千円札のレアなアルファベットとは|記番号の桁数と色で見分ける方法
千円札の記番号を見て、アルファベットが1文字のものと2文字のものがあることに気づいた方もいるのではないでしょうか。この違いは偶然ではなく、記番号の組み合わせを使い切るたびに桁を増やしてきた結果です。この記事では、千円札のアルファベットが何を表しているのか、桁数と色から発行時期をどう読み取るのかを、国立印刷局と日本銀行の公表資料に沿って整理します。
千円札のアルファベットは「記番号」の一部
千円札の表面にあるアルファベットと数字の組み合わせは、「記番号」と呼ばれます。国立印刷局は記番号を「お札の背番号のようなもの」と説明しており、同じ種類のお札にはすべて違う記番号が印刷されています。
記番号は「アルファベット+6桁の数字+アルファベット」という形をとります。アルファベットだけが単独で意味を持つわけではなく、数字と組み合わさってはじめて1枚を特定できる番号になります。
使われるアルファベットは、26文字のうち「I(アイ)」と「O(オー)」を除いた24文字です。数字の「1」や「0」と紛らわしいため除かれています。数字の部分は000001から900000までしか使われず、90万通りです。
つまり、アルファベットは24文字のなかから選ばれています。この前提を押さえておくと、桁数の違いが何を意味するのかが見えてきます。
アルファベットが1桁か2桁かで何が変わるのか
国立印刷局によると、記番号は最初「アルファベット1文字+6桁の数字+アルファベット1文字」でした。発行量が増えて組み合わせを使い切ったため、「アルファベット2文字+6桁の数字+アルファベット1文字」へと桁を増やしています。
そして2024年7月3日に発行が始まった現行の千円券(北里柴三郎)では、頭と末尾にそれぞれ2文字を置く「AA123456BB」型の10桁になりました。日本銀行は、それ以外の現行銀行券については、頭に1〜2文字、末尾に1文字のアルファベットが使われていると説明しています。
参考:「お札に印刷されているアルファベットと数字は何ですか?」|日本銀行
ここから分かるのは、同じ券種のなかでは、頭のアルファベットが1文字のものが先に印刷されているということです。1文字の組み合わせを使い切ったあとに2文字へ移るという順序だからです。
組み合わせの数を計算してみると、差がはっきりします。アルファベットは24文字、数字は90万通りという公表値をもとにすると、次のようになります。
| 記番号の形式 | 例 | 組み合わせ数(計算上) |
|---|---|---|
| 前1文字+数字6桁+後1文字 | A123456B | 24×90万×24=約5億1,840万通り |
| 前2文字+数字6桁+後1文字 | AB123456C | 24×24×90万×24=約124億4,160万通り |
| 前2文字+数字6桁+後2文字 | AA123456BB | 24×24×90万×24×24=2,985億9,840万通り |
いちばん下の数字については、日本銀行が「記番号は2,985億9,840万枚で一巡します」と説明しています。
参考:「お札に印刷されているアルファベットと数字は何ですか?」|日本銀行
前2文字の形式と比べると、前1文字の形式は計算上24分の1しかありません。頭のアルファベットが1桁の千円札が「珍しい」と言われるのは、この組み合わせ数の差が背景にあります。ただし、これはあくまで印刷され得た枚数の上限の話であり、実際に何枚残っているかを示すものではない点には注意が必要です。
記番号の色でわかる千円札の発行時期
千円札は、記番号の色でも発行時期を区別できます。日本銀行は、記番号の組み合わせをすべて使い切ったときなどに色を変えていると説明しており、券種ごとの色と発行開始日を公表しています。
| 千円券(肖像) | 記番号の色 | 発行開始日 |
|---|---|---|
| 聖徳太子(B号) | ― | 1950(昭和25)年1月7日 |
| 伊藤博文(C号) | 黒色 | 1963(昭和38)年11月1日 |
| 伊藤博文(C号) | 青色 | 1976(昭和51)年7月1日 |
| 夏目漱石(D号) | 黒色 | 1984(昭和59)年11月1日 |
| 夏目漱石(D号) | 青色 | 1990(平成2)年11月1日 |
| 夏目漱石(D号) | 褐色 | 1993(平成5)年12月1日 |
| 夏目漱石(D号) | 暗緑色 | 2000(平成12)年4月3日 |
| 野口英世(E号) | 黒色 | 2004(平成16)年11月1日 |
| 野口英世(E号) | 褐色 | 2011(平成23)年7月19日 |
| 野口英世(E号) | 紺色 | 2019(平成31)年3月18日 |
| 北里柴三郎(F号) | 黒色 | 2024(令和6)年7月3日 |
2019年の紺色への変更について、日本銀行は褐色の記号・番号の組み合わせがすべて使用されることになったためと発表しています。あわせて、流通している千円券は従来どおり使用できると案内されています。
参考:「日本銀行券千円券の記号・番号の印刷色変更」|日本銀行
なお、国立印刷局は記番号の色が違う理由として、組み合わせを使い切った場合のほかに、部分改刷による仕様変更を挙げています。色の違いがすべて「使い切り」によるものとは限りません。
色と桁数を合わせて見ると、その千円札がどの時期に印刷された流れに属するのかが、かなり絞り込めます。黒色かつ頭のアルファベットが1文字であれば、その券種のなかでは初期にあたる、という読み方になります。
「AA券」「ZZ券」といった呼び方について
収集の場では、記番号のアルファベットの組み合わせに名前が付けられています。頭と末尾がともにAのものを「AA券」、ともにZのものを「ZZ券」と呼ぶ言い方が広く使われています。
ただし、これらは収集家の間で使われている呼称であり、公的機関が定義したり価値づけをしたりしているものではありません。日本銀行や国立印刷局が、特定のアルファベットの組み合わせに希少性があると公表しているわけではない点は、押さえておく必要があります。
考え方としては、Aは順番の始まり、Zは終わりにあたるため、その組み合わせが割り当てられる範囲が限られる、という説明がされています。実際にどの順序でアルファベットが割り当てられているかは公表されていないため、この記事では推測での断定は避けます。
また、記番号の並びそのもので注目されるものとしては、次のような呼び方があります。アルファベットとは別の切り口です。
| 呼び方 | 記番号の例 | 特徴 |
|---|---|---|
| ゾロ目 | A777777B | 6桁がすべて同じ数字 |
| キリ番 | A100000B | 末尾が0で切りがよい |
| 階段 | A123456B | 数字が順に並ぶ |
| 若番 | A000001B | 数字が小さい |
数字は000001から900000までしか使われないため、999999のような記番号は存在しません。番号の珍しさを考えるときの前提になります。
アルファベット以外に千円札の希少性を左右するもの
アルファベットの桁数や組み合わせだけで、千円札の評価が決まるわけではありません。実際には、次の要素が重なって判断されます。
- 券種:現行の北里柴三郎券は流通量が多く、発行が停止した聖徳太子券や伊藤博文券とは前提が異なります。日本銀行によると、聖徳太子の千円券は1965(昭和40)年1月4日に、伊藤博文の千円券は1986(昭和61)年1月4日に、夏目漱石の千円券は2007(平成19)年4月2日に、それぞれ発行が停止されています。
- 紙の状態:折り目、シワ、汚れ、破れの有無が評価に影響します。未使用に近い状態ほど保たれやすい傾向があります。
- 記番号の並び:ゾロ目やキリ番など、数字の並びが珍しいかどうか。
- エラーの有無:印刷や裁断の不具合によるもの。判別が難しく、専門的な確認が必要です。
発行が停止した券種であっても、日本銀行が有効としている銀行券は現在も使えます。使えることと、収集の対象として評価されることは別の話です。
千円札の価値の目安と確かめ方
千円札の買取価格は、券種・記番号・状態・そのときの需要によって大きく変わります。同じ「アルファベット1桁」でも、現行券と発行停止券とでは扱いがまったく違うため、金額をひとつの目安として示すことは難しいのが実情です。
公的機関が価格を示しているわけではないため、この記事では金額の断定を避けています。実際に確かめる場合は、次の手順が現実的です。
- 記番号の頭のアルファベットが1文字か2文字かを確認する
- 記番号の色(黒・青・褐色・暗緑色・紺色)を確認する
- 肖像から券種を特定し、上の表と照らして発行時期を絞る
- 折り目やシワ、汚れの有無を確認する
- そのうえで、古紙幣を扱う専門店に現物を見てもらう
査定を無料で受け付けている店は多いため、まず現物を見てもらってから判断するのが確実です。複数の店で内容を比べると、判断材料が増えます。
なお、汚れを落とそうとして洗ったり、アイロンをかけて折り目を伸ばしたりするのは避けてください。状態を損ない、かえって評価が下がる原因になります。
よくある質問
千円札のアルファベットが1桁だと価値がありますか
頭のアルファベットが1文字の記番号は、2文字のものより組み合わせ数が計算上少なく、その券種のなかでは先に印刷されたものにあたります。ただし、それだけで額面を超える評価になるとは限りません。券種や状態と合わせて判断されます。
記番号にIとOが使われていないのはなぜですか
数字の「1」や「0」と紛らわしいためです。アルファベット26文字のうち、IとOを除いた24文字が使われます。
記番号の色が違う千円札は偽札ですか
違います。日本銀行は、記番号の色が他と異なっていても、ただちに偽札ということではないと明記しています。組み合わせを使い切ったことなどにより色を変えています。
AA券やZZ券は公式の呼び方ですか
収集家の間で使われている呼び方です。日本銀行や国立印刷局が定義した用語ではなく、公的機関が価値づけをしているものでもありません。
古い千円札は今でも使えますか
日本銀行が有効としている銀行券であれば使えます。聖徳太子、伊藤博文、夏目漱石、野口英世の千円券は、いずれも現在有効な銀行券として日本銀行の資料に掲載されています。
まとめ
千円札のアルファベットは記番号の一部で、IとOを除く24文字が使われています。数字は000001から900000までの90万通りです。
頭のアルファベットが1文字の記番号は、2文字のものへ移る前に使われていた形式で、組み合わせ数は計算上24分の1にとどまります。これが「1桁は珍しい」と言われる根拠です。ただし、印刷され得た上限の話であり、残存枚数を示すものではありません。
記番号の色は発行時期の手がかりになります。千円券では、伊藤博文券が黒色と青色、夏目漱石券が黒色・青色・褐色・暗緑色、野口英世券が黒色・褐色・紺色と記録されています。
アルファベットの桁数と色、そして券種と状態を合わせて見ることで、手元の千円札がどの時期のものかを絞り込めます。そのうえで気になる場合は、古紙幣を扱う専門店に現物を見てもらうとよいでしょう。