GMT時計とは|機能の仕組みと世界標準時の関係を解説
文字盤に24時間目盛りの針がもう1本ある時計を見て、これは何を指しているのだろうと思ったことはないでしょうか。GMT時計とは何かを調べると、機能の説明と時刻の歴史の話が混ざって出てきて、かえって整理しづらくなります。実は「GMT」という言葉自体が、いまでは公式な時刻の名称ではありません。この記事では、GMT時計とは何ができる時計なのかを、時刻の基準そのものの仕組みとあわせて順に解説します。
GMT時計とは|2つのタイムゾーンを同時に読む時計
まず機能の定義から確認します。日本時計協会は「GMT機能」を、時針と24時針がそれぞれ別の時刻を示すことによって、時差のある2つのタイムゾーンの時刻を表示することができる機能と定義しています。
参考:「時計用語 JCWA-T006:2024」|一般社団法人日本時計協会
つまりGMT時計とは、通常の時針・分針で自分がいる場所の時刻を読みながら、24時間で1周する追加の針でもう一つの地域の時刻を読める時計です。海外とやり取りする人や、旅行や出張が多い人が使ってきた機能にあたります。
なぜ24時間で1周する針なのか、という点には理由があります。通常の時針は12時間で1周するため、針の位置だけでは午前か午後かが判別できません。24時間で1周する針なら、目盛りを読むだけで昼夜の区別まで分かります。
同協会は、GMTについて「かつて世界標準時だった Greenwich Mean Time の略」という注記も付けています。ここが、機能の名前と時刻の名称が混同されやすいところです。
GMTという言葉はどこから来たのか
GMTはグリニッジ平均太陽時の略称です。この言葉の背景には、経度と時刻を世界で共通に扱うための取り決めがあります。
情報通信研究機構(NICT)は、1884年の国際子午線会議で、ロンドンのグリニッジ天文台を通る子午線が本初子午線と定められたと説明しています。地球が24時間で1回転することから、そこを基準に各地の時刻を決められるようになりました。
国立天文台暦計算室も、同じ1884年の国際子午線会議で本初子午線としてグリニジ王立天文台を通る子午線が採用されたと記しています。同室の解説によれば、当時のGMTは正午を起点とする天文時であり、1925年に基点が正午から正子へ変更されました。
ここが重要な点です。定義が変わったのに名称が同じで紛らわしいことから、1928年のIAU(国際天文学連合)総会でGMTという用語を非推奨とする勧告が出されました。1976年の勧告では、科学的な出版物ではGMTを使わず、UT0・UT1・UT2・UTCを用いることが推奨されています。
同室は、その後も世界時の意味でGMTが使われる事例は多数あると述べています。時計の機能名としてGMTが残っているのも、この延長線上にあると考えると理解しやすくなります。
いまの世界の基準は協定世界時(UTC)
現在、世界共通の基準として使われているのは協定世界時(UTC)です。国際度量衡局(BIPM)は、UTCを国際原子時(TAI)にうるう秒を挿入して得られる時刻系だと説明しています。うるう秒の挿入は、地球の自転から導かれる時刻とおおよそ一致させるために、国際地球回転・基準系事業(IERS)の助言に従って行われます。
参考:「Time metrology」|Bureau International des Poids et Mesures (BIPM)
BIPMによれば、UTCの物理的な実現はUTC(k)と呼ばれ、各国の計量標準機関や天文台で維持されています。それらの機関は、自らの時計のデータをBIPMへ送ることでUTCに寄与します。
NICTは、秒の定義そのものについても解説しています。1967年に、1秒の長さの定義は天文学によるものから量子力学によるものへ改定されました。現在の定義は、セシウム133原子の基底状態の2つの超微細準位間の遷移に対応する放射の9,192,631,770周期の継続時間です。
参考:「国際原子時・協定世界時とうるう秒」|国立研究開発法人情報通信研究機構
国際原子時(TAI)は1958年1月1日に世界時UT2と原点を一致させてスタートし、世界中の原子時計の時刻を加重平均することで決定されているとNICTは説明しています。地球の自転速度は潮汐摩擦などの影響で変化するため、UTCには1秒を挿入・削除する調整が行われます。この1秒がうるう秒です。
NICTによれば、うるう秒調整は1972年の特別調整以降に導入され、これまでに27回行われました。すべて挿入の調整だったため、UTCはTAIに対して37秒遅れています。
国立天文台暦計算室は、うるう秒がUT1−UTCが±0.9秒以内になるように、6月末または12月末に挿入または削除されると記しています。同室はまた、2022年のCGPM決議により2035年までにUT1−UTCの許容値を±0.9秒から引き上げることが決まったとも述べました。
用語を整理すると次のようになります。
| 用語 | 中身 |
|---|---|
| GMT(グリニッジ平均太陽時) | かつて使われた時刻の呼び名。IAU勧告では非推奨とされた |
| UT1 | 極運動の影響を除いた時刻。地球の自転量をもっとも忠実に表す |
| TAI(国際原子時) | 世界中の原子時計の時刻を加重平均して決める時系 |
| UTC(協定世界時) | TAIをうるう秒で調整した、日常生活の基準となる時系 |
| JST(日本標準時) | UTCに9時間を加えた時刻 |
日本標準時とUTCの9時間差はどう決まっているか
日本の標準時が9時間進んでいる理由も、経度の取り決めから説明できます。
NICTは、日本で明治時代に初めて標準時に関する法令が公布されたと説明しています。その法令には、東経135度の子午線の時をもって本邦一般の標準時と定めるという内容が含まれていました。地球が24時間で360度回転することから、東経135度の子午線の時刻はグリニッジ天文台における時間より9時間進むという計算です。
現在では、世界的な標準の時系として原子時計を利用したUTCが使われており、UTCと日本標準時の間にも9時間の時差が設けられています。国立天文台暦計算室も、協定世界時に9時間を加えたものが中央標準時(日本標準時)だと記しました。
NICTによれば、日本では総務省が周波数標準値の設定・標準電波の発射・標準時の通報に関する業務を担っています。NICT自身は、情報通信研究機構法にもとづいて標準時を生成し、国内外へ通報する役割です。腕時計のGMT針で「日本時間」を表示する場合、その基準はこの体系につながっています。
GMT機能・デュアルタイム・ワールドタイムの違い
似た機能が複数あるため、言葉の整理をしておきます。日本時計協会の用語規格には、それぞれ別の定義が置かれています。
| 用語 | 協会の定義 |
|---|---|
| GMT機能 | 時針と24時針がそれぞれ別の時刻を示し、時差のある2つのタイムゾーンの時刻を表示できる機能 |
| デュアルタイム | 二つの異なった時刻を表示する機能 |
| 世界時計(ワールドタイムウオッチ) | 世界各地の標準時を表示できる時計 |
| 時差修正 | 時計の動きを止めずに、時間単位で時刻修正が可能な機能 |
| ホームタイム/ローカルタイム入替機能 | 操作によりホームタイムとローカルタイムを入れ替える機能 |
参考:「時計用語 JCWA-T006:2024」|一般社団法人日本時計協会
デュアルタイムは「二つの時刻を表示する」という広い定義で、その表示方法までは限定していません。GMT機能はそのうち、24時針を使う方式を指した呼び方だと読み取れます。
世界各地の標準時をまとめて表示するものは、協会の規格では世界時計(ワールドタイムウオッチ)に分類されます。都市名の書かれた回転する目盛りを持つ時計がこれにあたります。
移動先で時刻を合わせ直す場面では、時差修正機能があるかどうかが実用に効いてきます。分針や秒針を止めずに時針だけを1時間ずつ動かせるなら、到着後の操作が簡単になります。
24時針の読み方と使い方
実際の読み方を整理します。GMT時計の基本は、通常の時分針で現地時刻を読み、24時針でもう一つの地域の時刻を読むという組み合わせです。
24時間の目盛りは、文字盤の内側に印刷されている場合と、ベゼルに刻まれている場合があります。ベゼルが回転する仕様であれば、ベゼルを回すことで表示できる地域を切り替えられます。
使い方は、おおむね次の3通りに分かれます。
自宅の時刻を24時針に残しておき、旅先では時分針だけを現地時刻に合わせる方法があります。逆に、24時針をUTCに固定しておき、必要に応じてベゼルで各地の時刻を読むこともできます。そして回転ベゼルを持つ機種であれば、24時針とベゼルの組み合わせで3つ目の地域の時刻まで読み取れる場合もあります。
いずれの使い方でも、うるう秒のような1秒単位の調整は腕時計の側では追いきれません。厳密な時刻が必要な場面では、標準時を配信している仕組みを使うのが確実です。
GMT時計を選ぶとき、手放すときの確認点
GMT機能を持つ時計を選ぶ際は、機能の呼び名だけで判断せず、操作の仕様まで確認することをおすすめします。24時針が単独で動かせるのか、時針が単独で動かせるのかによって、使い勝手が変わるためです。
精度に関する表示も確認しておきたい部分です。日本時計協会は、クロノメーターを「CICC(国際クロノメーター管理委員会)の管理下にある公的機関によって検定を受け、合格した高精度機械時計に与えられる称号」と定義しています。検定の方法と合格水準はISO 3159で規定されているという説明もあります。
参考:「時計用語 JCWA-T006:2024」|一般社団法人日本時計協会
スイスの公式クロノメーター検定協会(COSC)は、検定の内容を公表しています。COSCによれば、ムーブメントは種類に応じて12日から20日間にわたって試験され、5つの姿勢と8度・23度・38度の3つの温度で計測されます。平均日差の許容範囲は毎日マイナス4秒からプラス6秒です。
参考:「Chronometer Certified」|Contrôle Officiel Suisse des Chronomètres (COSC)
なお、この検定は完成した時計ではなくムーブメントに対して行われるものです。長く使った個体の実際の精度は、整備の状況によって変わります。
手放すことを考える場合は、型番・付属品・稼働の有無を整理したうえで、複数の事業者に同じ条件で査定を依頼してください。保証書を無くしている場合の扱いも、あわせて確認しておくと話が早く進みます。GMT機能付きの時計では、24時針が正しく動くかどうか、時差修正の操作が問題なくできるかどうかも確認されます。動かない箇所があるなら、隠さず伝えるほうが話がこじれません。見た目を整えたい場合も、腕時計のクリーニングで自分でできる範囲にとどめ、防水表示のある時計を水洗いしてよいかも先に確かめておくのが安全です。傷んだベルトは、時計のベルト交換の値段を確認してから判断してください。
よくある質問
Q. GMTとUTCは同じものですか
厳密には別のものです。国立天文台暦計算室によれば、GMTは1928年のIAU総会で非推奨とされた用語で、1976年の勧告では科学的な出版物でUT0・UT1・UT2・UTCを用いることが推奨されています。日常会話では同じ意味で使われることが多いものの、正式な時刻の基準は協定世界時(UTC)です。
Q. GMT時計は電波時計とは違うのですか
役割が異なります。GMT機能は2つのタイムゾーンを同時に表示するための機能で、電波時計は標準電波を受信して時刻を合わせる仕組みです。両方を備えた製品もありますが、機能としては別のものだと考えてください。
Q. 24時針は何時間で1周しますか
その名のとおり24時間で1周します。12時間で1周する通常の時針と違い、目盛りを読むだけで昼か夜かが分かる点が特徴です。
Q. うるう秒があると時計はずれてしまいますか
腕時計は1秒単位の調整を自動では追えません。ただし、日常の使用でうるう秒による1秒のずれが問題になる場面はほとんどないでしょう。厳密な時刻が必要なときは、標準時を配信している仕組みで確認してください。
Q. サマータイムのある地域ではどう扱えばよいですか
サマータイムの実施の有無や期間は国や地域ごとに決められています。GMT機能そのものは時差を表示するだけですので、切り替え時期には手動で合わせ直す必要があります。渡航先の制度を事前に確認しておきましょう。
まとめ
GMT時計とは、時針と24時針でそれぞれ別のタイムゾーンの時刻を読める時計です。名前の由来であるGMTは、1884年の国際子午線会議に始まる基準の呼び名でした。IAUの勧告では非推奨とされ、いまの世界の基準は協定世界時(UTC)に移っています。日本標準時はUTCに9時間を加えた時刻です。選ぶときも手放すときも、機能の呼び名ではなく操作の仕様と現在の稼働状態を確認することをおすすめします。