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質屋に着物を預ける前に|質入れと買取の法的な違い

着物を手放したいときや、一時的にお金が必要になったとき、質屋という選択肢が思い浮かぶ方もいるでしょう。ただ、質屋に着物を預ける「質入れ」と着物を売る「買取」は、根拠となる法律から異なります。そこでこの記事では、質屋と着物の関係を法令にもとづいて整理し、それぞれの仕組みと確認しておきたい点をお伝えします。

質屋と着物という組み合わせを整理する

質屋は、品物を預かって金銭を貸し付ける営業です。着物や帯も、預かりの対象として扱われることがあります。ただし、取り扱う品目は店舗ごとに異なる点に注意してください。

一方で、多くの質屋は買取にも対応しています。質入れと買取の両方を扱うためには、それぞれ別の許可が必要になります。同じ店の同じカウンターでも、選んだ方法によって適用される法律が変わるのです。

この違いを理解しないまま話を進めると、後から「戻せると思っていた」といったすれ違いが起きかねません。まず、二つの制度の輪郭をつかんでおきましょう。

なお、どちらの営業も都道府県公安委員会の許可を受けて行われます。古物商許可の確認の仕方は、店を選ぶときの最初の目安になります。警察庁は、古物営業と質屋営業について所管の情報をまとめて公開しています。

参考:古物営業・質屋営業について|警察庁

質入れと買取は根拠法から異なる

質屋営業法第1条は、質屋営業を次のように定めています。物品を質に取り、流質期限までにその質物で担保される債権の弁済を受けないときは、質物をもって弁済に充てる約款を付して金銭を貸し付ける営業だという内容です。つまり、質入れの本質は金銭の貸付けにあります。

参考:質屋営業法|e-Gov法令検索

これに対して、古物営業法第2条は「古物」を一度使用された物品などと定義し、古物営業をその売買や交換を行う営業だとしています。買取は、品物の所有権を事業者に移す取引です。

参考:古物営業法|e-Gov法令検索

両者の違いを表にまとめます。

比較する点 質入れ 買取
根拠となる法律 質屋営業法 古物営業法
取引の性質 品物を担保にした金銭の貸付け 品物の売却
許可を出す主体 都道府県公安委員会(第2条) 都道府県公安委員会(第3条)
品物の所有権 流質期限までは質置主のもとに残る 引き渡した時点で事業者に移る
手元に戻せるか 流質期限前に元利金を弁済すれば受け戻せる(第17条) 原則として戻らない
受け取る書面 質札または通帳(第15条) 事業者が定める買取に関する書類

同じ着物を持ち込んでも、質入れなら手元に戻す道が残ります。買取を選べば、その場で取引が完結します。どちらがよいかは、着物を残したいかどうかで決まります。

質屋営業法が定める質契約の仕組み

質契約には、法律で定められた手順があります。

質屋は物品を質に取ろうとするとき、質置主の住所・氏名・職業および年齢を確認しなければなりません(第12条)。不正品の疑いがある場合には、直ちに警察官に申告する義務も定められています。着物を持ち込む際に本人確認を求められるのは、この規定にもとづくものです。

質契約をしたときは、質屋は質札または通帳を質置主に交付します(第15条)。この書面が、預けた事実と受け戻しの権利を示すものになります。受け取ったら、大切に保管してください。

さらに質屋は、次の事項を営業所内の見やすい場所に掲示しなければなりません(第16条)。

  • 利率
  • 利息計算の方法
  • 流質期限
  • 上記のほか、質契約の内容となるべき事項
  • 営業時間

掲示の内容と異なり、かつ質置主の不利益となるような質契約をしてはならないとも定められています。違反する部分については、掲示の内容によって契約されたものとみなされます。店頭で掲示を確認しておくと、条件の行き違いを防げます。

流質期限にも制限があります。質契約成立の日から3月未満の期間で定めてはならないとされています。質置主が物品を取り扱う営業者であり、かつ質に入れる物品がその取り扱っている物品である場合は、1月未満で定めてはならないという扱いです。

利息については、質屋営業法第36条が上限に関する読替えを置いています。あくまで法律上の上限であり、実際の利率は質屋ごとに定められ、店頭に掲示されます。契約前に必ず確認してください。

参考:質屋営業法|e-Gov法令検索

質流れの仕組みを正確に理解する

「質流れ」という言葉は、法律上は流質と呼ばれます。仕組みを条文で確認しましょう。

質置主は、流質期限前であればいつでも元利金を弁済して質物を受け戻せます(第17条)。このとき、質札を返還するか、通帳に受け戻した旨の記入を受けます。返還にあたって質屋は、相手方が受取について正当な権限を持つ者かどうかを確認したうえでなければ、質物を返してはならないとされています。

流質期限を経過すると、質屋はその質物の所有権を取得します(第18条第1項)。ここで所有権が移ります。ただし、条文には但し書きが続きます。質屋は流質物を処分するまでの間、質置主が所定の金額を支払ったときは、これを返還するように努めるものとすると定められています。対象となるのは元金と流質期限までの利子、および流質期限経過の時に契約を更新したとすれば支払うべき利子に相当する金額です。

つまり、期限を過ぎたからといって即座に取り戻せなくなるわけではありません。処分前であれば、相談の余地が残されています。期限が近づいたら、早めに店へ連絡するとよいでしょう。

流質物の売却先についても規定があります。質屋は古物営業法第14条第3項の規定にかかわらず、同法第2条第2項第2号の古物市場で流質物を売却できます(第18条第2項)。二つの法律が接続している箇所です。

万一の場合の扱いも定められています。災害その他の事由により質物が滅失・毀損・盗難にあった場合、質屋は遅滞なく質置主に通知しなければなりません(第19条)。双方の責めに帰することのできない事由で質屋が占有を失った場合には、質屋はその質物で担保される債権を失います。また、質屋の責めに帰すべき事由による損害について、質置主の損害賠償請求権をあらかじめ放棄させる契約はできないという定めです。

参考:質屋営業法|e-Gov法令検索

買取を選ぶ場合に働く古物営業法のルール

着物を売る場合には、古物営業法が適用されます。この法律の目的は第1条に示されています。盗品等の売買の防止と速やかな発見等を図り、窃盗その他の犯罪の防止と被害の迅速な回復に資することです。

古物商が古物を買い受けるときは、相手方の真偽を確認するための措置をとらなければなりません(第15条)。住所、氏名、職業および年齢を確認する方法などが定められています。ただし、対価の総額が国家公安委員会規則で定める金額未満である取引などは、この措置が免除されます。

取引の記録も義務づけられています。古物商は古物を受け取り、または引き渡したときに、所定の事項を帳簿等に記載または記録しなければなりません(第16条)。記載する内容は取引の年月日・古物の品目および数量・古物の特徴・相手方の住所や氏名などです。帳簿等は最終の記載をした日から3年間保存します(第18条)。

盗品等であると疑うに足りる相当な理由がある場合、警察本部長等は古物商に対し30日以内の期間を定めて保管を命じることができます(第21条)。買取の場でこれらの手続きが求められるのは、こうした制度設計によるものです。

参考:古物営業法|e-Gov法令検索

訪問購入とクーリング・オフの関係

自宅に事業者が訪ねてきて着物を買い取る取引は、特定商取引法の訪問購入にあたる場合があります。消費者庁は、訪問購入を「購入業者が、店舗等以外の場所で契約を締結等して行う物品の購入」と説明しています。

この場合、法律で決められた書面を受け取った日から数えて8日以内であれば、書面または電磁的記録により申込みの撤回や契約の解除ができます。クーリング・オフ期間内は、事業者に対して物品の引渡しを拒むこともできるとされています。

一方で、消費者庁は店舗での買取や宅配買取はこの定義から除外されると説明しています。店頭に自分から持ち込んだ場合には、この8日間の制度は働きません。

参考:訪問購入|消費者庁 特定商取引法ガイド

質入れは金銭の貸付けであり、訪問購入にはあたりません。受け戻しの権利は、質屋営業法の枠組みで守られています。制度が違うため、比較するときは根拠法を意識してください。

訪問購入をめぐる注意点は出張買取のトラブルを避けるにはで、着物に特有の押し買いの手口は着物買取のトラブルを防ぐにはで取り上げています。

着物を持ち込む前に整えておきたいこと

準備の手順をまとめます。

順番 内容 確認する場所
1 着物を残したいかどうかを決める 質入れか買取かの分かれ道になります
2 本人確認書類を用意する 運転免許証やマイナンバーカードなど
3 取り扱い品目を電話で確認する 着物や帯を扱っているかは店舗ごとに異なります
4 質入れなら利率・利息計算・流質期限の掲示を見る 営業所内の掲示(質屋営業法第16条)
5 証紙や落款、たとう紙をそろえる たんすの引き出しやたとう紙の中
6 受け取った質札や書類を保管する 受け戻しや問い合わせに必要です

着物は湿気に弱く、たたみジワやシミ・虫食いが評価に影響します。持ち運ぶときは、たとう紙に入れて折りジワが増えないようにしてください。汚れを自分で落とそうとすると、生地を傷めるおそれがあります。

急いで結論を出す必要はありません。条件の説明を受け、納得したうえで判断してください。分からない点があれば、その場で質問するのが確実です。

よくある質問

質入れした着物は必ず戻ってきますか

流質期限前に元利金を弁済すれば受け戻せます。期限を過ぎると質屋が所有権を取得しますが、処分するまでは返還に努めるものとする規定が置かれています。期限が近づいたら、早めに店に相談してください。

質屋と買取店では、どちらを選べばよいですか

着物を手元に残したいなら質入れ、手放してよいなら買取という考え方になります。どちらも公安委員会の許可を受けた営業です。目的に応じて選んでください。

着物を持ち込むときに身分証は必要ですか

必要になります。質屋営業法第12条は質置主の住所・氏名・職業および年齢の確認を、古物営業法第15条は買取の相手方の確認を、それぞれ事業者に義務づけています。運転免許証などを持参してください。

質札をなくしてしまった場合はどうなりますか

まず店舗に連絡してください。質屋は、相手方が質物の受取について正当な権限を有する者であることを確認したうえでなければ返還してはならないと定められています。手続きの案内を受けてから来店するとよいでしょう。

預けた着物が傷んだ場合の扱いはどうなりますか

質屋営業法第19条は、質物が滅失や毀損、盗難にあった場合の通知義務を定めています。質屋の責めに帰すべき事由による損害について、賠償請求権をあらかじめ放棄させる契約はできないという扱いです。詳しい扱いは契約内容によるため、店舗にご確認ください。

まとめ

質屋に着物を持ち込む方法には、金銭を借りる質入れと、売却する買取の二つがあります。質入れは質屋営業法、買取は古物営業法という別の法律にもとづく制度です。所有権の移り方も、手元に戻せるかどうかも異なります。当店では買取をお預かりしておりますが、お客さまのご事情によっては質入れが合う場合もございます。どちらが向いているか、遠慮なくご相談ください。

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