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キヤノンの赤レンズとは|Lレンズの赤いラインが示す意味と条件

中古のカメラ売り場や譲り受けた機材の中に、鏡筒へ赤い線が一本入ったレンズを見つけることがあります。この赤い線が何を意味するのか、他のレンズと何が違うのかは、外から眺めているだけでは分かりません。そこでこの記事では、キヤノンの赤レンズと呼ばれるものが公式にはどう位置づけられているのかを、キヤノンの公表資料に沿って整理します。

キヤノンの「赤レンズ」とは|正式にはLレンズ

赤レンズという呼び方は通称です。キヤノンの製品分類としては、Lシリーズ、あるいはLレンズという名前が使われます。

キヤノンはLシリーズについて、画期的な描写性能と優れた操作性・耐環境性・堅牢性を備えたレンズだと説明しています。その証が、鏡筒に入った鮮やかな一本の赤いラインと、Luxuryの頭文字である「L」です。

Lの由来は、キヤノン公式サイトに明記されています。Luxuryの頭文字であり、理想的な光学理論と精密な製造技術の追求を体現した「贅沢な光学設計」を意味する、というのが公式の説明です。

参考:Lレンズの世界 RF LENS WORLD|キヤノン

一方で、なぜその色が赤なのかについては、キヤノン公式サイトで説明を確認できませんでした。赤という色の由来を説明する話はいくつか流布していますが、公式資料に裏付けのない内容はここでは扱いません。公式に確認できるのは、赤いラインがプロフェッショナルの要求に応える性能の証として位置づけられている、という点までです。

なお、製品名に「L」が入っているかどうかも判断材料になります。RF24-70mm F2.8 L IS USMのように、型名の中に「L」が含まれているのがLレンズです。

赤いラインが示すもの|公式が挙げるLレンズの条件

キヤノンは、Lレンズと呼ぶための条件を公式サイトで示しています。単に写りがよいというだけの話ではありません。

第一に、蛍石・研削非球面レンズ・UD/スーパーUDレンズ・大口径高精度非球面レンズといった特殊光学材料を採用し、高い光学性能を実現していることが挙げられています。

第二に、駆動系と操作性、耐環境性と堅牢性の面でプロフェッショナルクラスの水準を満たすこととされています。あわせて、優れた操作性を保ちながら小型・軽量であることも条件に含まれます。

第三に、加工・管理精度から生産技術に至るまで磨き上げられていることが挙げられています。つまり赤いラインは、光学設計だけでなく、機構と製造品質まで含めた基準を満たした印だという整理です。

キヤノンは別のページでも、蛍石やUD/スーパーUDレンズなどの特殊光学材料を採用した高性能レンズとしてLシリーズを紹介しています。その識別特徴として挙げられているのが、鏡筒の鮮やかな一本の赤いラインです。

参考:レンズ共通特長:レンズ交換式カメラ・レンズ|キヤノン

Lレンズに使われる特殊光学素子|蛍石・UD・非球面・BR

Lレンズの条件の中心にあるのが、特殊光学素子です。キヤノンが公式に説明しているものを順に見ていきます。

蛍石

蛍石は、化学記号CaF2で表されるフッ化カルシウムの結晶です。キヤノンは、屈折率や分散性がきわめて低く、赤外線・紫外線に対する透過率がよいという特性を挙げています。この性質により二次色収差が小さくなり、赤・緑・青の焦点がほぼ合致するため、シャープな描写につながるとされています。

キヤノンは1968年に人工蛍石結晶を完成させ、1969年には写真用レンズとして世界初の蛍石採用レンズであるFL-F300mm F5.6を発売しました。

UDレンズ/スーパーUDレンズ

UDはUltra Low Dispersionの略で、低屈折・低分散の光学ガラスです。キヤノンは1970年代後半にUDレンズの開発に成功し、1993年にはスーパーUDレンズを実用化してEF400mm F5.6L USMに初めて採用したと説明しています。スーパーUDレンズは、UDレンズ2枚分に相当し、蛍石とほぼ同等の効果を備えるとされています。

非球面レンズ

球面レンズだけでは、平行光線を理論上完全な一点へ収束させられません。キヤノンは1971年に、世界初の研削非球面レンズを採用したFD55mm F1.2ALを発売しました。1985年にはガラスモールド(GMo)非球面レンズの実用化に成功し、2007年にはレンズの凹面への高精度な非球面加工を実現しています。

BRレンズ

BRはBlue Spectrum Refractive Opticsの略です。青色の短い波長域の光を大きく屈折させる性質を持つBR光学素子を、凹と凸のガラスレンズで挟み合わせた複合レンズとして構成し、色収差を補正します。

参考:テクノロジー Lレンズの世界 RF LENS WORLD|キヤノン

光学素子 キヤノンが説明する役割 公表されている節目
蛍石 屈折率・分散性がきわめて低く、二次色収差を小さくする 1968年に人工結晶が完成、1969年にFL-F300mm F5.6へ採用
UDレンズ 低屈折・低分散で、蛍石と同様の効果を得る 1970年代後半に開発
スーパーUDレンズ UDレンズ2枚分に相当し、蛍石とほぼ同等の効果を備える 1993年にEF400mm F5.6L USMへ初採用
研削非球面レンズ 球面収差を補正し、平行光線の収束精度を高める 1971年にFD55mm F1.2ALへ採用
BRレンズ 青色域の光を大きく屈折させ、色収差を補正する 凹凸のガラスレンズで挟んだ複合構成

コーティングと駆動系|写りと使い勝手を支える技術

赤いラインの内側にあるのは、光学素子だけではありません。表面処理と駆動方式も、Lレンズの条件に含まれる要素です。

コーティングでは、まずスーパースペクトラコーティングがあります。キヤノンは、フレアやゴーストの原因となるレンズ面反射を除去し、耐久性に優れた表面硬度を備えると説明しています。

SWCはSubwavelength Structure Coatingの略です。約200〜400nmの楔状の構造物をレンズ表面に配置し、可視光の波長である約400〜700nmよりも小さな構造で反射を抑えます。蛾の眼の構造を応用した技術だとされています。

ASCはAir Sphere Coatingの略で、二酸化ケイ素と空気を含んだ膜を形成して反射を抑制します。垂直に近い角度で入射する光に対して高い効果を持つ点が特徴です。

フッ素コーティングは、撥油性と撥水性を高めます。レンズ面に付いた油分も、乾いた布だけで素早く拭き取れるとされています。

DSコーティングはDefocus Smoothingの略です。レンズの中心から周辺に向けて透過率を下げることで、ボケの輪郭を柔らかく表現します。RF85mm F1.2 L USM DSに採用されました。

駆動系では、1987年にEF300mm F2.8L USMへ初搭載されたリングUSMが挙げられます。超音波の振動エネルギーで動く方式で、低消費電力かつ起動・停止の応答性に優れると説明されています。近年は、静粛性に優れるSTMがRF10-20mm F4 L IS STMで初めてLレンズに採用されました。VCMは、RF35mm F1.4 L VCMに使われています。

手ブレ補正では、ハイブリッドISが一眼レフ用交換レンズとして世界で初めて角度ブレとシフトブレを同時に補正し、EF100mm F2.8L マクロ IS USMへ初搭載されました。RF100mm F2.8 L MACRO IS USMでは、最大8.0段の補正効果が公表されています。

耐環境性と白い超望遠レンズ|赤いライン以外の見分け方

Lレンズの中には、鏡筒全体が白いものがあります。白は赤いラインの代わりではなく、別の目的による仕上げです。

キヤノンは、1976年のFD600mm F4.5 S.S.C.とFD800mm F5.6 S.S.C.から白い塗装を採用したと説明しています。炎天下で急激な温度上昇にさらされるプロ用レンズに対して、熱を防ぐために塗布されたものです。近年は赤外線反射型顔料を使う遮熱塗料が開発され、EF400mm F2.8L IS III USMとEF600mm F4L IS III USMに初採用されました。

防塵・防滴構造は1999年に超望遠レンズから採用が始まっています。マウント接合部にラバーリングを用い、フォーカスリングなどの可動部も防塵・防滴性の高い構造としているとされています。

ここで注意したいのは、赤いラインが「キヤノンの優れた技術すべての印」ではないという点です。たとえば回折光学素子を使ったDOレンズは、RF600mm F11やRF800mm F11といった製品に密着2層型が採用されていますが、これらの型名に「L」は入っていません。キヤノン独自の技術が使われていても、Lシリーズの条件を満たす製品でなければ赤いラインは付きません。

参考:テクノロジー RFレンズについて RF LENS WORLD|キヤノン

赤レンズの歴史|FDからEF、そしてRFへ

赤いラインの歴史は、フィルム時代までさかのぼります。キヤノンは、1978年にFDシリーズへ「L」の名を持つレンズ群が誕生したと説明しており、最初のLレンズは同年12月のFD300mm F4Lだとしています。

その後、1987年のEOSシステム発表とともにEFマウントへ移り、Lレンズもここで大きく広がりました。EF300mm F2.8L USMへのリングUSM初搭載も、この流れの中にあります。

2018年に登場したRFマウントでは、マウント内径54mm、バックフォーカス20mmという構成が公表されています。キヤノンは、この構成によって光学設計の自由度が大きく高まり、開放F値2の大口径標準ズームであるRF28-70mm F2 L USMのような製品が実現したと説明しています。

現在のRF Lレンズには、RF10-20mm F4 L IS STM・RF24-105mm F2.8 L IS USM Z・RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM・RF1200mm F8 L IS USMなどが並んでいます。ズームから超望遠、特殊用途のRF5.2mm F2.8 L DUAL FISHEYEまで、幅広い焦点距離をカバーしている点が特徴です。

参考:Lレンズの世界 RF L Lens Lineup|キヤノン

公表されている出来事
1968年 人工蛍石結晶が完成
1969年 写真用レンズとして世界初の蛍石採用レンズFL-F300mm F5.6が誕生
1971年 世界初の研削非球面レンズを採用したFD55mm F1.2ALが誕生
1976年 FD600mm F4.5 S.S.C.などで白い塗装を採用
1978年 FDシリーズに「L」の名を持つレンズ群が誕生(FD300mm F4Lは同年12月)
1985年 ガラスモールド非球面レンズを実用化
1987年 EF300mm F2.8L USMにリングUSMを初搭載
1993年 スーパーUDレンズを開発し、EF400mm F5.6L USMへ初採用
1999年 超望遠レンズで防塵・防滴構造の採用が始まる

中古の赤レンズで確認しておきたいこと

Lレンズは長く使われる前提で作られており、フィルム時代のFDやEFの個体が中古で流通しています。手元にある赤レンズを確認するとき、まず見ておきたいのが光学系の状態です。

キヤノンは、カビの発育に温度・湿度・栄養・時間の四つが関わると説明しています。温度は5℃〜35℃前後、栄養はレンズ表面のホコリやゴミにあたります。そのうえで、湿気対策の三つの鉄則を示しています。

  • 湿度の高い場所で使った後は、しっかり乾燥させてから保管する
  • 引き出しや押し入れなど、湿った空気がたまりやすい場所に保管しない
  • 定期的にズームリングなどを動かし、内部にたまった空気を入れ替える

参考:【カビ警報!】湿気からレンズを守る3つの鉄則とは?|キヤノン

キヤノンは、レンズ表面の軽度のカビは落とせても、内部やガラス内部まで根を張ったカビは分解してのクリーニングや部品交換が必要になると説明しています。早い段階であるほど、かかる費用は少なくて済むとされます。自分でレンズを開けるのは避け、点検・クリーニングサービスであるあんしんメンテや、修理の窓口へ相談してください。

参考:あんしんメンテ(キヤノンのカメラ・レンズの点検・クリーニングサービス)|キヤノン

手放すことを考えている場合、確認しておくとよいのは次の点です。前玉と後玉のキズ・内部のカビやくもり・チリの量・絞りの動作・フォーカスリングとズームリングの動き、そしてIS搭載機であれば作動音です。あわせてフードやレンズケース、前後キャップ、元箱の有無も見ておきましょう。

赤いラインそのものは、状態を保証するものではありません。同じLレンズでも、保管の仕方によって状態は大きく変わります。使う予定がないまま湿気の多い場所に置いておくと、カビの条件がそろってしまいます。

カメラ本体とレンズをまとめて整理する場合の考え方は、別記事でも触れています。

よくある質問

赤レンズとLレンズは同じものですか

同じものを指す言い方です。キヤノンの公式な呼称はLシリーズ、またはLレンズで、鏡筒の赤いラインから赤レンズという通称が使われています。型名に「L」が入っているかどうかでも見分けられます。

赤いラインの色に何か由来はありますか

キヤノン公式サイトでは、赤という色の由来についての説明を確認できませんでした。公式に示されているのは、赤いラインがLレンズであることの証であり、プロフェッショナルの要求に応える性能の位置づけを示すという内容までです。

白いレンズと赤いラインは関係がありますか

白い塗装は別の目的によるものです。キヤノンは、炎天下で急激な温度上昇にさらされるプロ用レンズに対し、熱を防ぐために白を塗布したと説明しています。白い超望遠レンズにも赤いラインは入っています。

Lレンズでなければ性能は低いのですか

そうではありません。Lシリーズは特定の条件を満たしたレンズ群であり、それ以外のレンズにもキヤノン独自の技術は使われています。回折光学素子を使うDOレンズのように、型名に「L」が付かない製品に採用されている技術もあります。

古いFDやEFの赤レンズでも売れますか

型式や状態によります。査定では、カビやくもりの有無・絞りやフォーカスの動作・外装の状態・付属品の有無などが確認されます。マウントの種類とレンズ名が分かる写真を用意し、動作の状況とあわせて相談するとよいでしょう。

まとめ

キヤノンの赤レンズとは、鏡筒に赤いラインが入ったLシリーズのことです。キヤノンは「L」をLuxuryの頭文字とし、特殊光学材料の採用・駆動系と操作性・耐環境性と堅牢性・製造精度という条件を挙げています。赤という色の由来は公式資料では確認できませんでした。確認するときは、赤いラインだけでなくカビやくもり、各部の動作も確かめましょう。整理を考えているなら、状態が落ちる前にご相談ください。