込みの訪問買取に不安を感じたら、その場で答えを出す必要はありません。自分から依頼した業者に、日を改めて見てもらうほうが落ち着いて判断できます。
よくある質問
ウールの着物はいくらで売れますか。
ウールの着物の買取価格について、公的に定められた基準や統計はありません。ただ、普段着としての用途に限られること、新品の価格帯が正絹より低いこと、証紙のしくみが整っていないことから、正絹の着物と比べて評価は控えめになる傾向があります。値がつかないこともあるため、他の着物や帯と一緒にまとめて査定に出すのが現実的です。
ウールか正絹かを自分で見分けられますか。
もっとも確実なのは、縫い付けられた品質表示のタグを確認する方法です。着物や羽織は家庭用品品質表示法の対象品目で、繊維の組成を表示することが定められています。羊毛は「毛」「羊毛」「ウール」「WOOL」のいずれかで表示されます。タグがない場合は、光沢の有無や手ざわり、生地の重さでおおよその見当はつきますが、判断が難しいときは査定士に見てもらうのが確実です。
虫食い穴のあるウール着物でも査定に出せますか。
出すこと自体はできます。ただし、穴があるものは商品として販売しにくいため、評価は下がります。穴の場所や大きさによって扱いは変わるので、自分で判断して捨てる前に、他の着物と一緒に一度見てもらうとよいでしょう。自分で繕うと跡が残りやすいため、そのままの状態で持ち込むことをおすすめします。
ウールアンサンブルは着物と羽織を分けて売ったほうがよいですか。
そろっている場合は、まとめて査定に出してください。同じ生地の着物と羽織がセットになっていることに意味があるため、分けると商品としての扱いにくさが増します。片方だけを手元に残しても、使い道は限られます。
シルクウールは正絹として扱われますか。
シルクウールは絹と羊毛の混紡なので、正絹(絹100%)とは区別されます。丹後織物工業組合が扱う生地では「シルク60%/ウール40%」といった組成例が示されています。絹が混じることでしなやかさや光沢は増しますが、品質表示上は混紡として表示されるため、正絹と同じ評価にはなりません。
モスリンの長襦袢や子ども着物も買取の対象になりますか。
対象になることはありますが、評価は控えめです。モスリンは明治から昭和初期にかけて普及した毛織物で、長襦袢や子ども用の着物に多く使われました。年数の経ったものは変色や虫害が進んでいることが多く、状態が評価を大きく左右します。柄そのものに時代性があり、リメイク素材として求められることもあります。
まとめ
ウールの着物は、羊毛でできた普段着の着物です。ケラチンというタンパク質でできた動物性繊維で、扱いやすさや保温性がある一方、衣類害虫の食害を受けやすいという弱点があります。買取では、着る場面が普段着に限られること、新品の価格帯が正絹より低いこと、産地を証明する証紙のしくみが広くないことから、正絹と比べて評価は控えめになりやすく、値がつかないこともあります。
とはいえ、状態がよいもの、寸法が大きめのもの、シルクウールのように絹が混じったものは、評価につながる可能性があります。着物と羽織のアンサンブルはそろえたまま、他の着物や帯と一緒にまとめて査定に出すのが現実的な進め方です。まずは品質表示のタグで素材を確認し、虫害の有無を見たうえで、着物の取り扱いに慣れた業者に相談してみてはいかがでしょうか。