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585の刻印の意味とは|K14との関係と、なぜ583.3ではないのか

指輪の内側やネックレスの留め具に「585」という数字を見つけて、これは何を意味するのか、金として価値があるのかと気になっている方もいるのではないでしょうか。585は金の品位を千分率で表した数字で、カラット表示のK14に対応します。この記事では、585という数字が示すものと、14÷24=約58.3%との差の理由、375・750・916との違い、そして585と一緒に刻まれる記号の読み方までを、造幣局と日本ジュエリー協会の資料をもとに整理します。

585の刻印の意味|金58.5%以上を示し、K14に対応する

585は「金が58.5%以上含まれる」ことを示す

585は、金の含有率を千分率(パーミル)で表した数字です。1000分の585、つまり58.5%が金という意味になります。

ここで正確に押さえておきたいのが、「品位」という言葉の定義です。日本ジュエリー協会の表示規定では、純度と品位は次のように区別されています。

  • 純度:貴金属合金中に含まれる該当する貴金属の含有率で、千分率‰(パーミル)で表す
  • 品位:貴金属合金中に含まれる該当する貴金属の最低含有率をいい、元素記号と質量千分率を一体で表す(この場合、千分率を表す‰は表示しない)

参考:「ジュエリーおよび貴金属製品の素材等の表示規定 2023年度改訂版」|一般社団法人日本ジュエリー協会

つまり「585」は「ちょうど58.5%」ではなく、「58.5%以上」を保証する表示ということです。同規定には、JIS規格における品位と純度の関係の例として、Au750は「750‰以上833‰未満」、Au833は「833‰以上916‰未満」と示されています。同じ考え方でAu585は「585‰以上750‰未満」の範囲を指します。

参考:「ジュエリーおよび貴金属製品の素材等の表示規定 2023年度改訂版」|一般社団法人日本ジュエリー協会

なお、金は千分率で表す場合に元素記号を省略できるとされており、「585」だけの刻印も、「Au585」も同じ意味です。表示規定では、元素記号を併記することが望ましいとされています。

参考:「ジュエリーおよび貴金属製品の素材等の表示規定 2023年度改訂版」|一般社団法人日本ジュエリー協会

千分率とカラット(24分率)の対応表

金には、千分率とは別に24分率で表す「カラット」という表示方法があります。純金を24として、金がそのうち何割かを示すもので、「K18」「K14」といった表記がこれにあたります。

JIS H6309:2022にもとづくカラット表示と千分率の対応は次のとおりです。

カラット表示 千分率(品位) 金の割合の目安 K24 999 99.9%以上 K22 916 91.6%以上 K20 833 83.3%以上 K18 750 75%以上 K14 585 58.5%以上 K10 416 41.6%以上 K9 375 37.5%以上 K8 333 33.3%以上

参考:「ジュエリーおよび貴金属製品の素材等の表示規定 2023年度改訂版」|一般社団法人日本ジュエリー協会

この表のとおり、585はK14に対応します。造幣局も、貴金属製品の品位区分を示すページで金の585にK14を対応させています。

参考:「貴金属製品の品位区分と証明記号」|造幣局

表示の順序についても規定があります。日本ジュエリー協会の表示規定では、海外では「18K」のようにKを数値の後ろに置くことがあるものの、原則的にはKを数値の前に置くとされています。「14K」と刻まれた製品を見かけるのは、この海外式の表記によるものと考えられます。

参考:「ジュエリーおよび貴金属製品の素材等の表示規定 2023年度改訂版」|一般社団法人日本ジュエリー協会

なぜ583.3ではなく585なのか

ここで疑問に思う方もいるかもしれません。14÷24を計算すると0.58333…、千分率にすれば583.3‰です。それなら「583」になりそうなものを、なぜ585と表示するのでしょうか。

答えは、前述した「品位は最低含有率を示す」というルールにあります。品位はマイナス側の公差を認めない下限値方式で決められているため、規格上の数値を583.3‰より低くすることはできません。583.3‰よりわずかに高い585‰を規格値として定めることで、「K14と表示された製品は、理論上の14/24と同等以上の金を含む」ことが担保される仕組みになっています。

参考:「ジュエリーおよび貴金属製品の素材等の表示規定 2023年度改訂版」|一般社団法人日本ジュエリー協会

この考え方は、ほかのカラットと比べてみるとよく分かります。K18は18÷24=750‰でちょうど割り切れ、K9は9÷24=375‰でこちらも割り切れます。割り切れないのはK14とK10で、K10については規格ごとに数値が分かれています。ISO 9202:2019では417、JIS H6309:2022では416と定められており、切り上げ側と切り捨て側で扱いが異なります。

参考:「ジュエリーおよび貴金属製品の素材等の表示規定 2023年度改訂版」|一般社団法人日本ジュエリー協会

なお、「583」という数字を14金の刻印として紹介している情報もありますが、日本ジュエリー協会の表示規定に掲載されているISO 9202、JIS H6309、造幣局の検定品位区分、CIBJOの標準品位のいずれの一覧にも583は含まれていません。現行の規格上の品位区分ではない、という点は押さえておくとよいでしょう。

参考:「ジュエリーおよび貴金属製品の素材等の表示規定 2023年度改訂版」|一般社団法人日本ジュエリー協会

585は国内外の主要な規格に共通する品位

585という数字は、特定の国だけで通用するものではありません。日本ジュエリー協会の表示規定に掲載された4つの品位区分規格を並べると、いずれにも585が入っています。

規格・制度 金の品位区分 造幣局の検定品位区分 999/916/750/585/416/375 JIS H6309:2022 999/990/916/833/750/585/416/375/333 ISO 9202:2019 999/990/916/750/585/417/375/333 CIBJOの標準品位 999/986/916/750/585/416/375/333

参考:「ジュエリーおよび貴金属製品の素材等の表示規定 2023年度改訂版」|一般社団法人日本ジュエリー協会

585は、造幣局が品位証明を行う金の6区分の1つでもあります。造幣局によると、品位証明は「白金製品については4区分、金製品については6区分、銀製品については5区分」で実施されています。

参考:「貴金属製品の品位区分と証明記号」|造幣局

海外に目を向けても事情は同じです。英国のロンドン検定所は、国際的なホールマーク条約で認められる金の品位として375・585・750・916・999を挙げています。585は、国境をまたいで通用する標準的な品位といえます。

参考:「UK Hallmarks」|Assay Office London

375・750・916との違い

585の位置づけを掴むには、前後の品位と並べて見るのが分かりやすいでしょう。

千分率 カラット 金の割合 性質の傾向
375 K9 37.5%以上 金の割合が最も低い。硬く、地金としての評価は小さい
585 K14 58.5%以上 金と割金がほぼ6対4。硬さと金らしさのバランス型
750 K18 75%以上 ジュエリーで最も広く使われる品位
916 K22 91.6%以上 金の割合が高く、色みが濃い。柔らかい
999 K24 99.9%以上 純金。地金やインゴットに用いられる

参考:「ジュエリーおよび貴金属製品の素材等の表示規定 2023年度改訂版」|一般社団法人日本ジュエリー協会

金の割合が高いほど素材としての価値は大きくなりますが、そのぶん柔らかくなります。逆に585や375は割金の比率が高く、硬さが得られます。どちらが優れているという話ではなく、用途によって使い分けられていると捉えるのが実際に近いといえます。

日本ジュエリー協会は、金の主な品位区分としてAu750(K18)とAu585(K14)が主流であると説明しています。585は決して例外的な品位ではありません。

参考:「貴金属について」|一般社団法人日本ジュエリー協会

なお、K24について「金100%」と説明されることがありますが、これも正確ではありません。表示規定では「貴金属の純度表示には1000‰を用いてはならない」と定められており、単一金属の1000‰(100%)は化学的・理論的に存在しないため、景品表示法によれば不当な表示になるとされています。999‰以上の金は「Au999」と表示し、「純金」と呼ぶことができます。

参考:「ジュエリーおよび貴金属製品の素材等の表示規定 2023年度改訂版」|一般社団法人日本ジュエリー協会

585と一緒に刻まれる記号の読み方

585の前後には、アルファベットが添えられていることがあります。この記号によって意味が大きく変わるため、数字だけでなく前後の文字まで読み取ることが大切です。

色を示す記号(WG・YG・PG・GRG)

日本ジュエリー協会の表示規定では、カラーゴールドの色を強調して表示する場合の記号が次のように定められています。

金合金 記号 割金の例 表示の例 ホワイトゴールド WG 主にパラジウム等を割金とした白色の金合金 K14WG/Au585WG イエローゴールド YG 割金の銀銅比率が4対6〜6対4程度の黄色みの金合金 K18YG/Au750YG ピンクゴールド PG 割金の銅比率が高い、やや赤みのある金合金 K18PG/Au750PG グリーンゴールド GRG 割金の銀比率が高い、青みのある金合金 K18GRG/Au750GRG

参考:「ジュエリーおよび貴金属製品の素材等の表示規定 2023年度改訂版」|一般社団法人日本ジュエリー協会

これらの記号が付いていても、金の含有率は585のままです。色が違うのは割金の種類によるもので、品位そのものは変わりません。

なお同規定では、カラーゴールド名は地金本体の色で称するものとされ、表面のめっきや塗装の色でカラーゴールド名を名乗ることはできないと定められています。

参考:「ジュエリーおよび貴金属製品の素材等の表示規定 2023年度改訂版」|一般社団法人日本ジュエリー協会

金無垢ではないことを示す記号(GP・GF・RG)

注意が必要なのが、585にGP・GF・RGといった記号が付いている場合です。これらは金無垢ではなく、表面に金の層があることを示します。

  • GP(Gold Plated):金めっき。表示規定ではめっきの表示記号として定められ、厚みはμmで記号の後に付す
  • GF(Gold Filled):金張りのうち、張り合わせた金合金の質量比が20分の1以上のもの
  • RG(Rolled Gold):金張りのうち、張り合わせた金合金の質量比が20分の1未満のもの

参考:「ジュエリーおよび貴金属製品の素材等の表示規定 2023年度改訂版」|一般社団法人日本ジュエリー協会

同規定には、「黄銅の台地金に質量比30分の1の金585の板を張った素材」の表示例として「Au585RG」が挙げられています。585という数字が入っていても、GPやGF、RGが付いていれば、その585は表面の層に使われている金の品位を指しているということです。金無垢の585とは価値の考え方が異なります。

参考:「ジュエリーおよび貴金属製品の素材等の表示規定 2023年度改訂版」|一般社団法人日本ジュエリー協会

また、金張りの数値は厚みではなく材料の質量比を表すという点も、同規定に明記されています。

参考:「ジュエリーおよび貴金属製品の素材等の表示規定 2023年度改訂版」|一般社団法人日本ジュエリー協会

造幣局のホールマークと、刻印がない場合の考え方

数字ではなく、日の丸をかたどった小さな刻印が打たれている製品もあります。これが造幣局のホールマーク(品位証明記号)です。

造幣局は公的な第三者として、貴金属製品の製造・販売事業者からの依頼に応じて品位試験を行い、合格した製品に証明記号を打刻しています。証明記号は、造幣局の証明であることを示す日の丸と、1000分率で品位を表すひし形の中の数字、金属の種類を示す記号で構成されます。

参考:「貴金属製品の品位証明」|造幣局

ここで押さえておきたいのが、この制度が任意だという点です。造幣局は「このマークは任意の制度として設けられています。そのため、市販されている貴金属製品にはマークのない製品もあります」と案内しています。ホールマークがないからといって、品位が偽られているという意味にはなりません。

参考:「貴金属製品の品位証明」|造幣局

一方、英国では扱いが異なります。英国政府によると、英国内で販売され金・銀・プラチナ・パラジウム製と表示される品物は、一定の重量を超えるものについて法的に認められたホールマークを持たなければならないとされ、根拠法はHallmarking Act 1973です。重量の免除基準は金が1g未満、銀が7.78g未満、プラチナが0.5g未満、パラジウムが1g未満と定められています。海外製の製品に刻印が多く入っているのは、こうした制度の違いが背景にあると考えられます。

参考:「Hallmarking: practical guidance – summary」|GOV.UK

なお、日本ジュエリー協会の表示規定では、金およびプラチナ製品で造幣局品位証明刻印のある製品は、貴金属の種類および品位の表示を省略できるとされています。また、アンティークジュエリーや歴史的なジュエリー、ナゲットを用いたジュエリーには本体に品位が刻印されていないものがあるとも記されています。刻印が見当たらないケースにはいくつかの理由があるということです。

参考:「ジュエリーおよび貴金属製品の素材等の表示規定 2023年度改訂版」|一般社団法人日本ジュエリー協会

585の刻印がある製品を手放すときの見方

585の製品を売却する場合、評価は大きく2つの視点で行われます。

1つは素材としての評価です。金の含有率58.5%以上という品位と、製品の重量、そして査定時点の金相場をもとに算出されるのが基本です。金の取引価格は日々変動するため、同じ品物でも時期によって金額は変わります。相場はあくまで目安として捉えておくとよいでしょう。

もう1つは製品としての評価です。ブランド、デザイン、宝石の有無、状態、保証書や箱といった付属品の有無などが見られます。ブランドジュエリーであれば、素材の重さ以上に製品として評価されることもあります。

査定に出す前に自分で確認できるのは、刻印の内容です。585の前後にGPやGF、RGが付いていないか、WGなどの色の記号があるか、造幣局のホールマークが打たれているかを見ておくと、査定の説明を理解しやすくなります。刻印が小さくて読みにくい場合は、ルーペを使うと確認しやすくなります。

なお、刻印を出そうとして研磨剤で強く磨くのは避けたほうが無難です。刻印そのものを削ってしまうことがあります。判断がつかない場合は、貴金属の査定に対応した業者に相談してみてはいかがでしょうか。

よくある質問

585は14金と同じものですか。

同じものを指します。585は千分率による品位表示、K14は24分率によるカラット表示で、JIS H6309:2022の対応表では585とK14が対応づけられています。造幣局の品位区分でも、585にK14が対応しています。

参考:「貴金属製品の品位区分と証明記号」|造幣局

585と583はどちらが正しいのですか。

現行の規格に載っているのは585です。日本ジュエリー協会の表示規定に掲載されたISO 9202、JIS H6309、造幣局の検定品位区分、CIBJOの標準品位のいずれにも583は含まれていません。583は14÷24=583.3‰を切り捨てた数値ですが、品位が最低含有率を示すという原則に照らすと、規格値としては採用しにくい数字といえます。

参考:「ジュエリーおよび貴金属製品の素材等の表示規定 2023年度改訂版」|一般社団法人日本ジュエリー協会

585の残りの41.5%は何ですか。

金以外の金属で、割金(わりがね)と呼ばれます。日本ジュエリー協会の表示規定では、ホワイトゴールドは主にパラジウム等、イエローゴールドは銀と銅、ピンクゴールドは銅の比率が高い割金が使われると示されています。具体的な配合はメーカーによって異なり、刻印だけでは分かりません。

参考:「ジュエリーおよび貴金属製品の素材等の表示規定 2023年度改訂版」|一般社団法人日本ジュエリー協会

「585 GF」と刻印があります。これは金製品ですか。

金無垢ではありません。GFは金張りを示す記号で、表示規定では張り合わせた金合金の質量比が20分の1以上の素材と定義されています。この場合の585は、張り合わせた金の層の品位を表しています。金無垢の585とは評価の考え方が異なります。

参考:「ジュエリーおよび貴金属製品の素材等の表示規定 2023年度改訂版」|一般社団法人日本ジュエリー協会

585の刻印があるのに、日の丸のマークがありません。偽物でしょうか。

そうとは限りません。造幣局の品位証明は任意の制度で、市販されている貴金属製品にはマークのない製品もあると造幣局自身が案内しています。ホールマークの有無だけで真贋を判断することはできません。

参考:「貴金属製品の品位証明」|造幣局

585の製品が本物かどうか、自分で確かめられますか。

見た目や磁石だけで確実に判定するのは難しいのが実際のところです。専門業者では比重測定や蛍光X線分析といった機器を用いて素材を調べます。傷をつけたり削ったりすると価値を損なうおそれがあるため、判断に迷う場合はそのままの状態で相談するのが安心です。

まとめ

585の刻印は、金の含有率が58.5%以上であることを示す品位表示で、カラット表示のK14に対応します。品位は「最低含有率」を示すという定義があるため、14÷24=583.3‰を切り上げた585が規格値として採用されています。585は造幣局の検定品位区分、JIS H6309、ISO 9202、CIBJOのいずれにも含まれる標準的な品位で、海外でも通用します。一方、585にGP・GF・RGが付いている場合は金無垢ではなく表面の層を指すため、数字だけでなく前後の記号まで読み取ることが大切です。刻印を確認したうえで判断に迷うようであれば、貴金属の査定に対応した専門業者に相談してみてはいかがでしょうか。