陶器・磁器・ボーンチャイナの違い|食器買取の査定で見られる点
食器棚を片づけていて、この器は売れるのだろうかと迷った方もいるのではないでしょうか。手放すかどうかを考えるとき、まず役に立つのが素材の区別です。そこでこの記事では、陶器・磁器・ボーンチャイナの違いを一次情報にもとづいて整理したうえで、その違いが食器買取の査定でどう見られるのかをまとめます。
手元の食器がどれに当たるかを先に確かめる
食器を売るか残すかを決める前に、その器が何でできているのかを確かめておくと話が早くなります。買取の相談では、まず素材の区別から入ることが多いためです。
焼き物全体を指す言葉として「陶磁器」があります。この陶磁器を大きく分けると、陶器と磁器になります。ボーンチャイナはさらにその先の区分で、磁器の一種として位置づけられるものです。
分け方の基準になるのは、まず原料です。陶器は粘土を主な原料とし、磁器は陶石という石を砕いたものを主な原料とします。この違いから、陶器は「土もの」、磁器は「石もの」と呼び分けられます。
ボーンチャイナは、磁器の原料にリン酸カルシウム(骨灰)を加えたものです。イギリスで生まれた製法で、通常の磁器とは色味や透け方が異なります。
同じ産地のなかに陶器と磁器の両方があることも珍しくありません。福島県の会津本郷焼がその例です。会津本郷焼事業協同組合は、会津本郷焼には瓦焼の流れをくむ土物(陶器)と、大久保陶石を原料とした石物(磁器)があると説明しています。そのうえで、陶器と磁器が同時に作られること自体、産地としては珍しいとしています。
産地名が同じでも中身が違う場合があるため、産地だけで素材を決めつけないほうが確実です。
陶器・磁器・ボーンチャイナは原料と焼成で分かれる
3つの区分は、原料と焼き方の条件によって生まれます。産地やメーカーの公式説明を見ると、その差がはっきりします。
陶器は粘土を焼いたもの
滋賀県甲賀市の信楽焼では、約400万年前の古琵琶湖層から採る土が使われます。滋賀県は、この土が信楽焼独特の野趣あふれる肌と温かみのある火色を生み出すと説明しています。火に強く、小物も大物も造ることができる土だとされています。薪を燃料とする穴窯や登窯では、炎の中で降りかかる灰と土が反応してガラス化した「ビードロ釉」と呼ばれる自然釉が生まれます。灰に埋まる部分が黒褐色になる「焦げ」も現れます。
陶器は生地が厚めで、素地に細かい隙間があるため吸水性があります。光を通さず、叩くと鈍い音がします。
磁器は陶石を高温で焼き締めたもの
愛媛県の砥部焼は、上尾峠産の陶石を原料とします。素焼きを900度から950度で8時間から10時間、本焼きを1300度で15時間から24時間かけて行います。砥部町は、砥部焼の特徴を「清らかな白磁の肌に藍の絵模様」「やや厚手」「飾り気のない形」と説明しています。
石川県の九谷焼は、素地を焼いたうえに絵付けを行う上絵付けの磁器です。石川県は、紺青・緑・黄・紫・赤の「九谷五彩」を九谷焼の特徴として挙げています。
参考:「九谷焼」|石川県
磁器は薄くても丈夫で、表面がなめらかです。吸水性がほとんどなく、薄い部分に光を当てると透けます。
ボーンチャイナは磁器にリン酸カルシウムを加えたもの
鳴海製陶の解説によれば、日本工業規格(JIS)ではボーンチャイナ製品のリン酸カルシウムの含有率が30%以上と定められています。主な原料は、長石、硅石、カオリン、蛙目粘土、そして骨灰(リン酸カルシウム)です。釉薬には熔融点の低いフリット釉が使われ、光の反射率が高くなります。
通常の磁器が冷たい白やブルー、グレーがかった白であるのに対し、ボーンチャイナは温かみのある乳白色になります。透光性はリン酸カルシウムの作用によるものとされ、薄く成形してもワレ・カケに強い特性をもちます。
参考:「ボーンチャイナとは」|鳴海製陶、「NARUMIボーンチャイナ」|鳴海製陶
焼成の工程も通常の磁器とは異なります。ノリタケの説明では、1回目の焼成が1200℃で14時間、2回目が1100℃で半日程度とされています。水分を含んだ土は焼成によって20%近く収縮するため、狙った寸法に仕上げるには高い技術が求められます。
3つの違いをまとめると、次のようになります。
| 項目 | 陶器(土もの) | 磁器(石もの) | ボーンチャイナ |
|---|---|---|---|
| 主な原料 | 木節・蛙目などの粘土 | 陶石を砕いたもの | 長石・硅石・カオリン・蛙目粘土・骨灰 |
| 骨灰(リン酸カルシウム) | 含まない | 含まない | JISで30%以上と規定 |
| 色味 | 土の色を反映した素朴な色 | 冷たい白、青みや灰みを帯びた白 | 温かみのある乳白色 |
| 透光性 | 光を通さない | 薄い部分は透ける | 特有の高い透光性 |
| 吸水性 | あり | ほとんどない | ほとんどない |
| 叩いた音 | 鈍い音 | 澄んだ高い音 | 澄んだ高い音 |
焼成の条件は産地や製品によって幅があります。表の内容は、本記事で確認した実例にもとづく目安として扱っていただければと思います。
手元の器を見分ける5つの手順
査定の相談をする前に、自分でおおよその見当をつけておくと、伝えるべきことが整理できます。次の順番で見ていくと判断しやすくなります。
1. 底の高台を見る
器を裏返し、釉薬がかかっていない底の輪の部分を確認します。ざらついて土の色が見えるなら陶器、白くなめらかで硬い感触なら磁器やボーンチャイナの可能性が高くなります。
2. 光にかざす
器の縁など薄い部分を明るい光にかざします。まったく透けなければ陶器です。ぼんやり透けるなら磁器、はっきりと明るく透けるならボーンチャイナが考えられます。
3. 色味を見る
白い器の場合、青みや灰みを感じる白なら磁器、クリームがかった温かみのある白ならボーンチャイナの可能性があります。
4. 音を聞く
縁を指で軽く弾きます。鈍い音なら陶器、澄んだ高い音なら磁器系です。強く叩くと欠ける恐れがあるため、力加減には気をつけたいところです。
5. 底面の表記を確認する
多くの洋食器メーカーは、底面に「BONE CHINA」の表記を入れています。この表記があれば、判断の裏付けになります。国内産の器では、産地名や窯元名が記されていることもあります。
ひとつの要素だけで決めつけると判断を誤ることがあるため、複数を組み合わせるのが確実です。表記の読み取り方については、陶器の裏印の調べ方で詳しく取り上げています。
素材の違いは買取査定でどう見られるか
素材そのもので優劣が決まるわけではありません。陶器にも磁器にも、それぞれ評価される品があります。ただし、素材によって確認される項目は変わります。
陶器で見られる点
土の質感が残る陶器では、産地や窯元、作り手が誰かという情報が手がかりになります。素地に吸水性があるため、長く使った器は染みやにおいが残っている場合があります。この点は状態の確認項目に含まれます。
磁器で見られる点
磁器は絵付けの技法や図柄が評価の手がかりになります。九谷焼の五彩のように、産地ごとの技法がはっきり示されている品は、産地を特定しやすくなります。白磁の場合は、貫入(釉薬の細かいひび)や変色の有無が見られます。
ボーンチャイナで見られる点
ボーンチャイナは、量産の洋食器として作られたものが中心です。作り手より、どのメーカーのどのシリーズかという情報が評価を分けます。ナルミとノリタケはどちらが高級かという違いも、歴史と製品ラインから整理できます。底面の表記に加えて、シリーズ名が分かると照合が進みます。
素材を伝えるだけで査定額が決まるわけではありませんが、素材が分かると、どこを重点的に確認すべきかが定まります。査定の相談をする際は、素材の見当と底面の表記をあわせて伝えておくとやり取りが短くなります。
なお、陶器の買取で価値が決まる仕組みについては、別記事で系統ごとに整理しています。
セットの揃いと点数が買取の評価を分ける
洋食器の買取では、素材の区別と同じくらい、そろっているかどうかが確認されます。カップとソーサーが一組になっているか、同じシリーズで枚数がそろっているかという点です。
ティーカップとソーサーは、本来ひと組で使うものです。片方だけが残っている場合、組で残っている場合とは扱いが変わります。プレートも、5枚組・6枚組といった単位で作られてきた経緯があるため、欠けた枚数があると組として扱いにくくなります。
まとめて相談する場合は、次の順で仕分けておくと、そのまま査定の単位になります。
- メーカーやシリーズが同じものを集める
- カップとソーサーの組をつくる
- 皿は大きさごとに枚数を数える
- 箱がある品は箱ごとにまとめる
大皿やティーポット、シュガーとクリーマーのような品は、単品でもシリーズの一部として扱われます。組が崩れているからと除外せず、全部まとめて見てもらうほうが判断の材料が増えます。
和食器の場合も考え方は同じです。5客そろいの湯呑や、蓋付きの椀のように、数と付属部品がそろっていることが確認されます。蓋だけを別の場所にしまっているケースもあるため、探せる範囲で探しておくと安心です。
欠け・貫入・金彩の傷みは買取でどう見るか
状態の確認は、素材の性質と結びついています。陶器・磁器・ボーンチャイナで、出やすい傷み方が異なるためです。
| 状態 | 出やすい素材 | 確認する場所 |
|---|---|---|
| 欠け(カケ) | すべて | 縁、高台、注ぎ口、取っ手の付け根 |
| ひび(ニュウ) | すべて | 光にかざして側面と底 |
| 貫入 | 陶器、一部の磁器 | 釉薬の表面を斜めから見る |
| 染み・においの残り | 陶器 | 内側の底、高台の裏 |
| 金彩・銀彩の擦れ | 磁器、ボーンチャイナ | 縁の金線、絵柄の縁取り |
| 変色・くもり | ボーンチャイナ | 白い部分を明るい場所で確認 |
貫入は、素地と釉薬の収縮の差から生まれる細かいひびです。作風として意図的に出しているものと、使ううちに広がったものとがあります。判断が分かれる部分のため、自分で結論を出さず、現物を見てもらうほうが確実です。
金彩の擦れは、食器洗い機や研磨剤入りのスポンジで進むことがあります。すでに擦れている場合、そこを磨いて直そうとすると状態がさらに変わってしまいます。手を加えず、そのままの状態で見てもらうことをおすすめします。
欠けやひびがある品でも、相談の対象から外す必要はありません。シリーズの他の品とまとめることで、全体として扱えることがあります。
食器を買取に出す前に確認したいこと
手放すと決めたあとで、やっておくと手続きが進めやすくなることがあります。
箱と付属品を探す
購入時の化粧箱、栞、保証書が残っていれば一緒に出します。洋食器の箱にはシリーズ名が印刷されていることが多く、器の照合に役立ちます。
汚れは軽く落とすにとどめる
ほこりを払う程度にとどめ、強い洗剤や研磨剤は使わないほうが無難です。とくに陶器は吸水性があるため、洗剤が素地に入り込むことがあります。金彩や上絵付けのある品も、こすると絵柄が傷みます。
枚数と内訳をメモしておく
シリーズごとの点数を書き出しておくと、査定結果を確認するときに照らし合わせやすくなります。写真を撮っておくのもひとつの方法です。
本人確認書類を用意する
古物営業法第15条は、古物商が古物を買い受けようとするときに、相手方の真偽を確認するため、住所・氏名・職業・年齢を確認する措置をとらなければならないと定めています。買取の申し込みの際に本人確認書類を求められるのは、この定めによるものです。運転免許証やマイナンバーカードなど、有効な書類を手元に用意しておくと当日の手続きが進みます。
参考:古物営業法(昭和二十四年法律第百八号)第十五条|e-Gov 法令検索
割れ物としての運び方を決める
持ち込む場合は、一枚ずつ紙で包み、箱の中で動かないようにします。数が多いときや大物がある場合は、出張での査定に対応しているかを事前に確認しておくと安心です。食器の宅配買取を使う場合は、クーリング・オフの扱いもあわせて確認しておくとよいでしょう。
よくある質問
陶器と磁器では、どちらが高く評価されますか
素材そのもので決まるわけではありません。陶器にも磁器にも、それぞれ評価される品があります。査定では、誰が作ったのか、どのメーカーのどのシリーズか、状態はどうか、何点そろっているかといった要素を組み合わせて判断されます。
ボーンチャイナかどうかは自分で判断できますか
底面に「BONE CHINA」の表記があれば手がかりになります。表記が摩耗して読めない場合は、光にかざしたときの透け方や、乳白色に近い色味を確認します。判断がつかないときは、洋食器の取り扱い経験がある専門店に見てもらうのが確実です。
使っていた食器でも査定してもらえますか
使用済みかどうかで買取の扱いが一律に決まるものではありません。染みや擦れの程度、シリーズの点数、付属品の有無などをあわせて確認されます。処分を決める前に、まとめて見てもらうことをおすすめします。いらない食器をリサイクルショップで買取できるかも、選択肢のひとつとして整理しています。
欠けている食器は査定の対象になりませんか
欠けがある品も、相談の対象から外す必要はありません。同じシリーズの品とまとめることで扱える場合があります。自分で接着したり削ったりすると状態が変わってしまうため、そのままの形で見てもらうのが安全です。
バラバラのカップとソーサーはどうすればよいでしょうか
組になっていないものも、そのまま持ち込んで問題ありません。査定の場でシリーズが判明し、組み合わせが見つかることもあります。家の別の場所にしまっている可能性がある場合は、探せる範囲で確認しておくと点数がまとまります。
まとめ
陶器・磁器・ボーンチャイナの違いは、原料と焼成の条件から生まれます。この区別が分かると、査定で確認される項目も見えてきます。陶器は産地と染みの残り、磁器は絵付けと貫入、ボーンチャイナはメーカーとシリーズが手がかりです。セットの揃いと欠けの有無も評価を分けます。当店では素材の判別から点数の確認までまとめて対応いたしますので、仕分けに迷う段階からご相談ください。