古いお札はいつまで使える?有効な券種と失効の境目
古い紙幣が出てくると、いつまで通用するのか気になるものです。新しいお札が出るたびに「旧札が使えなくなる」という話も流れ、判断に迷う方は少なくありません。そこでこの記事では、古いお札がいつまで使えるのかを、日本銀行と財務省が公表している資料をもとに整理します。有効と失効を分ける境目まで、時間軸に沿って説明します。
古いお札に有効期限はありません
はじめに結論を示します。銀行券には賞味期限のような期限が設けられていません。
日本銀行は、一度発行された銀行券は法令に基づく特別な措置がとられない限り通用力を失わないと説明しています。年数が経ったという理由だけで無効になることはないわけです。
参考:これまでに発行されたお札のうち、現在使えるお札はどれですか?|日本銀行
通用力の根拠は日本銀行法にあります。同法第46条第2項は、日本銀行が発行する銀行券は法貨として無制限に通用すると定めています。
つまり、有効な銀行券であれば発行年に関係なく支払いに使えます。ただし後述するとおり、有効ではなくなった券種も実際に存在します。ここを見分けることが、この記事の本題です。
いま有効なのは56種類のうち25種類です
日本銀行は1885年の設立以来、56種類の銀行券を発行してきました。このうち現在も有効なのは25種類です。
残る31種類は通用力を失っています。数字にすると半分以上が失効している計算になり、印象より厳しい結果です。
有効な券種は日本銀行が券種別に公開しています。一万円券から一円券まで、額面ごとにページが分かれている形です。
たとえば一万円券のページには、聖徳太子の肖像で縦84mm・横174mmの券種が載っています。発行開始日は昭和33(1958)年12月1日です。
参考:一万円券|日本銀行
五百円券のページには、岩倉具視の肖像の券種が2種類並んでいます。発行開始日は昭和26(1951)年4月2日と昭和44(1969)年11月1日です。
参考:五百円券|日本銀行
百円券のページにも、複数の券種が掲載されています。券面の様式が変わっても、失効の措置を受けていなければ有効なまま残るためです。
参考:百円券|日本銀行
一覧に載っていない券種については、日本銀行が有効と案内していないという事実だけを押さえてください。個別に断定するには、次の章で見る法令上の措置まで確認する必要があります。
なお、有効かどうかと市中で受け取ってもらえるかどうかは別の話です。有効な券種であっても、店頭で見慣れない紙幣の受け取りを断られる場面はあります。支払いに使う予定があるなら、先に現行の券種へ引き換えておくと安心です。
通用力を失った31種類|根拠は3つの措置だけです
31種類が失効したのは、たまたま古かったからではありません。日本銀行によれば、これまでに特別な措置がとられたのは3回だけです。
| 実施年 | 措置の内容 |
|---|---|
| 1927年(昭和2年) | 関東大震災後の焼失兌換券の整理 |
| 1946年(昭和21年) | いわゆる新円切り替え |
| 1953年(昭和28年) | 1円未満の小額通貨の整理 |
この3回に該当しない券種は、いまも通用力を保っています。逆にいえば、この3回のどれかに引っかかった券種だけが使えなくなったということです。
1927年|関東大震災後の焼失兌換券の整理
1回目は関東大震災の後始末にあたる措置です。震災で焼失した兌換券を整理する目的で行われました。
震災そのものは1923年(大正12年)の出来事です。整理の実施はその数年後という時間差がありました。
兌換券とは、金貨や銀貨といった正貨と引き換えられることを前提に発行された銀行券を指します。当時の紙幣は、この仕組みへの信頼のうえに成り立っていました。
震災で大量の券が焼失したことで、焼けた分をどう扱うかという処理が必要になりました。この整理によって通用力を失った券種があるということです。
1946年|新円切り替え
2回目の措置が最も広い範囲に及びました。日本銀行は経緯を公表しています。
政府は1946年2月に金融緊急措置令と日本銀行券預入令を公布しました。5円以上の日本銀行券を強制的に金融機関へ預け入れさせる内容です。
そのうえで預金を封鎖し、生活費や事業費などに限って新しい銀行券での払い出しを認めました。終戦直後のインフレ進行を止めるための非常措置です。
戦前の高額紙幣がいま有効でないのは、この措置が理由です。5円未満の少額券が生き残ったと考えると、有効一覧の顔ぶれも理解しやすくなります。
1953年|1円未満の小額通貨の整理
3回目は単位そのものの整理でした。1953年に制定された「小額通貨の整理及び支払金の端数計算に関する法律」により、1円未満の紙幣や貨幣は発行が停止されています。
それ以前に発行されていた1円未満の通貨も、同年12月31日限りで通用力を失いました。当時の物価情勢のもとで、ほとんど使われなくなっていたためです。
参考:1円未満のお金が使えなくなったのはいつからですか?|日本銀行
銭や厘の紙幣が使えないのは、この措置によります。単位としての銭と厘は、いまも通貨法第2条第2項に計算単位として残っています。
参考:通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律|e-Gov 法令検索
「支払停止」と「失効」は別のことです
日本銀行の一覧には「支払停止日」という欄があります。ここを失効日と読み違えると、判断を誤ります。
支払停止は、日本銀行がその券種を新たに支払わなくなった日を指します。すでに世の中に出ている分の通用力までなくなるわけではありません。
| 用語 | 意味 | 通用力 |
|---|---|---|
| 発行停止・支払停止 | 日本銀行が新たに支払わなくなること | 残る |
| 失効 | 法令上の特別な措置で通用力を失うこと | なくなる |
聖徳太子の一万円券がわかりやすい例です。支払は昭和61(1986)年1月4日で止まっていますが、いまも有効な券種として一覧に掲載されています。
日常でこの券種を見かけないのは、失効したからではありません。日本銀行に戻った分が支払われなくなり、市中から自然に姿を消しただけです。
一覧の見方でもう1つ注意したいのが、発行開始日の欄です。同じ肖像の券種でも、記番号の色や様式の違いで発行開始日が分かれている場合があります。
たとえば福沢諭吉の一万円券は、黒色記番号が昭和59(1984)年11月1日、褐色記番号が平成5(1993)年12月1日という表記になっています。日付が2つ並んでいても、失効とは無関係です。
2024年に新札が出ても旧札が使える理由
2024年7月3日に、一万円券・五千円券・千円券の新しい日本銀行券の発行が始まりました。
参考:改刷・改鋳|日本銀行
このとき財務省は、現在流通している壱万円券・五千円券・千円券は新しい日本銀行券の発行後も従来どおり通用すると明記しました。
理由は最初の章で見たとおりです。改刷は新しい様式を追加する行為であって、既存の券種を失効させる法令上の措置ではありません。
同じ報道発表では注意喚起も行われています。「現行の日本銀行券が使えなくなる」と騙る振り込め詐欺への警戒を呼びかける内容です。
改刷のたびに似た手口が現れます。使えなくなるから交換が必要だという連絡を受けたら、公的機関の発表を確認してください。
改刷そのものは珍しい出来事ではありません。国立印刷局は明治から現在までのお札の歴史を公開しており、様式が繰り返し改められてきたことがわかります。
新しい様式が出ても、それまでの券種は一覧に残り続けてきました。2024年の改刷も同じ流れのなかにあります。
状態が悪いと使えなくなる場合があります
時間の経過とは別に、券面の状態で扱いが変わる場面もあります。破れや焼けがある場合です。
日本銀行は損傷した銀行券について、残っている面積で三段階に判断します。3分の2以上なら全額、5分の2以上3分の2未満なら半額として引き換えられます。
5分の2未満まで減ってしまうと、銀行券としての価値はなく失効という扱いになります。表・裏の両面があることも条件です。
つまり、有効な券種であっても状態次第で全額が戻らないことがあります。年数の問題ではなく、面積の問題だと整理してください。
手元の一枚を時間軸で確かめる手順
判断は順番に進めると迷いません。特別な道具は不要で、定規が1本あれば足ります。
第一に、額面を確認します。1円未満の銭や厘の券であれば、1953年の措置で通用力を失っています。
第二に、日本銀行の有効一覧と照合します。額面ごとのページで肖像と寸法、発行開始日を突き合わせてください。
第三に、一覧に見当たらない場合は3つの措置のどれに該当するかを考えます。5円以上の戦前券であれば、1946年の新円切り替えの対象になった可能性が高いと言えます。
第四に、券面の状態を見ます。破れや欠けがあるなら、残っている面積が3分の2以上かどうかが分かれ目です。
この4段階を通しても判断がつかない場合は、日本銀行の本支店に相談するのが早道です。予約のうえ持ち込めば、法令の基準に沿って判定してもらえます。
作業のときは、券面を明るい場所で広げて寸法を測ってください。額面の数字だけで探すと、同じ額面に複数の様式がある券種で迷います。肖像と寸法を組み合わせると、絞り込みが一気に進みます。
古い紙幣を触るときは、素手の油分や湿気に気をつけたいところです。有効かどうかを確認している段階では、洗ったり折り目を伸ばしたりしないでください。状態を変えると、あとから引換基準の判定が難しくなります。
よくある質問
明治や大正の紙幣は今でも使えますか
券種によって分かれます。日本銀行の有効一覧には、明治22(1889)年や大正5(1916)年に発行が始まった一円券が掲載されています。一方で当時の高額券の多くは1946年の新円切り替えで通用力を失いました。
昭和の千円札や五百円札はどうですか
戦後に発行が始まった券種の多くは有効です。五百円券は岩倉具視の肖像のものが2種類、一覧に掲載されています。手元の一枚が該当するかは、寸法と発行開始日で確かめてください。
新札が出ると旧札はいつまで使えますか
期限は設けられていません。財務省は、現在流通している壱万円券・五千円券・千円券が新しい日本銀行券の発行後も従来どおり通用すると発表しています。交換が必要だという連絡は、詐欺を疑ってください。
銭や厘の紙幣は使えますか
1円未満の通貨は1953年12月31日限りで通用力を失いました。小額通貨の整理及び支払金の端数計算に関する法律による措置です。ただし銭と厘は、いまも利息計算などの計算単位として法律に定義が残っています。
失効した紙幣は日本銀行で引き換えてもらえますか
通用力を失った券種は、引換えの対象になりません。有効かどうかは日本銀行の一覧で確認できます。判断に迷う場合は、持ち込む前に電話で相談しておくと二度手間を避けられます。なお、失効した紙幣であっても、資料としての価値まで失われるわけではありません。
まとめ
銀行券に有効期限はなく、法令上の特別な措置がなければ通用力は続きます。これまでに措置がとられたのは1927年・1946年・1953年の3回だけで、56種類のうち31種類がこのとき失効しました。2024年の改刷は失効の措置ではないため、旧札はそのまま使えます。当社では、有効かどうかの確認方法と収集品としての扱いの違いについてもご説明しています。