金発掘の仕組みと現状|日本の金鉱山・世界の産出量・都市鉱山まで
金はどこで、どのように掘り出されているのか。日本にも金鉱山は残っているのか。そして、あとどれくらい掘れるのか。金の価格が話題になるたび、こうした疑問を持つ方もいるのではないでしょうか。この記事では、金がどこにあってどう取り出されるのかという仕組みから、日本で唯一稼働している金鉱山の実像、世界の産出量と埋蔵量、そして「都市鉱山」と呼ばれるもうひとつの供給源までを、公的機関や鉱山会社が公表している資料をもとに整理します。
金はどこにあり、どう探し出されているのか
「金発掘」と「金採掘」|まずは言葉の整理から
金を掘り出すことを指す言葉として、「金発掘」と「金採掘」の両方が使われています。日常的にはどちらも同じ意味で通じますが、鉱業の分野で使われるのは「採掘」のほうです。
鉱山の仕事は、大きく3つの段階に分けて語られます。ひとつめが、金がありそうな場所を探して確かめる「探鉱」。ふたつめが、鉱石を実際に掘り出す「採掘」。そして掘り出した鉱石から金属を取り出す「製錬」です。「金を発掘する」という言葉が思い浮かべさせるイメージは、このうち探鉱と採掘の両方にまたがっているといえるでしょう。
このうち探鉱がどれだけ活発なのかは、投資額から見て取れます。エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)がまとめた2025年の報告によると、2024年の金の探鉱予算は55.5億US$で、世界全体の探鉱予算の45%を占め、鉱種別で最も多くなっています。試掘孔数でも金は26,453孔と全体の61%を占めており、金は今も世界で最も熱心に探されている金属だといえます。
参考:「2025年世界の探鉱動向 ―PDAC Special Edition―」|JOGMEC
山の金と川の金|存在の仕方で採り方が変わる
金の採取方法は、金がどのような形で存在しているかによって変わります。大きく分けると、岩盤の中に鉱脈として存在するものと、川の砂の中に粒として存在するものがあります。
前者は「山金(やまきん)」と呼ばれ、地下の岩盤に走る金鉱脈を掘り進めて採掘します。後者は「川金」あるいは「砂金」と呼ばれ、鉱脈が長い年月をかけて風化・浸食され、川に流されて堆積したものです。砂金採りが川辺で行われるのは、このためです。
山金の鉱脈は、火山活動と深い関係があります。地下深くの熱水に溶け込んだ金が、岩の割れ目を上昇する過程で温度や圧力が下がり、そこで析出して鉱脈をつくると考えられています。日本のように火山が多い地域に金鉱脈が見られるのは、こうした成り立ちによるものです。
実際、日本で稼働している菱刈鉱山では、住友金属鉱山によると鉱床が今からおよそ100万年前にできたと考えられており、坑内には65℃の温泉水を伴うと説明されています。金鉱脈と地熱・温泉が同じ地質のなりたちの上にあることが、具体的な数字として示されている例です。
金鉱石から金が取り出されるまで
鉱脈を見つけても、そのまま金の塊が出てくるわけではありません。鉱石の中にごくわずかに含まれる金を、いくつもの工程を経て取り出していきます。
住友金属鉱山が公表している菱刈鉱山の作業内容を見ると、採掘の実際が具体的に分かります。同社によると、坑内の切羽(きりは)では深さ1.8〜3.5メートルの孔を40〜50個開け、1〜2キログラムの含水爆薬を用いて発破を行い、鉱石を崩して運び出します。坑道の総延長は100キロメートル以上に達するとされています。
こうして運び出された鉱石は、破砕・選鉱を経て製錬所へ送られ、化学的な処理によって金が取り出されます。最終的に精製された金の純度は、住友金属鉱山の説明では99.99%とされています。
なお、精製された金がジュエリーなどの製品になったあと、その純度を公的に裏づける仕組みが造幣局のホールマーク(品位証明)です。造幣局は第三者として品位試験を行い、合格した製品に証明記号を打刻しています。金の品位区分は999・916・750・585・416・375の6区分で、それぞれK24・K22・K18・K14・K10・K9に対応します。掘り出された金が製品として手元に届くまでの、最後の確認工程にあたるものといえます。
日本で稼働する金鉱山|鹿児島県の菱刈鉱山
日本国内で本格的な操業を続けている金鉱山として知られているのが、鹿児島県北部にある菱刈鉱山です。住友金属鉱山が運営しています。
この鉱山が国際的にも注目されてきた理由は、鉱石の品位の高さにあります。住友金属鉱山によると、菱刈鉱山の鉱石には1トンあたり平均で約20グラムの金が含まれています。同社は、世界の主要な金鉱山の平均が1トンあたり3〜5グラムであると説明しており、菱刈鉱山はその4倍から6倍にあたる計算になります。
| 項目 | 菱刈鉱山 | 世界の主要金鉱山の平均 | 鉱石1トンあたりの金 | 約20グラム | 3〜5グラム |
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操業の歩みも公表されています。住友金属鉱山の菱刈鉱山採用サイトによると、1983年に開坑式が行われ、1985年に出鉱を開始しました。1997年には総産金量83.1トンで日本一を達成し、1999年に累計産金量100トン、2012年に累計200トンに到達しています。同サイトでは、約40年間の操業で265トンを超える金を産出したこと、比較として佐渡金山が約400年間の操業で約83トンだったことにも触れられています。
参考:「事業案内」|住友金属鉱山株式会社 菱刈鉱山 採用サイト
日本にはかつて佐渡金山(新潟県)や鴻之舞鉱山(北海道)など多くの金山がありましたが、現在も本格的に金を産出している鉱山は限られています。菱刈鉱山については「山命100年」を目指した計画的な開発が進められていると説明されています。
参考:「会社概要」|住友金属鉱山株式会社 菱刈鉱山 採用サイト
なお、菱刈鉱山の年間産出量や残存埋蔵量については、公式に公表された数値を確認できませんでした。こうした数字を紹介している情報を見かけることもありますが、出典が示されていない場合は慎重に扱うのが無難です。
世界ではどれだけの金が掘られてきたのか
視野を世界に広げると、金の生産は今も拡大しています。金の国際的な調査機関であるワールド・ゴールド・カウンシルによると、2025年の鉱山生産量は3,671.6トンで、前年比1%増となり過去最高を記録しました。従来の最高記録は2018年の3,663トンでした。同年のリサイクルによる供給は1,404.3トン、総供給量は5,002.3トンとされています。
参考:「Gold Demand Trends: Q4 and Full Year 2025 – Supply」|World Gold Council
では、人類はこれまでに合計でどれだけの金を掘り出してきたのでしょうか。同機関のデータページでは、2025年末時点で採掘された金の総量は220,700トンとされています。これをすべて溶かして立方体にすると、一辺が約22.5メートルほどにしかならないと説明されています。東京都心のビルでいえば、7〜8階建てほどの大きさです。人類の歴史を通じて掘り集めた金の総量が、その程度に収まるという点に、金の希少さがよく表れています。
参考:「How Much Gold Has Been Mined?」|World Gold Council
同ページでは、採掘済みの金の約3分の2は1950年以降に採掘されたとも説明されています。金の採掘の大部分は、実は近代以降の出来事だということです。
参考:「How Much Gold Has Been Mined?」|World Gold Council
金は枯渇するのか|埋蔵量と資源量の見方
「金はあと何年で掘り尽くされるのか」という話題をよく目にします。ここは数字の意味を分けて考える必要があります。
ワールド・ゴールド・カウンシルのデータページによると、地下に残る埋蔵量(Reserves)は約61,019トン、資源量(Resources)は約114,439トンとされています。同ページには、米国地質調査所(USGS)による埋蔵量の推計として約66,000トンという数字も併記されています。
参考:「How Much Gold Has Been Mined?」|World Gold Council
ここで注意したいのが、機関や集計時点によって数値が異なる点です。同じワールド・ゴールド・カウンシルでも、2026年3月に公開された解説記事では、2025年末の地上在庫を219,891トン、確認埋蔵量を54,770トン(Metals Focus)、USGSの推計を約64,000トン、資源量を132,110トンとしています。金の総量に関する数字は、集計の主体や基準によって幅が出るものだと理解しておくとよいでしょう。
参考:「You asked, we answered: Are we running out of gold?」|World Gold Council
数字を並べると、出典による幅が見て取れます。
| 項目 | データページの値 | 2026年3月の解説記事の値 | 採掘済みの総量(2025年末) | 220,700トン | 219,891トン | 埋蔵量(Reserves) | 約61,019トン | 54,770トン(Metals Focus) | USGSによる埋蔵量推計 | 約66,000トン | 約64,000トン | 資源量(Resources) | 約114,439トン | 132,110トン |
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参考:「How Much Gold Has Been Mined?」|World Gold Council
同記事では、埋蔵量を年間生産量で割ると約15年という計算になるものの、これはよくある誤解であるとして、埋蔵量の推計は数十年にわたって比較的安定して推移してきたと解説されています。埋蔵量とは「現在の技術と価格で採算が取れる範囲」を示すものであり、探鉱が進んだり金価格が上がったりすれば、その範囲自体が広がるためです。「あと何年」という数字は、そのまま枯渇までの年数を意味するものではないといえます。
参考:「You asked, we answered: Are we running out of gold?」|World Gold Council
もうひとつの金脈「都市鉱山」
地中から掘る以外にも、金の供給源があります。使用済みの電子機器などに含まれる金属を資源とみなす「都市鉱山」という考え方です。
物質・材料研究機構(NIMS)は2008年1月11日、日本の都市鉱山の蓄積量を推計した結果を発表しました。それによると、日本国内に蓄積された金は約6,800トンで、世界の現有埋蔵量42,000トンに対して約16%にあたるとされています。銀は60,000トンで22%、インジウムは61%、錫は11%、タンタルは10%という推計も示されました。
参考:「わが国の都市鉱山は世界有数の資源国に匹敵」|物質・材料研究機構(NIMS)
この推計は、産業連関表を用いて、部品や製品を通じて輸出される素材を差し引いて算定されたものです。なお、これは2008年時点の発表であり、その後の公的な更新値は確認できませんでした。現在も広く引用されている数字ですが、発表年を添えて捉えておくのが正確といえます。
参考:「わが国の都市鉱山は世界有数の資源国に匹敵」|物質・材料研究機構(NIMS)
都市鉱山を実際に回収する仕組みとしては、小型家電リサイクル法にもとづく回収があります。環境省が2022年8月23日に公表した資料によると、令和2年度の使用済小型家電の総回収量は102,489トンで、前年度比4%増、法施行以来最多となりました。1人1年あたりの回収量は532グラム、金属の再資源化量は52,222トンとされています。国は「令和5年度までに1年あたり14万トン、1人1年あたり約1キログラム」という目標を掲げています。
参考:「令和2年度における小型家電リサイクル法に基づくリサイクルの実施状況等について」|環境省
なお、この報道発表では金属の合計量は示されていますが、金・銀・銅といった金属種別の内訳は記載されていません。
金の供給に占めるリサイクルの割合は小さくありません。前述のとおり、2025年の総供給量5,002.3トンのうち1,404.3トンがリサイクルによるものでした。手元で眠っている貴金属製品も、この流れの一部にあたります。
参考:「Gold Demand Trends: Q4 and Full Year 2025 – Supply」|World Gold Council
個人で金を発掘することはできるのか
自分で金を掘ってみたいと考える方もいるかもしれませんが、実際には制約があります。
まず、土地や河川には所有者や管理者が存在します。他人の土地や管理された河川を、許可なく掘り返したり土砂を持ち出したりすることはできません。加えて、鉱物の採掘は法律にもとづく手続きが必要とされる分野です。趣味の範囲で自由に掘り出せるものではない、と考えておくのが実際に近いといえます。
現実的な方法としては、各地にある砂金採り体験施設を利用するのが一般的です。かつて金山があった地域を中心に、体験用の施設が運営されています。装備も貸し出され、採れた砂金を持ち帰れるところもあります。ルールの整った場所で楽しむのが安心です。
よくある質問
日本にはまだ金鉱山がありますか。
本格的な操業を続けている金鉱山として、鹿児島県北部の菱刈鉱山があります。住友金属鉱山が運営しており、1985年に出鉱を開始しました。鉱石1トンあたり平均約20グラムという高い品位が特徴です。
これまでに掘られた金は、どれくらいの量ですか。
ワールド・ゴールド・カウンシルによると、2025年末時点で220,700トンとされています。すべてを立方体にすると一辺が約22.5メートルほどになると説明されています。ただし同機関の別の解説記事では219,891トンとされており、集計時点や基準によって数値には幅があります。
参考:「How Much Gold Has Been Mined?」|World Gold Council
金はあと何年で枯渇しますか。
年数を断定することはできません。ワールド・ゴールド・カウンシルは、埋蔵量を年間生産量で割ると約15年という計算になるものの、これは誤解を招く見方であり、埋蔵量の推計は数十年にわたり比較的安定して推移してきたと解説しています。埋蔵量は現在の技術と価格で採算が取れる範囲を指すため、条件が変われば範囲も変わります。
参考:「You asked, we answered: Are we running out of gold?」|World Gold Council
都市鉱山にはどれくらいの金がありますか。
物質・材料研究機構が2008年1月11日に発表した推計では、日本国内に蓄積された金は約6,800トンで、当時の世界の現有埋蔵量の約16%にあたるとされています。2008年時点の推計である点に留意が必要です。
参考:「わが国の都市鉱山は世界有数の資源国に匹敵」|物質・材料研究機構(NIMS)
砂金採りは誰でもできますか。
土地や河川には所有者・管理者がいるため、どこでも自由に採れるわけではありません。各地にある砂金採り体験施設を利用するのが一般的な方法です。
家にある古い金製品も資源になりますか。
なります。ワールド・ゴールド・カウンシルの集計では、2025年の金の総供給量5,002.3トンのうち1,404.3トンがリサイクルによる供給でした。使わなくなった貴金属製品も、こうした循環の一部です。手放す際は、貴金属の査定に対応した専門業者に相談するとよいでしょう。買取価格は品位・重量とその時点の相場によって変わるため、金額はあくまで目安として捉えておくことをおすすめします。
参考:「Gold Demand Trends: Q4 and Full Year 2025 – Supply」|World Gold Council
まとめ
金の発掘は、探鉱・採掘・製錬という工程を経て行われます。JOGMECの報告によれば、2024年の探鉱予算の45%が金に向けられており、金は今なお世界で最も探されている金属です。国内では鹿児島県の菱刈鉱山が、鉱石1トンあたり約20グラムという世界平均を大きく上回る品位で操業を続けています。世界の鉱山生産量は2025年に3,671.6トンと過去最高を記録した一方、これまでに掘られた金の総量は一辺22.5メートルほどの立方体に収まる量にとどまります。さらに近年は、都市鉱山と呼ばれる使用済み製品からの回収も供給の一角を占めています。手元に使わなくなった金製品があれば、その循環に加わる選択肢もあります。手放すか迷うときは、刻印を確認したうえで専門業者の査定を受けてみてはいかがでしょうか。