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柿右衛門は何代目の評価が高いのか|代ごとの事績と濁手から整理

酒井田柿右衛門の器が手元にあり、何代目のものなのか、どの代が高く評価されるのかを知りたい方もいるのではないでしょうか。柿右衛門は初代から十五代まで続く有田焼の名跡で、代によって歩んできた背景が異なります。この記事では、公式の系譜と国の指定内容をもとに、評価が高いとされる代とその理由、そして濁手(にごしで)という技法の位置づけを整理します。

結論|十二代・十三代・十四代、そして江戸期の初期作が中心

先に整理しておくと、市場で評価が高いとされるのは、次の3つの層です。

十二代・十三代。一度途絶えていた濁手の素地を1953年に復元させた父子です。柿右衛門の歴史のなかで大きな転換点にあたります。

十四代。2001年に色絵磁器の重要無形文化財保持者、いわゆる人間国宝に認定されています。公的な認定を受けた作り手であることが、評価の裏づけになっています。

江戸期の初期柿右衛門。初代から数代のころに作られた作品です。現存数が限られており、骨董・美術品として別の文脈で扱われます。

ただし、「何代目か」だけで価値が決まるわけではありません。同じ代でも、作品の出来、大きさ、共箱の有無、状態によって扱いは大きく変わります。以下、代ごとの背景を順に見ていきます。

参考:「酒井田柿右衛門は何代目が高く売れる?」|バイセル

歴代柿右衛門の主な事績

柿右衛門窯の公式サイトに記載された系譜から、主な事績を整理すると次のようになります。

時期 主な事績
初代 1596〜1666年 1643年頃から赤絵物の制作を開始。1646年に長崎で赤絵物の販売。
1658年頃に金銀の絵付けに成功 十一代 〜1917年 1890年 第三回内国勧業博覧会で有功賞。
1893年 アメリカ・コロンブス万国博覧会で二等有功賞 十二代 〜1963年 1953年に十三代とともに濁手素地の復元に成功。
1955年 日本伝統工芸展で日本工芸会賞。1958年 ブリュッセル万国博覧会グランプリ。
1962年 勲四等瑞宝章 十三代 〜1982年 1971年に濁手が国の重要無形文化財に指定。
1972年 紫綬褒章。1976〜1978年に古窯跡の発掘を指導
十四代 1935〜2013年 1982年襲名、重要無形文化財保持団体の会長に就任。
2001年に人間国宝に認定 十五代 2014年2月4日襲名 現在の当主

参考:「歴史」|柿右衛門窯

こうして並べると、十二代から十四代にかけての時期に、公的な評価と受賞が集中していることが分かります。ここが「高い」と言われる代の背景になっています。

濁手(にごしで)とは何か|評価の核にある技法

柿右衛門を語るうえで欠かせないのが濁手です。これが何なのかを押さえておくと、代ごとの評価の理由が理解しやすくなります。

濁手とは、柔らかく温かみのある乳白色の素地のことです。柿右衛門窯の公式サイトでは、柿右衛門様式の赤絵に最も調和する素地と説明されており、その製法が完成したのは1670年代とされています。

文化庁の国指定文化財等データベースによると、濁手の素地は泉山陶石、白川山土、岩谷川内石を配合して調製されるもので、現在は元禄三年の『土合帳』の記録に準じて作られています。絵具は赤・萌黄・群青などを自家調製したもので、特に赤絵具の調製に独自の伝統を持つとされています。様式については、簡素淡調な上絵付が濁手素地との調和に配慮されている点が特徴として挙げられています。

参考:「柿右衛門(濁手)」|国指定文化財等データベース(文化庁)

柿右衛門様式は、余白を十分に残した明るく繊細な構図を特徴とする色絵磁器として知られています。白い余白があってこそ赤絵が映えるという構成で、その白を作る技術が濁手にあたる、という関係です。

なぜ十二代・十三代の評価が高いのか|濁手の復元

濁手は、一度作られなくなった時期があります。柿右衛門窯の公式サイトによると、江戸中期の1700年代には金襴手様式が主流となり、中国磁器の輸出再開や貿易制限といった事情も重なって、濁手の製作は一時中断を余儀なくされました。

この途絶えた技法を現代に戻したのが、十二代と十三代の父子です。両者は古文書『土合帳』をもとに研究を重ね、1953年に濁手素地の復元に成功しました。復元された技法は1955年に無形文化財として選択され、1971年には国の重要無形文化財「柿右衛門(濁手)」として指定されています。

参考:「濁手」|柿右衛門窯

この重要無形文化財は個人ではなく団体に対する指定で、保持団体は「柿右衛門製陶技術保存会」です。指定年月日は1971年(昭和46年)4月23日と記録されています。

つまり十二代・十三代は、柿右衛門様式の中核にあたる技法を復活させた代にあたります。二人の作品には、その技術的な達成の証という位置づけが重なります。評価が高いとされるのには、こうした背景があります。

なぜ十四代の評価が高いのか|人間国宝という認定

十四代(1935〜2013年)は、1982年に襲名し、重要無形文化財保持団体の会長に就任しました。そして2001年、色絵磁器の重要無形文化財保持者に認定されています。

文化庁の説明によると、国は重要無形文化財に指定した工芸技術を高度に体得している人を保持者として認定しており、この各個認定の保持者が、いわゆる「人間国宝」にあたります。各個認定の保持者には年額200万円の特別助成金が交付されるとされています。

参考:「無形文化財」|文化庁

ここで整理しておきたいのは、1971年の「柿右衛門(濁手)」の指定が保持団体に対するものであるのに対し、十四代の2001年の認定は個人に対するものだ、という点です。両者は制度上の位置づけが異なります。個人として国の認定を受けたという事実が、十四代の作品の評価を支える要素のひとつになっています。

十四代は2013年に没し、従五位に叙せられています。作り手が亡くなっている場合、新たに作品が増えることはないため、市場での希少性が意識されやすくなる、という側面もあります。

江戸期の初期柿右衛門はどう扱われるか

初代柿右衛門は1596年に生まれ、1666年に没したとされています。公式の系譜には、1643年頃から赤絵物の制作を開始し、1646年に長崎で赤絵物の販売を始め、1658年頃に金銀の絵付けに成功したと記されています。日本で最初に磁器の上絵付けに成功した人物とされ、その後、元禄期に柿右衛門様式が完成したと説明されています。

初期の作品は現存数が限られており、通常の作家物とは別の、骨董・美術品としての文脈で扱われます。ただし、江戸期の作とされる品には後年の写しや模作も多く、真贋の判断には専門的な鑑定が必要になります。「古い柿右衛門」と伝えられていても、実際には明治以降のものだったという例は珍しくありません。

このため、江戸期のものと思われる品については、値段の見当をつけるより先に、確かな目で見てもらうことが先決といえます。

十五代・現行品の位置づけ

十五代は2014年2月4日に襲名し、現在の当主として制作を続けています。現行の窯作品は現在も購入できるため、中古市場では新品価格との比較で評価されることになります。

このため、十五代の作品が評価されないという意味ではなく、「希少性が価格に上乗せされる構図にはなりにくい」という違いがある、と理解するほうが正確です。展覧会出品作や大作、限定的に制作されたものは別の扱いになることもあります。

また、柿右衛門窯では当主個人の作品のほかに、窯として制作される製品もあります。同じ「柿右衛門」の名でも、当主の個人作か窯の製品かで位置づけが異なるため、共箱の署名を確認することが重要になります。

代を見分ける方法|共箱・署名・銘

手元の品が何代目のものかを判断する手がかりを整理します。

共箱の署名が最も分かりやすい手がかりです。作者本人が署名・押印した桐箱には、蓋の裏に「柿右衛門」の署名と印が入っているのが一般的です。代によって書体や印の形が異なるため、専門家であればここから判断できることがあります。

器の銘(裏銘)も確認します。高台の内側や側面に「柿右衛門」の銘が入っていることがあります。ただし、銘だけで代を特定するのは難しく、模倣も存在します。

箱の状態と付属品も参考になります。栞(しおり)、布、二重箱、購入時の資料などが揃っていれば、来歴を追う材料になります。

窯の製品か個人作かの区別も見ておきます。窯の製品には窯印が入り、共箱の書式も個人作とは異なることがあります。

これらは手がかりであって、決定打にはなりません。特に高額が見込まれる品ほど、自己判断ではなく専門の査定を受けることをおすすめします。

買取に出すときに押さえておきたいこと

柿右衛門の器を売ることを考える場合、次の点を確認しておくと進めやすくなります。

共箱を必ず探す。作家物の陶磁器において、共箱の有無は評価に大きく影響します。器と箱が別々に保管されていることもあるため、押し入れや納戸を一通り確認します。

写真を撮る。器の全体、正面、高台(底面)、銘の部分、共箱の蓋の表と裏を撮影します。この5点があれば、問い合わせの段階でおおよその見込みが分かることがあります。

無理に洗わない。古い器の汚れや使用の跡は、時代を判断する手がかりになっていることがあります。洗剤や研磨剤で擦ると上絵付けを傷めるおそれがあるため、柔らかい布で埃を払う程度にとどめます。

欠けやニュウを隠さない。破損は正直に伝えます。柿右衛門のような作家物では、状態を織り込んだうえで評価されることもあります。

骨董・美術品の取り扱い実績がある業者を選ぶ。柿右衛門の代を判断するには専門的な知識が必要です。一般的なリユース店では適切な評価が難しい場合があります。

なお、買取価格は代・作品の種類・大きさ・共箱の有無・状態・そのときの市場動向によって変動します。ここで挙げたのは評価の観点であり、特定の金額を保証するものではありません。複数の業者に同じ条件で相談し、比べてみるのが実用的です。

よくある質問

結局、何代目が一番高いのですか

一律に「この代が最も高い」と決めることはできません。評価が高いとされる層として、濁手を復元した十二代・十三代、人間国宝に認定された十四代、そして現存数の少ない江戸期の初期作が挙げられます。ただし同じ代でも、作品の種類や出来、共箱の有無、状態によって評価は大きく変わります。

濁手と書いてあれば価値が高いですか

濁手は柿右衛門様式の中核をなす素地で、1971年に国の重要無形文化財に指定されています。ただし、濁手であること自体が価格を決めるわけではなく、誰がいつ作ったものか、状態はどうかと合わせて判断されます。また、箱書きに濁手とあっても実際の素地と一致しない場合があるため、実物確認が前提になります。

共箱がない柿右衛門は売れませんか

売れないわけではありませんが、評価に影響することが多いといえます。共箱は作者が自作と認めた証にあたり、真贋判断の材料として重視されます。箱がない場合でも、作品自体の出来や来歴を示す資料があれば評価されることがあります。

柿右衛門窯の製品と当主の個人作は違うのですか

位置づけが異なります。柿右衛門窯では、当主が手がける個人作のほかに、窯として制作される製品もあります。共箱の署名や窯印から区別できることが多く、査定でもここが確認されます。

十五代の作品は買取してもらえますか

対象になります。ただし、現行品は新品としても購入できるため、中古市場では新品価格との比較で評価されることになります。展覧会出品作や大作など、通常の製品とは位置づけが異なるものは別の扱いになる場合があります。

江戸時代の柿右衛門かどうか自分で分かりますか

素人が判断するのは難しいところです。江戸期の柿右衛門様式には後年の写しや模作が多く存在し、見た目だけでの判別はできません。古いものと伝えられている品ほど、骨董・美術品の鑑定に対応できる業者に見てもらうのが確実です。

まとめ

柿右衛門で評価が高いとされる代を整理すると、濁手素地を1953年に復元した十二代・十三代、2001年に人間国宝に認定された十四代、そして現存数の限られる江戸期の初期作、という3つの層になります。

その背景にあるのが濁手という技法です。1670年代に製法が完成し、江戸中期にいったん途絶え、十二代・十三代の研究によって復元され、1971年4月23日に国の重要無形文化財「柿右衛門(濁手)」として保持団体「柿右衛門製陶技術保存会」とともに指定されました。この流れを知っておくと、なぜ特定の代が重視されるのかが理解しやすくなります。

ただし、代だけで価値が決まるわけではありません。作品の出来、共箱の有無、状態が総合的に見られます。手元に柿右衛門と伝わる品があるなら、まず共箱を探し、器の底面と箱書きを撮影したうえで、骨董・美術品を扱う業者に相談するところから始めるとよいでしょう。