金の埋蔵量世界一は日本なのか|都市鉱山を解説
「金の埋蔵量が世界一なのは日本」という話を見聞きして、本当なのか気になっている方もいるのではないでしょうか。結論からいうと、これは地下の天然鉱床の話ではなく、使用済みの電子機器などに蓄えられた金を指す「都市鉱山」の話です。この記事では、この説がどこから来たのかを公的機関の推計をもとに整理し、天然の埋蔵量との違いまで確認します。
「金の埋蔵量世界一は日本」といわれる背景
「金の埋蔵量世界一は日本」という説の元になっているのは、国立研究開発法人物質・材料研究機構(NIMS)が2008年に公表した推計です。この推計では、日本国内に蓄えられた金の量が約6,800トンとされ、当時の世界の現有埋蔵量42,000トンの約16%に相当すると示されました。
参考:「わが国の都市鉱山は世界有数の資源国に匹敵」|物質・材料研究機構(NIMS)プレスリリース
ここで押さえておきたいのは、この6,800トンが地下の金鉱山から掘り出せる量ではない点です。使用済みの家電や電子機器などの中に含まれ、社会にたまっている金を積み上げた数字です。こうした蓄積を「都市鉱山」と呼びます。
NIMSはこの推計を「わが国の都市鉱山は世界有数の資源国に匹敵する規模」と表現しました。金以外にも、銀が世界の約22%、インジウムが約61%など、世界の埋蔵量の1割を超える金属が多数あるとされています。天然資源が乏しいとされてきた日本が、使用済み製品という形では大きな量をため込んでいる、という内容です。
参考:「わが国の都市鉱山は世界有数の資源国に匹敵」|物質・材料研究機構(NIMS)プレスリリース
つまり「埋蔵量世界一」という言葉は、天然の地下資源ではなく、この都市鉱山の蓄積量を指して使われているものです。次からは、都市鉱山の中身と数値を順に見ていきます。
都市鉱山とは、使用済み製品にたまった金属資源
都市鉱山とは、使用済みとなった家電や携帯電話、パソコンなどの中に含まれ、社会に蓄積された金属資源を指す言葉です。地下の鉱床になぞらえて、都市そのものを鉱山と見立てた呼び方です。環境省の白書でも、この蓄積を「地上資源」として扱っています。
参考:環境省「平成24年版 環境・循環型社会・生物多様性白書」第1部第4章第3節 我が国に眠る地上資源の発掘・活用
携帯電話やスマートフォン、パソコンの基板には、電気を通しやすくさびにくい金が、配線やメッキとして少量使われています。ひとつあたりの量はわずかですが、国内で大量に使われ、買い替えられていくため、社会全体では相当な量になります。
天然の鉱山と違うのは、金属がすでに製品の形に加工されている点です。掘削は要りませんが、回収と分別、そこから金属を取り出す工程が必要になります。使われずに家庭で眠っている製品も、この蓄積の一部と位置づけられています。
参考:環境省「平成24年版 環境・循環型社会・生物多様性白書」第1部第4章第3節 我が国に眠る地上資源の発掘・活用
日本の都市鉱山に眠る金属の量
NIMSと環境省の資料では、日本の都市鉱山に蓄積された主な金属の量と、それが世界の現有埋蔵量に占める割合が示されています。金だけでなく、銀やレアメタルでも高い割合を占めています。
参考:環境省「平成24年版 環境・循環型社会・生物多様性白書」我が国に眠る地上資源の発掘・活用(NIMS推計)
| 金属 | 日本の蓄積量 | 世界の現有埋蔵量に占める割合 |
|---|---|---|
| 金 | 約6,800トン | 16.36% |
| 銀 | 約6万トン | 22.42% |
| 銅 | 約3,800万トン | 8.06% |
| 鉄 | 約12億トン | 1.62% |
| タンタル | 約4,400トン | 10.41% |
| リチウム | 約15万トン | 3.83% |
参考:環境省「平成24年版 環境・循環型社会・生物多様性白書」我が国に眠る地上資源の発掘・活用(NIMS推計)
金は世界の現有埋蔵量の約16%にあたる量が国内にたまっているとされ、銀は約22%とさらに高い割合です。レアメタルであるタンタルも約10%を占めています。これらの数値は、日本の都市鉱山が海外の大きな鉱山に匹敵するポテンシャルを持つ、という白書の評価につながっています。
参考:環境省「平成24年版 環境・循環型社会・生物多様性白書」第1部第4章第3節 我が国に眠る地上資源の発掘・活用
なお、この割合は2008年時点の世界の埋蔵量をもとに算出されたものです。世界の埋蔵量はその後の探査などで変わっていくため、割合の数字は時点によって前後する点は補っておきます。
天然の金の埋蔵量では日本は世界一ではない
一方で、地下に眠る天然の金鉱床という意味での埋蔵量を見ると、日本は世界の上位には入りません。ここが「埋蔵量世界一」という言葉の受け取り方で誤解が生じやすいところです。
米国地質調査所(USGS)の2024年の資料によると、天然の金の埋蔵量は世界全体で約59,000トンと推計されています。国別ではオーストラリアが最も多く、以下ロシア、南アフリカなどが続きます。
参考:U.S. Geological Survey, Mineral Commodity Summaries 2024, Gold
| 国 | 天然の金の埋蔵量(2024年) |
|---|---|
| オーストラリア | 12,000トン |
| ロシア | 11,100トン |
| 南アフリカ | 5,000トン |
| 米国 | 3,000トン |
| 中国 | 3,000トン |
参考:U.S. Geological Survey, Mineral Commodity Summaries 2024, Gold
日本は、この国別の一覧に単独では挙がっていません。天然の金鉱山という点では、日本の埋蔵量は世界の主要国に比べて小さいのが実際のところです。したがって「天然の埋蔵量で日本が世界一」というのは、事実とは異なります。
参考:U.S. Geological Survey, Mineral Commodity Summaries 2024, Gold
「世界一」と語られるのは、あくまで使用済み製品にたまった都市鉱山の話です。天然埋蔵量と都市鉱山は別のものとして分けて捉えると、この説の中身が整理できます。
小型電子機器に含まれる金の量と価値
都市鉱山は数字の上の話にとどまりません。毎年、使用済みとなって廃棄される小型電子機器にも、まとまった量の金属が含まれています。
参考:環境省「平成24年版 環境・循環型社会・生物多様性白書」第1部第4章第3節 我が国に眠る地上資源の発掘・活用
環境省の推計では、1年間で使用済みとなり廃棄などが行われる小型電子機器等は65.1万トンで、そのうち有用な金属は27.9万トンとされています。金額に換算すると約844億円にのぼると見積もられています。
参考:環境省「平成24年版 環境・循環型社会・生物多様性白書」第1部第4章第3節 我が国に眠る地上資源の発掘・活用
含まれる金属を国内需要量との比でみると、タンタルが9.4%、金が6.4%、銀が3.7%を占めるとされています。使われなくなった機器を回収し、そこから金属を取り出して再び使う取り組みは、資源の乏しい日本にとって現実的な資源の確保策のひとつと位置づけられています。
参考:環境省「平成24年版 環境・循環型社会・生物多様性白書」第1部第4章第3節 我が国に眠る地上資源の発掘・活用
こうした背景から、小型家電リサイクル法にもとづく回収など、都市鉱山を活用する仕組みづくりが進められています。家庭で眠っている機器も、こうした資源の一部と考えられています。
都市鉱山を活用する取り組み
社会にたまった金属を使うために、使用済みの小型家電を回収して再資源化する仕組みが整えられてきました。2013年に施行された小型家電リサイクル法は、携帯電話やデジタルカメラ、ゲーム機などの使用済み小型家電を回収し、含まれる金属を再び使うことを目的とした制度です。
参考:「小型家電リサイクル制度(使用済小型電子機器等の再資源化の促進に関する法律)」|環境省
回収は、市区町村が設置する回収ボックスや、家電量販店の窓口などを通じて行われます。集められた機器は、国の認定を受けた事業者のもとで分解・選別され、金や銅などの金属が取り出されます。家庭で使われないまま眠っている機器を出すことも、この流れに加わることになります。
こうした回収と再資源化を積み重ねることで、都市鉱山にたまった金属が、数字の上の蓄積から実際に使える資源へと変わっていきます。天然資源の乏しい日本にとって、使用済み製品からの回収は、資源を確保する現実的な手立てのひとつとされています。
東京2020大会のメダルと都市鉱山
都市鉱山を実際に活用した例として知られるのが、2020年に開催された東京オリンピック・パラリンピックのメダルです。この大会の金・銀・銅のメダルは、全国から集めた使用済みの携帯電話や小型家電から回収した金属を使って作られました。
参考:「小型家電リサイクル制度」/東京2020組織委員会「都市鉱山からつくる、みんなのメダルプロジェクト」|環境省
「みんなのメダルプロジェクト」として知られるこの取り組みでは、自治体や携帯電話の販売店などを通じて、全国から使用済み機器が集められました。集まった機器から取り出した金・銀・銅で、大会で使われるメダルがまかなわれています。
この事例は、都市鉱山が推計上の数字にとどまらず、実際に金属を取り出して使える資源であることを示すものとして注目されました。身近な機器の中の金属が、形を変えて活用されうることを表した例といえます。
よくある質問
金の埋蔵量が世界一なのは本当に日本ですか。
天然の地下鉱床という意味の埋蔵量では、日本は世界の上位ではありません。「世界一」と語られるのは、使用済み製品に蓄積された都市鉱山を指したものです。NIMSの推計では、国内の金の蓄積量は約6,800トンで、当時の世界の現有埋蔵量の約16%にあたるとされています。
参考:「わが国の都市鉱山は世界有数の資源国に匹敵」|物質・材料研究機構(NIMS)プレスリリース
都市鉱山とは何ですか。
使用済みの家電やパソコン、携帯電話などの中に含まれ、社会に蓄積された金属資源のことです。地下の鉱床になぞらえた呼び方で、環境省の白書では「地上資源」として扱われています。
参考:環境省「平成24年版 環境・循環型社会・生物多様性白書」第1部第4章第3節 我が国に眠る地上資源の発掘・活用
日本の都市鉱山には金がどのくらいありますか。
NIMSと環境省の資料では、約6,800トンと推計されています。これは世界の現有埋蔵量の16.36%にあたる量で、銀は約6万トン(22.42%)とされています。
参考:環境省「平成24年版 環境・循環型社会・生物多様性白書」我が国に眠る地上資源の発掘・活用(NIMS推計)
天然の金の埋蔵量が多い国はどこですか。
USGSの2024年の資料では、世界全体で約59,000トンと推計され、オーストラリア、ロシア、南アフリカなどが上位です。日本は国別の一覧に単独では挙がっていません。
参考:U.S. Geological Survey, Mineral Commodity Summaries 2024, Gold
家庭にある金製品も都市鉱山に含まれますか。
使わなくなった電子機器などにたまった金属が都市鉱山とされており、家庭で眠っている製品もその一部と考えられています。アクセサリーなどの金製品も、金という資源が形を変えて手元にあるものといえます。
使わない小型家電はどこで回収してもらえますか。
小型家電リサイクル法にもとづき、多くの市区町村が公共施設などに回収ボックスを設置しているほか、家電量販店の窓口でも回収を受け付けている場合があります。お住まいの自治体の案内で、対象の品目や回収場所を確認しておくとよいでしょう。個人情報が残る機器は、データを消してから出すと安心です。
まとめ
「金の埋蔵量世界一は日本」という説は、地下の天然鉱床ではなく、使用済み製品にたまった「都市鉱山」を指したものです。NIMSと環境省の推計では、国内に蓄積された金は約6,800トンで、世界の現有埋蔵量の約16%にあたるとされています。一方、天然の埋蔵量ではオーストラリアなどが上位で、日本は世界一ではありません。
見方を変えれば、家庭にある金製品やアクセサリーも、資源としての価値を持つ金です。使わなくなった金製品の手放し方を考えるときは、貴金属の査定に対応した専門業者に相談し、資源としての価値を確かめてみてはいかがでしょうか。