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エンバ(EMBA)の毛皮とは|ブランド表記とミンクのグレード表記の違いを整理

ハンガーに掛けられた毛皮のコート

クローゼットから出てきた毛皮のコートに「EMBA」という表記があり、どういうものなのか調べている方もいるのではないでしょうか。毛皮製品には、つくった会社を示すブランド表記と、原皮そのものの品質を示すグレード表記があり、この2つは別のものです。この記事では、一般社団法人日本毛皮協会や消費者庁が公表している情報をもとに、エンバという表記の位置づけと、ミンクのグレード表記の読み方を整理して解説します。

エンバ(EMBA)とは|毛皮製品に見られる表記

エンバ(EMBA)は、日本国内で流通してきた毛皮製品に見られるブランド表記のひとつです。コートやジャケットの裏地、あるいは内側に縫い付けられたネームに「EMBA」と記されているものが、中古市場でも取引されています。ジャパンエンバ株式会社が展開していたブランドとして知られています。

ただし、この会社の沿革や事業規模については、公的機関や業界団体が公表している一次情報で確認できる範囲が限られています。インターネット上には売上高や創業に関する記述が見られますが、出典が明確でないものも多く、本記事ではそうした情報は扱いません。

そのうえで、手元の毛皮を判断するうえで実際に役立つのは、「エンバというブランド名がどういう意味を持つのか」よりも、「その表記が何を示していて、何を示していないのか」を理解することです。ここが整理できていないと、ラベルを見ても品質の判断につながりません。

ブランド表記とミンクのグレード表記は別のもの

毛皮製品についているラベルは、大きく2つの系統に分かれます。

ひとつは、製品をつくった会社やブランドを示す表記です。エンバのほか、アパレルブランドやファッションブランドの名前がこれにあたります。これは「誰がその製品に仕立てたか」を示すものです。

もうひとつは、原皮の生産者団体やオークション会社が付けるグレード表記です。日本毛皮協会は、ミンクの主要な生産者団体・オークション会社のブランド表示として、サガ・ファー、アメリカン・レジェンド、コペンハーゲン・ファー、ノース・アメリカン・ファー・オークションズなどの名前を挙げています(具体的な表示は次の章の表にまとめます)。

そのうえで同協会は、これらのブランドは原皮の品質を表すものであり、毛皮製品の最終的な品質はその後のなめしや製造の工程にも大きく影響される、という趣旨の説明をしています。つまり、グレード表記が高いからといって、製品としての仕上がりが自動的に決まるわけではない、ということです。

参考:「よくある質問」|一般社団法人 日本毛皮協会

この2つを踏まえると、エンバのようなブランド表記は「製品としての仕立て」に関わる情報であり、原皮そのもののグレードを示すものではありません。逆に、SAGAなどのグレード表記があっても、それだけで製品全体の状態が保証されるわけでもありません。実際の毛皮製品には、この2種類の表記が両方付いていることもあります。手元の一着を見るときは、どちらの系統の表記なのかを分けて確認すると、状況を整理しやすくなります。

ミンクのグレード表記の代表例【一覧表】

日本毛皮協会が挙げている、ミンクの主要な生産者団体・オークション会社のブランド表示を整理します。

生産者団体・オークション会社 ブランド表示の例 サガ・ファー(Saga Furs) saga furs® LUMI ROYAL、saga furs® ROYAL、saga furs®(基本グレード) アメリカン・レジェンド Blackglama®(黒ミンク) コペンハーゲン・ファー PURPLE、PLATINUM、BURGANDY、IVORY ノース・アメリカン・ファー・オークションズ NAFA Mink、Black NAFA

参考:「よくある質問」|一般社団法人 日本毛皮協会

サガ・ファーの表示は、LUMI ROYAL、ROYAL、基本グレードという順で段階が設けられています。コペンハーゲン・ファーは、PURPLEを最上位として、PLATINUM、BURGANDY、IVORYと続く区分です。アメリカン・レジェンドのBlackglamaは、黒ミンクに付けられる表示です。

日本国内の中古市場では「サガミンク」「ゴールドラベル」「シルバーラベル」といった呼び方がされることがありますが、これらは販売の現場で使われてきた言い方であり、生産者団体の公式な区分名とは一致しない場合があります。ラベルに実際に記されている文字を確認するのが確実です。

なお、これらのグレード表記は原皮の段階での評価です。製品になってから何年も経過している場合、原皮のグレードよりも、現在の保存状態のほうが実際の評価に影響することが多くなります。

日本の毛皮製品の品質表示ルール

「毛皮のコートに品質表示のタグが付いていないが、問題ないのか」と気になる方もいるかもしれません。ここは制度を知っておくと判断しやすくなります。

日本には、家庭用品の品質について事業者に表示を義務づける「家庭用品品質表示法」があります。消費者庁が所管しており、繊維製品・合成樹脂加工品・電気機械器具・雑貨工業品の4分野が対象です。

参考:「家庭用品品質表示法とは」|消費者庁

繊維製品の対象品目には、上衣、シャツ、セーター、スカート、ズボン、ドレスなどが並び、「革又は合成皮革を製品の全部又は一部に使用」したコートや上衣も含まれています。

参考:「対象品目一覧」|消費者庁

一方、日本毛皮協会は、家庭用品品質表示法について「毛皮には、適用されておりません」と説明しています。ただし、ダブルフェース加工で表側が革面になっている場合や、リバーシブル仕様の場合は、適用される可能性があるとされています。

参考:「毛皮の品名表示一覧」|一般社団法人 日本毛皮協会

つまり、純粋な毛皮製品には法律上の品質表示義務がないため、表示がないこと自体は違法でも偽物でもありません。同協会も、表示がなくても偽造とは限らない、という趣旨の説明をしています。

そのうえで、同協会は消費者の購入の目安となるよう、毛皮の品名表示に関する独自の指針を定め、加盟社や関係団体に周知しています。この指針では、表示は次の3つの要素で構成されるとされています。

  • 品名の表示(必須。必ず表記する)
  • 加工処理の表示(任意だが推奨)
  • 使用部分の表示(任意だが推奨)

参考:「毛皮の品名表示一覧」|一般社団法人 日本毛皮協会

法律上の義務ではなく、業界団体の自主的な指針だという点は押さえておきたいところです。手元の毛皮に品名の表示があれば、素材の種類を確かめる手がかりになります。

ミンクという素材の特徴と、毛皮が「消耗品」であること

エンバの製品にはミンクが使われているものが多く見られます。ミンクという素材そのものの性質を知っておくと、状態を判断しやすくなります。

日本毛皮協会によると、ミンクは1866年に養殖化に成功した毛皮素材で、現在は25以上のカラーが生産されています。刺し毛は強くしなやかで光沢に富み、綿毛も密度が高くシルキーであることから、衣料用として適した素材とされています。耐久性と保温力に優れ、染色も容易で多くの色を表現できる点も特徴です。

参考:「毛皮の種類」|一般社団法人 日本毛皮協会

一方で、同協会は毛皮について「消耗品であって、買ったときの財産価値や状態が永遠に続くものではない」と、はっきり述べています。時間の経過とともに、皮の硬化、毛の抜けやすさ、色褪せが生じるとされています。

参考:「よくある質問」|一般社団法人 日本毛皮協会

これは、エンバのような国内で人気のあったブランドであっても同じです。購入時に高額だったことと、現在の状態は別の話として考える必要があります。長く保管されてきた一着ほど、ブランド名よりも実際の状態が評価を左右しやすくなります。

手元のエンバの毛皮を確認する・扱うときのポイント

確認するときの見方

手元にエンバの毛皮がある場合、次の順番で確認していくと整理しやすくなります。

1. ラベルの種類を分けて見る

内側に縫い付けられたネームを確認します。「EMBA」というブランド表記のほかに、素材の品名(ミンク、フォックスなど)や、生産者団体のグレード表記が別に付いていることがあります。それぞれが何を示しているのかを分けて把握します。

2. 皮の状態を確かめる

毛の面だけでなく、裏地の隙間などから見える皮の部分も確認します。日本毛皮協会は、毛皮の損傷要因として、光線(紫外線によるタンパク質の変化と褪色)、湿度・乾燥管理の不備、熱、害虫、摩擦、水分を挙げています。着用による摩擦では、袖口、ポケット口、前立ての部分から刺毛が切れたり折れたりしていくとされています。

参考:「毛皮の損傷要因」|一般社団法人 日本毛皮協会

3. においや変色を確かめる

白系の毛皮は紫外線によって黄変することがあります。また、保管環境によっては臭いが残っていることもあります。いずれも状態の評価に関わる要素です。

4. 付属品を探す

購入時のカバー、ハンガー、残布などが残っていれば、あわせて確認しておきます。

保管と手入れで気をつけたいこと

これから保管を続ける場合も、手放す前に整えたい場合も、扱い方には注意が必要です。日本毛皮協会が示している内容を整理します。

保管の条件

温度10℃以下、湿度約50%が理想的とされています。通気性のあるカバーを掛けて光とホコリを遮り、毛が押し潰されないようゆったりと収納します。コートは幅広のハンガーに吊るすとよいとされています。

着用後の手入れ

着用したら、毛を傷めないように軽く叩いてホコリを落とします。汚れはぬるま湯に浸したタオルで毛先のみを拭き、皮まで濡らさないよう注意します。乾かすときは風通しのよい日陰で自然乾燥させ、熱源は避けます。

してはいけないこと

直射日光に当てること、ドライヤーやアイロンを使うこと、ベンジンやシャンプーを使うこと、香水やヘアスプレーを直接かけることは避けるとされています。防虫剤は2種類以上を同時に使うと化学変化でシミの原因になるとされており、注意が必要です。また、ドライクリーニングは脱脂により皮革部分の油脂分が失われ、硬化につながるとされています。クリーニングに出す場合は、毛皮専門のパウダークリーニング法を指定するのがよいとされています。

参考:「毛皮の取り扱い」|一般社団法人 日本毛皮協会

なお、リフォームについては、コートをマフラーやバッグに作り替えることが可能とされていますが、革の状態によってはリフォームに耐えられない場合があるため、専門店への相談がすすめられています。

買取に出すときに知っておきたいこと

エンバの毛皮を手放すことを考えている場合、次の点を押さえておくと進めやすくなります。

状態が評価の中心になる

ブランド表記があることは情報のひとつですが、実際の評価では、皮の硬化の有無、毛の抜け、色褪せ、においといった現在の状態が大きく関わります。日本毛皮協会が毛皮を消耗品と位置づけているとおり、経過年数が長い一着ほど、状態の差が結果に表れやすくなります。

買取価格に定価はない

毛皮の買取価格には、公的に定められた基準がありません。業者ごとに評価の方針が異なるため、複数のところで見てもらい、比べたうえで判断するのがおすすめです。相場として紹介されている金額は目安であり、手元の一着がその範囲に収まるとは限りません。

自分で無理に手入れしない

売る前にきれいにしようとして、ドライヤーで乾かしたり、洗剤で拭いたりすると、かえって状態を悪くすることがあります。前述のとおり、避けたほうがよい扱い方がはっきりしているため、ホコリを軽く落とす程度にとどめ、そのままの状態で見てもらうほうが無難です。

付属品をそろえる

購入時のカバーや残布、証明書などが残っていれば、あわせて持参します。判断材料が増えることで、状態を正しく見てもらいやすくなります。

よくある質問

エンバ(EMBA)とは何ですか。

日本国内で流通してきた毛皮製品に見られるブランド表記のひとつで、ジャパンエンバ株式会社が展開していたブランドとして知られています。製品をつくった側を示す表記であり、原皮そのもののグレードを示すものではありません。

エンバの毛皮は高く売れますか。

毛皮の買取価格に公的な基準はなく、金額を保証することはできません。ブランド表記があることは情報のひとつですが、実際には皮の硬化、毛の抜け、色褪せ、においといった現在の状態が評価に大きく関わります。日本毛皮協会も毛皮を消耗品と説明しています。

毛皮のコートに品質表示のタグがありません。偽物でしょうか。

表示がないこと自体は問題ではありません。日本毛皮協会によると、家庭用品品質表示法は毛皮には適用されていません(ダブルフェースやリバーシブル仕様の場合は適用される可能性があります)。同協会は、表示がなくても偽造とは限らないと説明しています。

サガミンクとエンバはどちらが上ですか。

比較の対象が異なります。サガ・ファーの表示は原皮の生産者団体によるグレード表記で、エンバは製品のブランド表記です。両方が同じ製品に付いていることもあり、上下関係として比べられるものではありません。

古い毛皮でも買取に出せますか。

状態によります。日本毛皮協会は、時間の経過とともに皮の硬化や毛の抜け、色褪せが生じるとしています。まずは皮の部分の状態を確認し、判断が難しい場合は毛皮を扱う買取店に現物を見てもらうとよいでしょう。

まとめ

エンバ(EMBA)は、日本国内で流通してきた毛皮製品に見られるブランド表記です。製品をつくった側を示すものであり、原皮の品質を示すグレード表記とは別の情報だという点が、まず押さえておきたいところです。

ミンクのグレード表記としては、日本毛皮協会が、サガ・ファーのsaga furs® LUMI ROYAL/ROYAL/基本グレード、アメリカン・レジェンドのBlackglama®、コペンハーゲン・ファーのPURPLE/PLATINUM/BURGANDY/IVORY、ノース・アメリカン・ファー・オークションズのNAFA Mink/Black NAFAを挙げています。これらは原皮の品質を表すもので、製品としての最終的な品質は、その後のなめしや製造工程にも左右されるとされています。

また、毛皮製品には家庭用品品質表示法が適用されないため、法律上の品質表示義務はありません。日本毛皮協会が独自に品名表示の指針を定めており、品名の表示は必須、加工処理と使用部分の表示は任意とされています。

そして、同協会が明言しているとおり、毛皮は消耗品です。ブランド表記の有無にかかわらず、現在の状態が評価を左右します。手元の一着を確認するときは、ラベルの種類を分けて見たうえで、皮の硬化や毛の抜けといった状態を確かめ、無理な手入れは避けてそのまま専門店に相談するのが、納得のいく判断につながります。